第27話 無人島生活の始まり

 日が昇り、無人島での1日目がついに始まる。


 空には飛行型のモンスターがまるで群れを成すように飛び交い、森の奥に足を踏み入れれば小さなモンスターから大きなモンスターまで活発に生息している。


 おそらく亀裂からモンスターが生まれて、それを駆除する人間がいないと世界はこの島のようになってしまっていただろう。


 夜中に聞こえた巨大な足音の主は息を潜め、私達は砂浜で作戦会議をしていた。


 ルイが地面に地図を描き、大まかな周辺の地形を書き出す。

 比較的安全な場所から、地形の悪い危険な場所を皆に伝えて今日の目的を決めた。


 回復の出来るマリアは船に残って船内の使える物資を探す。


 私――氷坂凛華とルイ、タカネの誰か1人はマリアと一緒に残り、他の2人で島内のマッピングを進める。


 そして今日は――。


「くしゅんっ!」


 風邪をひいてしまった私がマリアと船に残ることになった。


「私が看病してあげますわね♡」

「すまんな……」


 私なら風邪なんてひかないだろうと余裕ぶっこいてたんだが、こうも分かりやすく熱を出してしまってはその考えも改めなければ。


 マリアは人の外傷は回復できても病気は回復させる事が出来ない。だが、保健委員会長として出来る仕事はする。

 


 そしていよいよ、島内マッピングを行う事になったルイとタカネを見送って私とマリアは船に残る。


 といっても私は個室のベッドに寝かせられてすることがないのだが。


 無事に、ルイとタカネがカケル達を見つけてくれるのを祈ろう。




 ――――――――




「こうして私とお前2人で行動するのは初めてだな」


 私――成城寺高峰は風紀委員会会長であり、B1の異能を持つ。


 今は安全な場所を進んで、モンスターを見かけたらルイと私の "斬撃を飛ばす能力" で倒している。

 いつ何時としても刀を手元に置いていたおかげで、漂流しても刀を亡くすことはない。

 

 だが、まさか水着姿でこんな無人島を、それも男女2人きりで行動する羽目になるとは思わなかった。


「貴様、男1人だからってあやしい事考えるんじゃないぞ」


 海パン姿でほぼ全裸にも等しいルイに警戒の眼差しを向ける。


 こんな誰もいない森で、犯罪者のような目つきをしたこいつにいつ襲われてもおかしくない。


「あやしい事とはなんだ?」

「っ! はぐらかすな! 貴様のことだ! 水着を着た私達を見て、は、破廉恥な事でも考えているのだろう!」

「静かに」

「っ!」


 私が鞘に手を伸ばした時、突如ルイが私の口を抑えてきた。


 ま、まさか本当に襲われてしまうのか!?

 この私が、こんな所でこんな冴えない奴に初めてをっ!?


「モンスターの群れだ」

「むぐっ……?」


 ルイの目線の先、そこに一際大きく生えた木の近くで複数のモンスターが眠りについていた。

 相変わらず見た目は様々な生き物が合わさった左右非対称の醜い生き物だが……。


「ほう、これはカケル君が喜んで研究しそうな光景だな……」

「ひとまず気付かれないように抜けるぞ。周辺が分からない今、しばらくは戦いは避けるべきだ」

「うむ……」


 新たなモンスターの習性を目にしつつ、ここから先はモンスターの数が増える事を革新した私はより一層警戒心を強めた。




 ――――――――




 はぁ……はぁ……リンカ会長が♡ 目の前で無防備に寝ておられますわ♡


 私――糺明院聖愛の想い人……氷坂凛華……様♡

 

 ああ、なんとも美しいこのお身体……♡ 凛とした顔♡


「少しくらい……触ってもバレませんわよね……♡」


 保健委員会長として看病をしているのですもの、ご褒美くらい許されますわ♡


 リンカ会長のお胸……あっ♡ 柔らかい♡


「っ! ダメですわ」


 私にはちゃんと船内の探索という役割がありますのよ。

 ご褒美はそれを終えてからでないといけませんわね。



 リンカ会長の側を離れることに懺悔しつつ、船内の部屋を1つ1つ見て回る。


 この船は糺明院グループの船。だからこういう事にも備えて非常食がある場所を私は知っているのですわ!

 それを持ち帰ってリンカ会長にご褒美を……♡


 そうして宿泊する個室にある非常食料を集め、他にも残っていたお菓子や飲み物をリンカ会長のいる部屋に集める。


 その中で私の私物、玩具を見つけた。


「こんなところにありましたのね……これで退屈はしなさそうですわ」


 電源が付くのを確認して大事にカバンに詰める。


 初日にこれだけの物資を集めればそれはもう大喜びしてくれるでしょう。


 さあ、早くリンカ会長を見ながらお楽しみの時間ですわ!!




 ――――――――




 僕――斎木翔は今、洞窟にカエデとイチを残してゴクモンさんと共に自分達のいる島を探索している。


 洞窟はカエデの植物を操る異能で出入り口を隠してもらっているが、なるべくすぐに帰る予定だ。


 そして、肝心の僕と同行しているゴクモンさんはというと――。


「ふははは!! 今日は熊の肉だぞ!」


 熊を殴り殺して大喜びしている所だ。


 どうやらゴクモンさんにとって、無人島生活は夢だったらしい。自慢の肉体1つで生き延びるサバイバル。そんな生活を今ゴクモンさんは楽しんでいる。


「そんなに騒いでモンスターが寄ってきたらどうするんですか……」

「大丈夫だ! その時はお前を抱えて逃げる!」


 なんて言いながら木に登ってまたなんかやってる。


 ゴクモンさんは頼れるのは頼れるんだけど、致命的にバカだからいざという時は僕がしっかり見張ってないとろくな事にならない。


「僕のそばから離れないでくださいね!」

「おお! そうだったな!!」


 今僕らは海沿いを歩いている。もしもリンカ達が同じくこの島に漂流しているのなら、必ず島を一周する前には見つけられるはずだ。


 だが想像以上にこの島は大きい。一周するのには何日もかかるのを見越して、ひとまず今日はある程度進んだら洞窟に戻る。


 カエデやイチちゃんの為に食料も見つけないといけないし、何よりもモンスターが多い。ゴクモンさん1人じゃ倒せないモンスターが現れても逃げれるように、地形に詳しくならなければいけない。


「このキノコ美味しそうだな!」

「ちょっ、下手に知らないキノコ触らないでください! 僕も見たことないキノコだから毒か分かんないですよ」


 ゴクモンさんがいない方が楽かもしれない……。

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