第16話 ゼス・ランクアップ! 1進化目!




 ――マジックカード。

 ホルダーが魔法を使うためのカードであり、マジックカードに書かれた回数を消費して使用する。

 この回数はマジックカードによって変動するのが〈プレモン〉の面白い所だ。

『火炎魔弾』なら大体5回から12回まで使用可能でランダムドロップする。

 今回ドロップしたのは使用回数10回なのでかなり良きだ。


 これを1回発動すると5つのファイヤーボールを発射することが出来る。

 威力は【戦闘力】に依存。〈ゼロ進〉モンスターからドロップしたので等級は〈ゼロ等級〉と一番弱いランクだが、初期ではかなり有用なカードだ。

 少なくとも〈始原の森〉のモンスターであればかなりのダメージになる。


 使用後はクールタイムが発生し、それが明けるまで再使用は不可。

 ちなみにマジックカードは1回消費型と回数消費型があり、名前の通り1回しか使えないカードも存在する。『召喚枠チップ』なんかがそうだ。あまりに強いカードだったり、制限が入っているようなカードが該当するな。『召喚枠チップ』は人生で使える回数が1人3回制限なので該当する。


『火炎魔弾』は回数消費型のマジックカードだな。何回も使える。ただ回数を使い切ればカードはエフェクトになって消えてしまうので注意だ。

 回数さえ残っていれば、お金ミールを払って回数を回復させることもできるのでかなり有用だぞ。


「ほう、そんなに良いカードにゃのかこれ?」


「ああ。クールタイムが比較的短く威力の大きい使い勝手の良い魔法だ。ホルダーが遠距離攻撃を使えるようになると出来る戦いの幅も大きくなるし、今の状況ならまず間違いなく当たりと言えるカードだな!」


 売ると多分2万は堅い。これだけでもかなりの収入というのがわかるだろう。

 俺はニヤけながらカードを見つめて一度ホルダーケースに仕舞い、宝箱に入っている残りの2枚のカードを見る。


 宝箱の中は基本的に複数枚のカードが入っている。枚数はランダムだが、レアモンスターからなら2枚から6枚ドロップだ。今回は3枚だったのでう~むというところ。

 まあ『火炎魔弾』は当たったし満足だけどな!

 そして『火炎炎弾』以外のカードはどれも素材カードだった。


「こっちはレア魔石。これもいい素材だな」


「ほう魔石かにゃ。確かに美味しそうな香りが漂ってくるにゃ」


「まあ、魔石は経験値カードとしても使えるからな。でも食べるなよ? ゼスたちは戦闘で十分レベル上げが可能なんだから」


 ―――魔石。

 素材カードであり、モンスタードロップの中でも1割から2割くらいの確率で落ちるこれだが、手持ちのモンスターに食べさせることで経験値を取得することが出来る。


 経験値を取得するには戦闘が基本だが、誰もが戦闘に参加出来るわけではない。

 俺はゲーム時代、この魔石をサポート系や生産系、レベルが足りていない戦闘系、モンスターなど、戦闘でレベル上げが難しいモンスターに食べさせていた。

 魔石ならほぼ全モンスターがドロップするため安全にレベル上げが可能なんだ。

 他にも魔石は生産などにも使われるためかなり需要が高い。

 需要があるからこそ売ると結構な金額で買い取ってくれる。売るかレベル上げなどに使うかはプレイヤー次第だな。


 魔石カードも仕舞うと残ったのはもう1枚。これは〈米〉だった。

 うん。料理素材だな。1キログラムも入っているのでなかなかの量だが。普通の〈シゲムギ〉と同じ量なのがちょっとだけ悲しい。まあいいけど。

〈シゲムギ〉からは〈米〉や〈小麦粉〉なんかもドロップする。

 さすがはダンジョンで第一次産業が支えられている世界。素晴らしいんだぜ。


 それも仕舞うと続いてステータスの確認。

 レアモンスターは経験値をたくさんくれるのだ。しかも、明らかにこの辺りでは高いLVの〈シゲムギ〉だった。

 ならその経験値はかなりのもののはずだ。

 ゲーム時代ならログが流れるからいくらもらえたか分かるのだが、リアルだとステータスを開いて確認しなくちゃいけないのが少し面倒ではある。同時に楽しみでもあった。いざ、オープン!!


