第八話 異世界転移者って、無自覚兵器になるんですって

 とりあえず私達は、奴隷制度を廃止した心優しい王様に会いに行く。

 無論突撃、カオスはあまりまどろっこしい事はしない。

 私が言えた立場ではないが、今回はコイツに付き合ってやろう。


「ふっふふーん」

「お前本当に機嫌がいいな」

「イキリ散らせるからな」

「これ以上は通さない!」

「ご苦労様です」


 まあ城の兵士なんて相手にはならない。

 無論殺しはしていない、私達の目的はイキリ散らす事だ。

 

「失礼します」

「何でそこだけちょっと礼儀いいんだよ、まあ私は黙っとくよ」


 礼儀良く王様が居る玉座へとやってきた、ま、今回はカオスの好き勝手させよう。

 ああ……これまた説明の必要が無い、ハーレム転移者とか転生者だわ。

 いい女に囲まれて、自分の考えは世界基準で、創作物だと沢山みたやつさ。


「ほう、お前が侵入者か」

「ああ、包み隠さず言うと、王都以外の町や村からの依頼で、王様に確認したい事があってな」

「侵入者の言葉なぞ聞く必要は無い、やれ」

「はっ!」

「侵入者の言葉くらい聞けよ」


 カオスに刃を向けて切り殺しに来たハーレム要員さん。

 そいつ、勇者なだけあって強いよ、まあ並大抵……いや、この世界に勝てる奴は居ないね。

 何かハーレム要員さん。少々むきになって剣振り下ろしてるけど、落ち着いたら?


「王都での奴隷廃止をした結果、近隣の町や村で行方不明者が増えている、どう考えてんだ? あ、知らないか暴君のどっちかだろ……ああいや、そりゃそうだよな、おそらくはその王様知らないだろうしな、善意で奴隷廃止しただろうしな」


 他のハーレム要員達も、カオスにあれやこれやと攻撃している。

 けど全く通じていない、いや、王様さっさと手助けしてやれよ。

 ああ……本当に創作物あるあるか? 俺だったら余裕とか思ってるんだろうさ。


「なあセイント、このまま滅びるのを見るか、事実を突き付けるのどっちがいい?」

「私に聞かないでよ、管轄外」

「んじゃ好きにする」


 さっさとして欲しいけど、逆の立場なら同じ事を思ってそうだな。


「あ、自己紹介忘れてたな、俺はカオス・イバルータ、異世界で調子に乗ってる転生、転移者にイキリ散らす為に、異世界を渡り歩いている」

「俺のど――」

「調子に乗ってるだろ」


 おお、お見事さね、ハーレム要員達を一瞬にして殺して、王様の胸ぐらを掴んだよ。

 まあ、これに対処出来なきゃカオスには勝てないね。


「なっ!」

「チート持っているからか、お前さんは危機管理がなってない、それでアレだろ? お前みたいな奴は、創作物によくある復讐系になっていくんだよ、有能な俺が国外追放されたーとかか? セイント、この従者達を蘇生してくれ」

「面倒くさい」

「お前がイキリ散らす時に、色を付けて返すよ」

「仕方ない」


 はいはい、ちちんぷいぷい、うんちゃらかんちゃらっと。

 昔は蘇生って大変だったけど、私も強くなったもんだ。

 さてさて、カオスはこれからどうするんだ?


「さてさて、楽しいイキリ散らしタイムだ! あ、俺は正論パンチするけど、お前がやれとか言うなよ? 俺は事実しか言わないからさ」

「な、何を!?」

「んじゃ、王様、あんたが本当に有能なら、これから起こる事は簡単に鎮圧出来るだろうさ、もう村とか町とか? 周辺の人々は国に対して不信感しか無いのよ、何でかわかるかい?」

「お、俺の国はうまくいっている!」

「ふむ、そうだろうな? 異世界転移あるある、現実を創作物だと思っている、お前、転生してからいい事しか起こってないだろ? 苦労した事も無いだろう?」

「う、うるさい!」

「じゃあ……二つ答えてくれ、何で奴隷制度を廃止したんだ?」

「無論! 人々が不当な扱いを受けているからだ!」

「当たり前の事聞くけどさ、何でお前の元居た世界の奴隷と、こっちの世界の奴隷が同じって思ったんだ? 価値観違うと考えなかったのか?」

「そ、それはセイラが!」

「なるほど」


 カオスは子供をあやす様に、王様の肩をポンポンと叩いた。

 その顔は、可哀想な子供を見る目、そして同時に見捨てる目だ。

 まあ助けてやる義理も無いしな。


「もういいの?」

「ああ、俺の経験上、ありゃ無自覚兵器だ」

「どういう事よ?」

「俺の見てきた中で言うなら……この国は既に他国から侵略されていたんだよ、まあ簡単に言えば戦争に負けたと思ってくれ」

「ふむ」

「で、捕らえた王様達に自国が滅びる様を見せつけるのさ」

「何でさ?」

「悪趣味に理由は無いだろ、で、敵国さんはこの国が滅びそうになる時に、この国の救世主として名乗り出る」

「なるほどね、つまり敵国はこの国を滅ぼす為に、異世界転移者を召喚したと」

「ああ、何度か見た事がある戦術だ」

「戦術? 面白いわね」


 まとめましょう、この国をA、敵国をBとした時。

 Bはこの国を何かしらの手段で手中に収めたと。

 んで悪趣味な事にBは異世界転移で、今目の前の人物を呼び出した。

 なるほど、Aの国を救ってくれとか言ったのでしょうね?

 

 まともな異世界転移者には悪いけど、そんな簡単に王様なんて務まる訳ないでしょ。

 ふむ……ハーレム要員のセイラって人が、Bの……いえ、ハーレム要員全員が誘導している可能性があるのか。

 異世界転移者の召喚には、高度なものになると、望んだ者を呼び寄せれるとか。

 

 まあつまり目の前の異世界転移者は、この国を滅ぼす為に召喚された、可哀想にな。


「セイント、俺達の依頼は行方不明者の奪還だ、それが終わったらさっさと帰ろう」

「ええ、滅びる国と共にはしたくないわ」


 その後は語る必要も無いでしょう、考察通りよ。

 Bの国がAの国を復興、領土になると。

 ま、私には関係ない、次は私のイキリ散らしに付き合ってもらうぞ、カオス。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る