エピソード3
第十四話 ゴッドイズデッド
ゴッドイズデッド1/4
宇宙は広い。なんでこんなに広いのか……。
「なあ、アイちゃん。もしかして、神様っているのかな?」
『おや、マスター。その質問を人工知能である私にいいますか?
……まあ、そうですね。居るんじゃないですか? それに、祈ればいいじゃないですか。クリステル様はずっと祈っておりますよ?」
「いやいや、それは宗教の話でさ。そんなこと言ったらアイちゃんだって神様だぜ。天照大神が元ネタじゃないか」
次の瞬間、ホログラムのアイちゃんは姿を変える。
日本の伝統的な着物、十二単をまとい、長く伸びた美しい黒髪、太陽を模した髪飾りを付けた大人の女性が目の前に現れた。
『これですか? 確かに戦艦アマテラスは天照大神をモチーフにしていますが、私は神様じゃありませんよ?
神様の定義が曖昧ですので多分としか応えられませんが……』
「う、美しい……。そしてカッコいい。うーん。なるほど確かに神だな。それって戦艦時代のアバターかな? もっと全身を見せてよ。ほら、グルって回って!」
『はい、こうですか?』
アイちゃん、いや。アマテラスのホログラムはくるりと俺の前で一周する。
その着物は稲穂をイメージした金の刺繍、全体的に淡い色彩の布地に朱色の太陽が描かれている。
「うん、なるほど、着物ってこうなってるんだなー、本当に美しい……。洋服しか着た事がない俺だけど心は日本人なんだよなー、遺伝子レベルで? 知らんけど」
『うふふ、マスターに褒められて私もとても嬉しいです……ところで、マスター。
申し訳ありませんが最初の質問に戻っていただけますか?
宗教の話ではないのになぜ神が居るのか、という話だったのですが。何をおっしゃりたいのかもう少し補足していただける助かるのですが……』
「ああ、そうだね、実は昨日、映画を何本か見て思ったんだよ。
俺達人類って、実は神と称される高位知的生命体によって作られたんじゃないかって。
例えば月に謎のモノリスがあったり、エジプトのピラミッドは実は宇宙人が作ったりとかさ……」
そう、本当に素晴らしい映画なのだ。
SFのFはフィクション……でも、あれだけの完成度の映像を見せられると信じちゃうんだよなー。
『はぁ……なるほど、その影響を受けてしまって、中二病発動中といったところですか?』
「おっと、アイちゃんよ、相変わらずバッサリだ。だが、中二病と言ってくれるな、有名なSF映画を見たら健全な男子としてはそんな気分になるだろ?」
『なるほど、少年らしくて微笑ましいですね。
でも、その話をする前に、そろそろミシェルさんがいらっしゃいますね。
今日の活動レポートを作成してくれたようです。まずは仕事をしてからにしてください。
お忘れですか? ミシェルさんは今、保護観察中の身なのですよ?
マスターは彼女のレポートを見て、真面目に評価をせねばならいのですよ?』
おっと、もうそんな時間か。さて仕事モード。
俺は福祉船アマテラスの船長、頑張りますか。
ノックの後、船長室のドアが開く。
「失礼します。イチローさん。本日のレポートを持ってまいりました」
「ああ、ご苦労さん。どうだい? アマテラスに来て結構たつけど不自由はないかい?」
「はい、毎日楽しく過ごしています。それにミシェルンちゃんやサンバ君と一緒にシースパイダーのメンテナンスとか、色々と学ぶことが多いです」
「お! そうだった。シースパイダーに関しての使用感をレポートにまとめてコジマ重工に送るとキックバックが貰えるんだった。ミシェルさんにお願いできるかな?
実際、初めて海中戦を経験した君なら、きっと良いレポートが掛けると思うんだ……」
少し重荷だっただろうか。
企業向けのレポート、それにキックバックの話は18歳にするべきではなかったか。
その時、船長室のドアが再び開く。
入ってきたのはピンク色の蜘蛛型調理ロボットのミシェルン。
「失礼するですー。コーヒーをお持ちしたですー。今日は、インフィさんと一緒にクッキーを焼いたのでコーヒーのお供にですー!」
ミシェルンは名前が被るためミシェル・クロスロードのことはインフィと呼ぶ。
「おう、ミシェルン、いい所に来た。ミシェルさんと二人で協力してシースパイダーの使用感をレポートにまとめてくれないか?
功績が認められたら保護観察中でも恩赦があるかもしれないしな」
テーブルにコーヒーとクッキーのお皿を置くと、ミシェルンは余ったマニピュレーターをクルクルと回す。
了解の合図だ。
「では、さっそくレポートを拝見しようじゃないか。……ふむふむ、……うんうん、健全、健康。満点だ!」
俺は公式に使用される偽造防止が施された赤色のペンを取り出し、花丸を描こうとした。
『マスター……。もう少し、真面目に仕事をしてください。それだから福祉事業団体は馬鹿にされるんですよ、国に提出するレポートは真面目に書いてください』
ごもっとも、小学生じゃないんだ。花丸はさすがにやり過ぎだな……。
「うーん、とはいってもなー、俺はこういうのは向いてないんだ。
お役所言葉とか、使ったことなんてないし。どうしたらいいと言うんだ? 誠に遺憾です!」
そう、俺が使えるお役所言葉は遺憾ですしか知らない。誠にイカンのです。
『ふぅ、そうですか。私も大変遺憾ではありますが。
まあ、マスターが精一杯頑張るしかないのですけど……。
そうですね、レポート以外には面談と言うのも義務付けられていますね、その話の内容を評価に書き足したらいかがでしょうか?』
なるほど、面談ね。
それはいい。コミュニケーションはいつの時代も大切だ。
「よし、ならば、ミシェルさん。これから面談をしようじゃないか。
議題は……そうだな。そう! 神様って本当に要るのかな?」
…………。
……。
あれ? 無反応?
てっきり俺はズッコケるんじゃないかと期待したが……。
案外この話題はセンシティブなのだろうか……。
だが、ミシェルさんはしばらく考えた後で答えた。
「神……神ですか。そうですね。シン・アポカリプスは神でしたね。
レアアイテムのドロップ率が高いので、一日中討伐パーティーに参加したものです」
ズコー!
ズッコケたのは俺の方だった。
まさかゲームのキャラが神様にランクインするとは思ってもみなかったのだ。
「……ミシェルさん、それってゲームのキャラじゃん。それにあいつは一つもアイテムを落とさなかったぞ?」
「あはは、イチローさん。それはハズレを引いただけですよ。シン・アポカリプスは最低でも10回に1回はレアアイテムをドロップします。
私の装備はアポカリプスのドロップで揃えたと言っても過言ではないのです。つまり神モンスターですね」
神モンスターね。なるほど。ミシェルさんにとっての神はシン・アポカリプスか……。
これが現代人なんだなー。
いやいや、それだとまるで俺がジジイみたいじゃないか!
俺にだって神はいた。
そう、センターの七人、神セブンが……。
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