第56話 終わらない戦い
「やあ二人共! よくここが分かったね! 流石だよ!」
ルイスが景気よくジャン達を迎え入れる。
「生きていて良かったわルイス」
「そんな簡単にやられたりしないさ! とりあえず中に入りなよ!」
部屋は簡素な作りではあったが、十分に生活できる設備が整っていた。
「椅子に座ってて。飲み物でも出すよ」
「それは私がやりますよルイス国王。座ってて下さい」
ジャンはルイス国王の代わりに飲み物を入れる。
三人は椅子に座り飲み物を口へと運び、一息ついた。
早速話を切り出したのはロベルタだった。
「それで? 今は一体どういう状況なの?」
「どうって……二人がここに居るってことはある程度予測して戻ってきたって事だろう?」
「最悪の想定をした時に、最も危ないのは王都に居るルイス国王だと思い、私達だけ戻ってきました。先に王城へと行った後、ロベルタ様がこの教会に行けば何か分かるかもしれないと判断したのでやってきました」
「ジャン……王城内はどうだった?」
「酷い……有り様でした」
「そうか……」
「結局はどうなのよ」
ロベルタの問いに、ルイス国王が話し出す。
「四カ国が同盟を組んで攻めてくるなんて歴史上今までにない事だった。だから全勢力をあげて戦地へと送り出したまでは良かった。だが……ふと冷静になった時、王都が最も手薄な状況だと私は気付いた」
「もし今、数百人の精鋭でも送り込まれたら太刀打ち出来ないと……だから念の為に用意していた影武者を置いて、私は戦争が終わるまでここに避難する事にしたんだ。どうやら本当に敵がやってきたみたいだな」
「全部を確認した訳ではありませんが、私達が見た限りは生きている人間は居ませんでした。それと影武者の方も亡くなっていました」
「……」
「ルイス国王が生きていた事が全てです。本当に良かったです」
「ありがとうジャン」
「それで? ルイスは戦いが終わるまでここにいるつもりなの?」
「そのつもりだよ。この部屋は何重にも強力な魔法をかけられているから、中から開けない限り敵が中に入る事は不可能に近い! この部屋より安全な場所はないと言っていい」
「ならここで休ませもらってもいいかしら? 私とジャンは、戦場から王都まで寝ずに馬を飛ばして来たのよ。流石に疲れたわ」
「外の状況、戦況が分からないんだが、二人が抜けてきても平気だったのか?」
「今頃お父様が、相手の軍をけちょんけちょんにしているわ!」
「アウグスト辺境伯軍の戦況も問題ないと思います。ちゃんと分かっていないのはシャイデン様が率いている戦場ですが、問題ないでしょう」
「最初はどうなるかと思ったが、どうやら乗り切れそうだな」
「ですがルイス国王、今回の戦争によって被害は相当なものです……」
「分かっているよジャン……今回の戦で国力はかなり疲弊する。大陸を統一する為の戦争を仕掛ける事は当分出来ないことは理解しているよ」
「ルイス国王の始末に失敗したとしても、ロア王国を疲弊させる事が出来るという目論見も含まれていそうですね」
「そうかもしれないな」
「二人共難しい話は全てが終わってからにしたら? 今は目の前の状況と戦いにだけ集中すればいいのよ」
ロベルタの言う通りだった。
「ロベルタの言う通りだな! 二人はとにかく休んでくれ。ここなら安心して休めるだろう」
その時だった。
ドッカーン!
強烈な爆発音と共に部屋が物凄い揺れる。
「なんだ!?」
「ルイス国王はここに居て下さい! 私とロベルタ様で様子を見に行ってきます」
「一体なんなのよもう! せっかく休めると思ったのに!」
「二人共気をつけて!」
ルイス国王の言葉を背中越しに聞きながら部屋を飛び出す。
ジャンとロベルタは階段を駆け上がって行くと泣き喚く声が聞こえてきた。
二人はその声がする方へと向かって行く。
礼拝堂へ続く扉を、ロベルタが勢いよく開けた。
シスターが、何者か分からない男によって左手で髪の毛を持たれ、右手に持ったナイフで首元をなぞられていた。
周りにいる子供達の顔には殴られたような跡があり、シスターを捕まえている男とは別に三人の男達が居た。
その光景を見た瞬間、ロベルタは腰から剣を抜き、目にも留まらぬ速さでシスターを捕まえている男に斬りかかった。
男はシスターを手から離し、自分の武器でロベルタの攻撃を受けきった。
二人は一旦距離を取る。
「何だよ、何だよ! ちゃんと居るじゃねえか! って事はここにルイス国王が居るのか??」
こいつらの目的は、どうやらルイス国王のようだ。
だが、何故こいつらがこの場所を突き止める事が出来たのかは謎。
「こんな場所に国王が居るとでも? あんたたち馬鹿でしょ!?」
ロベルタは逆撫でするような口調で言った。
「まあどっちでもいいか! お前らをやっつけてお前らから聞くことにするよ! おい! この二人殺すなよ!?」
他の男達も、自分らの武器を抜いた。
俺も腰から二本のダガーを手に取る。
「おいロベルタ! 四対二だからって弱気になってねぇーよな!?」
「なってる訳ないでしょ!」
「四対二じゃない! 四対三だ!」
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