天使病になった陰キャ男子はゼウスの見習い天使になりました。~天使初の戦闘狂天使として生きていきます~
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プロローグ
世界には必ずといってもいい疫病というものが存在する。
昭和時代後半に起きた「四日市ぜんそく」,「イタイイタイ病」,「新潟水俣病」などだ。
現代になってくると、「新型インフルエンザ」,「新型コロナウイルス」などだ。
そんな疫病に俺はかかっていた。
だが俺のパターンは違う。がんでも肺炎でも心不全でもない。俺「翔馬」のかかった疫病は特別なものだった。
医者から診断された特別な病気――――
「天使病」というものだった。
■■■■■■■■■■■■
「痛い!!痛い!!痛い!!!」
激しい電撃が全身と脳内を狂わせる。―――そんな痛みだった。
チリチリと音を立てながらチカチカと線香花火のように光りだす電球の下、俺は薄く汚れた毛布の下で動きわめいていた。目元は濡れており、大きく積まれている段ボール箱を大きく音を立てながら蹴飛ばす。
この痛みは、決して普通の痛みではない。特別な痛みだ。
「あっあっあ!!!!!」
ぶちっ、メキメキ。
俺の身体からなにかが出てくる音が聞こえてきた。俺のどこかが切れた音。直後、これまでの痛みよりはるか上の痛みが背中から全てへから伝わった。
「あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
人間の出せる声域よりもはるか上の声。シーツに染まる赤色のインク。そして、赤のインクの上にふわりと着陸する黒の羽。
俺は先ほどの痛みから人間にはありえないものを作り出してしまった。そう、これは。
「はぁ、はぁ……て……天使の翼……」
俺は声に出した。まさに人の神経が肌に突き刺さってくるように感じた。
人にはないありえないもの。
「ハァ…ハァ…俺って、もう…人間じゃなくなったのかな……」
そしてそれは、疑問でしかなかった。俺は翼を出した後に両目をつぶり、そのまま眠りに落ちた。
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「……矢君。修矢君。」
「ん……」
誰かに起こされている気がするので目を覚ました。目の先には見たことのない光景があった。目の前には、獣のような耳がついている、とても美人の女性がいた。
「えっと……どちら様でしょうか?」
「あら?忘れたの?」
忘れるも何も俺はこの女性と会った記憶はない。するとその女性は獣耳をピクンと動かし、こう告げた。
「私はクーシェよ?ちょっとはしゃぎ過ぎたかしら?」
どうやら俺の目の前にいる女性はクーシェという名前らしい。
「すみません、初めて聞く名前です……」
俺はこの女性を知らない。すると女性は肩を落とした。そして、大きなため息をする。
「そうだったの……。じゃあ改めて自己紹介するわね!私はクーシェ!虎耳族よ!」
クーシェは獣耳をピクンと動かしながらそう告げた。どうやら彼女は虎耳族らしい。
だが、彼女が人間なのか獣人なのかは俺にとってどうでもよかった。ただ、俺はある疑問をぶつける。
「あの、なぜクーシェ……さんがいるのですか?」
はっきり言うならば俺は今、雲にいるような感覚だった。いや、俺は雲の上にいる。
「ふふ、あなたのお迎えに上がりましたの。」
不思議そうにしていた俺の顔から、じわじわと表情が失われていく。
真顔でたっぷり十秒以上は硬直してから、俺がかすれた声で小さく言った。
「今、なんて……もう一回……」
「あなたは死にましたのでお迎えに上がりました」
「あ……ほ、ほんとに言ってる……」
「はい。では行きましょうか」
「あ、いやちょっと待って! な、なんで!? なんでいきなり!?」
「……前から考えておられたでしょう?『あっち』に行くの。」
あっけらかんとした様子で、彼女はそう言い放った。
俺はもう、言葉も出ない。
確かに俺はずっと、『あっち』に行きたかった。でもそれはあくまで夢の話であって、本当に行くなんて考えたこともなかったのだ。
「で、でも……なんで急に……」
「あら、急ではありませんわ。あなたがお亡くなりになったときからずっと考えておられましたでしょう?『あっち』に行ったら何をしようかって」
確かにそうだ。俺はずっと考えていたのだ。
もし俺が死んだらどうなるんだろうとか、死んだ後の世界ってどんなところなんだろうとか……。
でもそれはあくまでも夢の話であって、まさか本当に行けるだなんて思っていなかった。
いや、違うな……多分心のどこかで期待していたんだ。行きたいと思いながらも、そんなことは無理だって諦めていた。
でも……本当に行けるのか……?
「さあ、行きましょうか」
彼女はそう言って俺の手を取る。そしてそのまま歩き出そうとした。
だが俺はそこで踏みとどまる。
「……いや、ちょっと待ってくれ! まだ心の準備が……」
「あら? もう準備はできているのではありませんこと?」
「そ、それはそうだけど……やっぱり怖いよ!」
俺がそう言うと、彼女が少し困ったような顔をする。
しかしすぐに笑顔になって言った。
「……大丈夫ですわ。私がついています。」
「で、でも……」
「さあ、行きましょう。」
「お、おい!ちょっと待ってくれ!」
俺は慌てて彼女を呼び止める。
「さぁ、われら天使の世界へ!!」
……ん?今、異世界って言ってなかったよね?
そう考えている間に俺の足元が急に消えていた。
「ふぇ?ええええええええええ!!!!!!!!???????」
俺はそのまま落下していく。
そして……俺の意識はそこでもう一度途切れたのだった。
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