シンドローム23/27

【シナリオ『人類の逆襲・チャプター2、地獄第一階層・カタコンベを攻略せよ』

 君達はついにヘルゲートの門番、ケルベロスを討伐した。今度は人類が地獄への侵攻を開始する番だ……】


 そこは地獄の先兵を生み出す巨大な地下墳墓。

 もちろん現実のお墓ではなく、中は迷路のように入り組んでおりダンジョンRPGのそれといったところだろう。


 徘徊するのはゾンビやスケルトン、稀に下級の悪魔に遭遇するがそこまで強くないとのこと。


「ここのボスは比較的に弱いユニークアンデッドモンスター『名も無き皇兄』です。

 しかし、厄介なのはこのダンジョンにあります。

 いたるところにトラップが仕掛けられていてなかなかに厄介です。

 マップ自体も毎回変化するので最短ルートというのが存在しません。


 オートマッピングや罠解除スキルのレベルをしっかり上げたローグが活躍する場所ですね。

 即死の毒ガスや、テレポーターなど厄介な罠が満載ですので気を付けていきましょう」


「ぐへへ、船長さん。ここは俺っちが主人公になれるマップのようですぜ。今まで影が薄かったローグが輝く場所っす」


「うん? サンバ君よ。お前、今までも結構活躍してたじゃないか。何気に美味しいところは持っていったぞ?」


「そーですー。何気にですー」


「まあまあ、ミシェランちゃん。狭い通路が続くこのマップは何気に蜘蛛型モンスターが戦いやすい場所なんだよ?

 蜘蛛の巣を細い通路に張り巡らして、遠距離攻撃で敵を釣れば効率の良いレベリングが可能なのです。地の利は蜘蛛にあるでしょう!」


「おおー! なるほどですー。さすがはランカーさんですー。地の利を得たですー」


 やはりインフィはミシェルンに興味があるようだ。

 まあ喋り口調からして子供にしか思えないからな。


 まさか調理ロボットだとは思わないだろう。


 ひょっとして、ミシェルンをリアル幼女だと思っているのではないだろうか……。


 まあ、趣味嗜好自体に罪は無い、手を出さなければ何も問題ないのだし。


 それよりも、相手は爆弾テロを企んでいる犯罪者なのだ。

 何とか武装解除させることを優先させなければならないだろう。


 現にミシェルンのおかげで人間関係は良好である。 

 むしろこの状況を有効活用しなければならないだろう。


「いやー、インフィさん、今日もありがとうございます。

 さてと、さっそくダンジョン攻略ですね、ちょっと予習してきましたが、ここの攻略は結構時間がかかるみたいですね」


「ええ、トラップが多くて、結構厄介なダンジョンですね。運よく最短ルートを通ったとしても1時間位はかかるでしょう」


 なるほどな、このゲームのエンドコンテンツだし、気合が入っているのだろう。


 ちなみに今のところはチャプター5で終わっている。

 次回アップデートでチャプター6以降が開放されるそうだ。


 つまりストーリーは完結していない。ネトゲあるあるだな、この辺が俺は好きじゃないんだよ。


 未完成品とまでは言わないけど。

 売り上げが悪いと、未完のまま終わる可能性もあるってことだし。


 ま、このゲームは大人気で売り上げは順調ってことらしいので、その懸念は無いのだろうけど。


 それでも絶対はないんだ。

 そう、推しのアイドルに彼氏は絶対いないというくらいに根拠がない。

 実際、彼氏はいたし……ラブホ前で週刊誌に写真を取られると言う最悪のスキャンダルとしてな。


 おっと過去のトラウマに囚われている場合ではないか。


 …………。

 ……。


 道中は事前の情報の通りスケルトンやゾンビなどの雑魚モンスターばかりだった。


 それでも数は多いのでそれなりに厄介ではある。

 特に実弾系の武器しかない俺にとっては弾を温存しないといけないし。


 ミシェルンは早速、スキル『呪殺の糸』を巧みに操り、通路の一か所に網を張る形で敵をからめとり一網打尽だ。

 糸に捕らえられた瞬間から強力なスリップダメージが入る、ツチグモの専用スキル。


 防御力は低いが何気にトリッキーなキャラで使い方次第ではいくらでも活躍できそうだ。


 しばらくダンジョンを進むと、先頭を歩くサンバが歩みを止めた。


「お! 罠発見っすね。へへへ、このゲームの死にスキル『罠解除』がようやく役に立つ時が来たっす」


 言われてみれば今まで罠なんて存在しなかった。

 サブクエストを受けてないから知らないが、死にスキルには違いないだろう。


 おそらく、クリエイター側も忘れてたんだろうな。

 ローグ職のプレイヤーからクレームがあったから実装しましたってのが正しいのでは、と余計な勘ぐりをしてしまう。


 しかし慣れてくるとダンジョンは結構暇だった。


 弾薬の温存もあるが俺の仕事は何もないのだ。

 まあいいか、インフィとミシェルンは順調に仲良くなっている。


 しかし、問題はいつ本題に切り出すかだ。


 貴方は爆弾犯ですか? なんて聞けないし、聞いた時点で逆上し爆破スイッチを押そうとするだろう。


 そしてその反応を察知した軍事衛星に狙撃されて死ぬ、その後は証拠は秘密裏に処分されて無かったことにされるのだろう。


 付き合いが出来てしまった今としては、そういう結末だけは避けたい。根は悪い人ではないはずなのだ。

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