「出たぞ――っておお!? ゼスとスイリンがLV10だ! SPがカンストしてるぞ!」


「ほんとかにゃ!?」


「ウキュー!」


「おう! 俺のLVも10になってる! 【召喚枠】が1つ開放されてるぞ!」


 明らかな強敵〈シゲムギ〉は予想以上の経験値をくれていた。

 なんと俺、ゼス、スイリンのLVが10となり、俺の【召喚枠】が【3】になった他、〈ゼロ進〉モンスターのSPカンストを迎えていたのである。


 ――――SPカンスト。

 モンスターは進化の数によってSPにカンストの上限が変化する。〈ゼロ進〉モンスターならLV10がカンストだ。LVはこれより上がるが、SPはこれ以降いくらLVを上げても獲得出来なくなってしまうのだ。

 そしてカンストしたならば次にするのが――進化だ。

〈プレモン〉ではSPがカンストしたら進化させるのが基本だった。


「ようやく1回目の進化かにゃ。待ちくたびれたにゃ!」


 ゼスがそう言うのにもわけがある。

 実はゼスの場合、LV6の段階ですでに進化先が表示されていたからだ。

 だが俺はゼスを説得し、進化を待ってもらっていた経緯がある。


 ――――――――――――

 スティニャ――LV6

 白雪猫しらゆきねこ――――LV10

 ――――――――――――


 現在進化可能な進化先は2種類。

〈スティニャ〉は通常進化ルート。これから〈神猫様〉にたどり着くことも可能だ。LV6から進化が可能。


 そして〈白雪猫しらゆきねこ〉は特殊進化ルート。

 SPをカンストさせるLV10、そしてステータスの【攻魔力】にSPを【6】以上振っていないと現れないルートだ。

 また、これが条件を達成しないと進化ルートに表示されないのだから結構難易度が高いよな。


 もちろん、その難易度に見合い、特殊進化先である〈白雪猫〉の方が圧倒的に強い。

 いや、圧倒的は言い過ぎたかもしれないが、まあ結構差があるくらい特殊進化の方が強いのは確かだ。

〈白雪猫〉からでも〈神猫様〉へ進化出来るルートがあるので進化させるなら是非こっちにしたいところだ。


「まあいいにゃ。純白は我の好みにゃ」


「神猫だからか?」


 ふとゼスを見る。今の体色はグレーである。

 俺はそっと目を逸らしておいた。


「なにか言いたげにゃヒイロ?」


「なに言ってんだゼス! じゃあ進化させるぞ?」


「悪いにゃスイリン、まずは先輩からにゃ行かせてもらうにゃ」


「ウキュ! ウキュ!」


 隣で喜びのダンス(飛び跳ねる)をするスイリンに断り、俺の正面に立つ(?)ゼスに手を翳す。

 俺の前にはステータスが現れていてゼスの進化先が2つ表示されていた。そのうち〈白雪猫〉をタップする。


「ゼス! 〈白雪猫〉に進化だ!」


「にゅおおおお!!」


 ピカッと発光するゼスの体が徐々に変わっていく。

 発光のせいでシルエットしか分からなかったゼスの体が、光を失っていくことで徐々に顕わになった。


 それは、白猫。

 先ほどまで手足が見えないほどの毛玉だったのが、今ではしっかり手足と胴体が生え、ちゃんとした白猫へと進化していた。耳は大きく、体の大きさは高さ30センチ、全長で50センチくらいか? トータルでは毛玉時代よりかなり大きくなったな。


「ゼス、進化おめでとう!」


「ウキュ! ウキュー!」


「ふ、ありがとにゃ。新しい我の姿はどうにゃ?」


「ああ。ずいぶん、可愛らしくなったな」


「ウキュ! ウキュ!」


「にゃんだと!」


 ゼスが自信ありげに問いかけてきたので答えたあげたのだが。

 しかしゼスは俺の答えは気に入らなかったようだ。

 すぐに自分の姿を首を捻って確認し、全身が白になっていることに満足したのか俺をただ見つめてくる。


「我はかっこよくなくなったのかにゃ?」


「え? ああ、うん。かっこいい、よ?」


「なぜ疑問形にゃ! ぐっ! まさか、これは予想外だにゃ。このかっこいい我がかわいい寄りにゃと?」


 どうやらゼスは〈カァニャ〉時代も自分がかっこいいと思っていたみたいだ。

 何やらショックを受けている。

 俺の慰めの言葉は届かなかった模様だ。


 ゼスがショックから復活するまで、俺は次に集中することにする。もちろんスイリンだ。


「お待たせスイリン。次はスイリンを進化させるぞ」


「ウキュ! ウキュ!」


「まあ我のことは一旦置いておくにゃ、行ってこいにゃスイリン」


「ウキュー!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る