あの日出会った天使様からいつしか目が離せなくなっていた
星月
第1話 出会い
昨晩親友に誘われてゲームを遅くまでやりすぎてしまった
星川歩(ほしかわあゆむ) 高校2年生 いつもは誘われても軽くやる程度なのだが、昨日は新作の無料ゲームで面白いのがあるからやろうと言われ、流されるがまま遊んでいたらなんやかんやハマり、気づけば日付をまわり2時頃まで遊んでいた
「早く帰って寝よ」
そう呟いて学校から帰っていると、あまり人通りのない場所にある、公園のベンチに座っていた同じクラスの女子生徒に目がいった
清水咲希(しみずさき) 学校一の美少女と言われ、欠点のない容姿や立ち振る舞いから天使様と周りからは呼ばれている。そんな彼女がどこか辛そうな表情をしていた。
このまま無視して帰りたかったが、なんだかほおっておけなくてつい声をかけてしまった
「こんなところで何してるの?」
声をかけると、顔を上げた彼女は微かだが涙を流していた
「星川くん、ですか。すみません少し考え事をしていただけなので大丈夫です」
彼女はそう言いながら制服の裾で涙を拭い、取り繕うように笑顔を作りこちらに向けてきた
「無理して笑顔にならなくていいから、それより辛いこととかあるんだったら、溜め込んだりせずに友達や彼氏にでも相談した方がいいよ」
「そうですね、ですが生憎私にはそのような友達も彼氏もいません」
「えっ?」
彼女ほどの美貌があるのに彼氏がいないということには少し驚いたが、いないとおかしいという話でもないので納得した。だが友達がいないという発言には理解しがたかった。彼女ほど周りから評価され、あまつさえ天使様などと言われているのだ。友達なんて沢山いると思ってしまっても仕方がない
「なら親にでも相談してみたらどうだ?」
「親には話したくありません」
いい年頃なので親に話したくないという気持ちも分からなくもない。でもだからといって1人で抱え込み続けるはしんどいし辛いことなのはよく知っているので、一つ提案をしてみた
「話す相手いないなら聞くくらいならできるけど。でも聞いてもなにもできないし、気休めにもなるかわからないからそこは期待するなよ」
なにも出来ないが、溜め込むより吐き出した方が楽な時もある。相談する相手がいないならせめてと思い告げたのだが、それを聞いた彼女は先程とは変わって、目をぱちぱちさせていた
「なんだよ」
「噂をご存じではないのですか?」
「そんなもの知らん」
「そうですか、まだ耳に届いていない方もおられるのですね」
なんのことか分からないが噂とは恐らく天使様のことなのだろう。だけど歩にとって噂なんてでっち上げのものがほとんどだと思っているし、仮に本当だとしても心底どうでもいい
「噂なんてどうでもいいし、そんなつまらんことなんて聞きたいとも思わない」
「変な人ですね、噂話は学生間ではもはや主食みたいなものだと思ってましたので避ける人がいることに驚きです」
と小さく笑っている。そんなに変だろうか、知らないところで自分のありもしない噂話を流されているかもなんて考えるといい気はしない。だから他人の噂話にも興味が湧かない
「噂を気にするのはしょうがないことだし別に否定するわけじゃないけど、そんなに思い詰めなくてもいいと思うよ。皆が皆清水さんの噂信じてるとは限らないし」
「そうですね」
「あと堂々としてたら自然と消えていくと思うよ、まぁ俺は清水さんほど知名度ないし話題にあがらないから言えることなのかもしれないけど」
あくまで歩視点ということは言っておかなくてはならない。天使様と同じ世界に住んでいない彼だからこそ言えることで彼女の辛さは想像以上のものなのかもしれないのだから
「なんだか少し気が楽になりました。正直少し、というかだいぶ辛かったので星川くんみたいな変わった人に出会えて良かったです」
「変な人扱いされるのはなんか複雑だけど、少しでも楽になったんならよかったよ。あと頼れる人いないなら俺でいいなら話聞くくらいならできるから、使えるものがあるなら使っとけ」
今どき些細なことで不登校になったり転校する学生はたくさんいる。どんなに取り繕おうとも実際はまだまだ未熟な子供なのだ
「ありがとうございます」
そういい天使様スマイルを向けられる 。それでも無理してるんだろうなぁと内心思わずにはいわれなかった
「星川くんって意外と優しいんですね」
「別に優しくはない、辛そうにしてるなら手を差し伸べることは人として当たり前のことだ。あと恩を感じたりしなくていいから、そんなつもりで言ったつもりないし」
「その思考は優しい人間にしかできないものですよ」
そういい今度は楽しそうに笑っている。何故だか天使の皮が剥がれている気がするような、そんな子供じみた笑顔をしていた
「大丈夫そうなら俺はそろそろ帰るけど」
とそろそろ睡魔が限界なので告げると
「はい、また明日」
そういい笑顔を向けてくるのであった。皆苦労して生きているんだなぁなどと思いながら、重たい瞼を擦りながら帰路についた
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