秒で終わる昔話~浦島太郎編~

鼻唄工房

はじまりはじまり~八つ当たり~

 むかしむかしあるところに、お爺さんを亡くして未亡人になったお婆さんがいました。


 二年ほど前でしょうか、『秒で終わる昔話 桃太郎編』を書き始め、そして先日、遂に目標であった百話を描ききった彼女は、目標のない、セピア色の人生を送っていました。


 そんなある日。


 ふらりとデパートに買い物へ行くと、隣に住んでいる意地汚いお爺さんに出会いました。正直話したくありませんでしたが、近所づきあいは大事。「どうも~」と言って挨拶すると、


「お、お婆さん、話したいことがあったんだ」


 お爺さんは、お婆さんを呼び止めました。


「あれ、『秒で終わる昔話 桃太郎編』読んだぞ」

「ほんまですか、ありがとうございます~」


 どうやら読んでくれていたようです。お婆さんは、ちょっと嬉しい気持ちになりました。


「中々良かったが──でもな」


 お爺さんは眉をしかめます。


「あんた、浦島太郎っていう話知ってるか?」

「そりゃ知っとるよ」

「あの原作者がな、あんたの作品読んだらしいんや」

「え!? ほんまかいな!」


 なんと、あの有名な昔話、『浦島太郎』を生み出した人物が、お婆さん作品を読んでくれたというのです。自ずと、評価が気になります。


「感想とか言ってたんかな?」

「それがな……」


 お爺さんはたっぷりとためて、言いました。


「もうぜんっぜん面白くなかったって」

「……クソが!」


 お婆さんは悔しさのあまり、汚い言葉を吐きました。


「ギャグ線が低すぎて逆に笑える。あんなの、人に読ませるレベルに達してないだとさ。二度と筆を執らないで欲しいって」

「……ぴぎゃあ!」


 お婆さんは、よく分からない言語を叫び散らします。


「……もう怒ったで」


 お爺さん、お婆さんの怒気に思わず尻込み、その場から逃げ出してしまいました。


「……浦島太郎編作ったる。あの話、めちゃくちゃにしたるわボケ!」


 こうして、『秒で終わる昔話 浦島太郎編』が開幕することになるのでしたとさ。


 はじまりはじまり。



***



 お婆さん「https://kakuyomu.jp/works/16817330649979142033


 鼻唄工房「お婆さん、これが桃太郎編のリンクですって言わないと!」


 お婆さん「あそっか! 口でリンクだけ言ってもな笑 あたしボケてきたわ!」



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