ありがとう、牛乳少年!

 むかしむかし、とある海辺の村に、浦島太郎という青年がおりました。徒然なるままに釣りをしたいなと、海辺に行くと、玉手箱をいじめているガキンチョ共がいました。


「あれ、何蹴ってるんやろ?」


 気になった浦島は、思わずガキンチョ共に近づいてしまいます。

 浦島はガキンチョ共に問いました。


「それ何蹴ってんの?」


 すると、ガキンチョの一人が答えます。


「なんか知らん。さっき綺麗な女の人がくれたから、蹴って遊んでんねん」

「そんなことあるかなあ?」


 突然箱をくれる女。怪しいです。興味を持った浦島、もうちょっと聞いてみます。


「なんか言ってた?」

「それがな、『この箱の名前が思い出されへん』ねんて」

「ほぉ~。ほな俺がね、その箱の名前ちょっと一緒に考えてあげるから、どんな特徴があるのか教えてみてよ~」


 ガキンチョは分かったと頷き、続けました。


「この箱はな、開けたら煙が出てきて、お爺さんになってしまう箱やって言うねんな」

「おー、ほな玉手箱やないかい。その特徴は完全に玉手箱やがな」


 なんだか、漫才のネタみたいになってきました。


「すぐ分かったがな、こんなもん」

「でもちょっと分からへんのやな」

「何が分からんのよ」

「俺も玉手箱やと思っててんけどな」

「え、違うの?」

「その女が言うにはな、『その名前の漢字を見ただけで、手に取るように意味が分かる』らしいねん」

「あー、ほな玉手箱と違うか~」


 もう、もろあの漫才です。


「玉手箱の『玉手』って、誰にも意味が分からへんねんから~。何が玉なのか、何が手なのか、真相は海の中やねん。受け取り方によってはもはや下ネタとさえ言えるからね」


 と、想像力豊かな浦島がそこまで喋ると、突然パカッと箱が開きました。


「あ」


 中から煙りが立ち上り、全身に煙を浴びた浦島とガキンチョ共は、全員お爺さんになってしまいました。


「やっぱり玉手箱やないか~い」


 みんなで思わずそうハモり、仲よさそうに笑い合ったのでしたとさ。


 もうええわもうええわ

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