第5話

「失礼しまーす。あの先生すみません、今他に生徒いますか?」

「いえ、今日は誰も居ないですよ。どうしました?」

「あのですね…今日ちょっと失敗した子が居まして…でも俺クラスの方見に公園に行かないといけなくて…」

「ああ良いですよ。体調が悪いとかではないんですね?」

「あ、はい。ありがとうございます。ほら矢場、入りなさい。」

後はよろしくお願いします、そう言ったのち、担任はそそくさと出ていった。

「矢場お前か。何、漏らしたの」

「うるせえ…」

「目赤すぎ。泣いたんだろ」

「黙れよお前っ‼︎んひゃぁっ、」

ニタニタしながらこちらに来て、俺の失敗したソコを撫で上げられた。

「ほんとだ濡れてんじゃん。恥ずかしいなぁ?こんな歳にもなってお漏らしとか」

「っひゃっ、」

「いっつもいっつも授業サボって数少ないベッドを埋めてるヤンキー君も、おしっこ我慢筋はユルユルなんでちゅね~」

 何でうちの学校の保険医は男なのだろう。黒縁メガネで、もっさりした頭の癖に、背は高くて、長い白衣も短く見える。こいつも気が弱ければいいものの、俺がサボろうと保健室に行ってベッドに入ろうとしたら、授業に戻れだの何だの、ぐちぐちと文句を言ってくる。先客がいれば静かだが、俺だけの時は、出て行くまで喋ることを止めない。それもクソみたいな痴話。美人だったら、せめて女だったら良いのだが、野郎の話はどうでもいい。

「うるっせえなっ‼︎死ね死ね死ね‼︎」

「お前のボキャブラリー貧しすぎるだろ」

「ぐぅ…帰る‼︎」

「良いのか?このまま帰って。ズボンは黒いからあまり分かんねえけど、親御さんいるんじゃねえの?」

あいも変わらず良いオモチャを見つけたみたいな顔で、俺の顔を濡れタオルで拭き始める。

「んぐっ、やめろって‼︎」

「素行不良の息子が帰ってきたら、絶対に問い詰めるよなぁ?そんな時ズボンがシッコ臭かったら?バレちゃうの、恥ずかしいよなぁ~」

痛いところを突かれた。言い返す言葉もなく、完全に奴の土俵。

「被服室行ったら予備の制服もあるし、洗濯もしてやる。どうする?ケンくん?」

「…チッ…」

「舌打ちで誠意は伝わらないなぁ」

「オネガイ、シマス…」

「まあ良いだろ。あと…」

突然グッと押される下腹部。訳がわからない。

「、にすんだよっ‼︎」

「おしっこまだあったら今のうちにトイレ行っとけよ」

「ねえし‼︎子供扱いすんな‼︎」

「相変わらず血の気が多い。じゃあ行ってくるからその間にこれで拭いとけ」


奴が出て行って途端に部屋が静かになって、落ち着かない。手渡されたタオル。少し湿っていて、温かい。いつのまにこんな事してたのだろう。


ぐしょぐしょの気持ち悪い布を剥ぐ。むわりと広がる臭い。冷えた肌にタオルを当てると、温かい。

(くそっ、あいつがあんなことするから…)

 下腹をそっとさすると、キュンとチンコが疼く。ムズムズとして、落ち着かない。思い返せば、あそこでは途中で止めようと必死だった。出し切れなかったものがあっても不思議じゃない。スウスウしてるから尚更だ。何となく、何ともない太ももをさすってしまう。


(さっさと帰ってこいや…)

 睨めっこしている時計の針は、まだ5つ分しか進んでない。何度身震いしただろうか。さっきよりも溜まるのが早い気がする。チンコを丸出しにした下半身のまま、屈伸をしたり、つまんだり。下腹を抱えるような形で、太ももをもぞもぞさせる。こんなに帰ってくるのが遅いなら、強がったりせずにトイレに行っておけばよかった。保健室の近くのトイレは教室がないから、普通の生徒はあまり来ないのに。


 もじっ…もじっ… 

(しっこ…)

10分経っても奴は戻ってこない。さっきとは比べ物にならないくらい、お腹が張って、苦しい。いつ来るのだろう、先が見えないとどんどん我慢が出来なくなる。もう、今ささっと行ってしまおう。

 せっかく綺麗に拭いた足に、冷え切ったおしっこパンツと、おしっこズボンを通して、ぐしょぐしょの靴を履く。

うずずずず…

冷たいものが体を纏い、膀胱が縮もう縮もうと忙しい。

(といれといれといれといれぇっ)

出てしまわないように、腰を屈めて。あと少しでおしっこ出来る、そんな時だった。

ガラガラガラ…

勝手に開いた扉には、待ち焦がれた、でも今は来て欲しくない奴が立っていた。

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