第52話 引きこもりちゃんと幼なじみの彼氏

 私の名前は引田 天音(ひくた あまね)という元女子高生である。引きこもり過ぎて出席日数を限度オーバー、とうとう高校をやめることに至った。

 引きこもりの理由としては人間関係に疲れたことだろう。高校一年生にして社会というモノに疲れてしまって、二年生に進級すら出来なかった。

 高校すらまともに通えなかった私である。社会に出て働こうにも上手くやれる自信が全く無い。というか働くのは昔から嫌悪感を抱いている。ずーっと散らかった部屋でゲームしながらダラダラ生きていたい。

 一縷の望みとしては、隣の家の幼馴染の同年代の男の子である小山内 満(おさない みつる)君が私を甲斐甲斐しく世話してくれるという点である。部屋の掃除からゲームの相手に、休みの日なんか昼食を作ってくれる日もある。オマケに頭も良く顔もイケメンで将来有望株。そんな彼が私を養ってくれれば万々歳なのだ。というかそうであってくれ。

 だが、人生そう上手くはいかないのだ。その証拠に私の部屋にこんな女が入ってきた。


「どうも初めまして、私は小山内君と付き合っている、二階堂 美里(にかいどう みり)です。宜しくお願いします。」


 な、なにぃーーーーー‼彼女だとーーーーー‼そんなの聞いてないーーーー‼あと突然入って来るな‼ノックぐらいしろーーーー‼


「えっ?あの?二階堂さんは満君と付き合ってるの?」


「はい、三日前から付き合い始めました。」


 えらい最近からだな、この野郎‼どうしてくれる‼私の計画が丸潰れじゃないか‼

 この女、顔も小さくて可愛いし、ツインテールの髪だってツヤツヤ、体もモデル体型でスラッとしてると来たもんだ。私なんか不摂生で顔にニキビは出来てるし、髪はボサボサ、お腹はブヨブヨ、勝てる要素なんて一個もありゃしないよ。こん畜生‼

 この女、大体何しに来たんだ?私をあざ笑いに来たのか?お気の済むまで笑うが良いさ‼


「引田さん噂にたがわぬ可愛い人ですね♪見てて癒されます♪」


 えっ?怖いこの子?何言いだしたの?

 私を見てて癒されるだと?馬鹿も休み休みに言え、現代日本が生んだ闇だぞ。


「私、告白した時に小山内君から言われたんです。『俺は幼なじみの世話を一生見るって決めたんだ、だから付き合うとか結婚するとなると、君にもそれを手伝って貰うことになるけど、それでも良い?』って。」


 ・・・なんちゅーことを言うんだ満君。いやいやありがたいけども、そんな硬い決心をしてたなんて知らなかったよ。なんか重いなぁ。


「だから私、OK‼って大きな声で即答したんです。」


 いやいやテリー・ボガードかよ。なんで即答出来たのよ。怖いよこの子。


「私、家事全般出来ますし、将来は介護福祉士になるつもりなんです。だから引田さん・・・いいえ、天音ちゃんのことを世話してあげられると思うんです。」


「ひょえええええええ。」


 あまりのことに「ひょえええええええ」しか言葉が出て来なかった。きっとコミュニケーションスキルの欠如が原因だと思う。


「だから今日は親交を深めにやって来ました。とりあえずお風呂で裸の付き合いをしましょう。」


「風呂⁉何で急に⁉」


「だって天音ちゃん、洗ってない犬の臭いしますよ。大丈夫です、私が全身くまなく洗ってあげますから♪うへへ♪」


 急に変態親父の様な声を出す二階堂さん。私は逃げようとしたけど、あっさりと捕まり風呂場まで連行された。

 そこから先は言うことが憚れるが、百合の薄い本が厚くなりそうな展開になったことは言うまでもあるまい。

 女子同士で仲良くなるとはそういうことである。


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