第8話:覚醒
マルケルがふと目覚めると、そこには見慣れない天井があった。
「…ここ、何処だ…?」
外は昼間のようで、太陽の日差しが白色のカーテンを貫き、入ってくる。いつもの制服とは違い、マルケルは病衣の様なものを着ていた。自分が今いる空間、さっきまで寝ていたベッド、それを見てマルケルは、怠慢の後に気を失ったのを思い出す。謎の力が溢れ出し、全く記憶にない魔法を唱えた様な気がしなくもない。あの時の頭の中は真っ白で、自分の身体がまるで物凄い強い何かに操られていたように動いていたのが微かに記憶に残っている。そのことについてよく思い出そうとすると、頭に激しい痛みが走った。その時だった。
…がらがらがら
部屋の扉が開いた。
「マルケル君、起きたかなぁ…。あ!」
そこにはエマが立っていた。
「起きたんだ!先生呼んでくるね!」
何が起きたのか分からず、マルケルは茫然としていると、数分もしない内に、エマと若い女の先生が小走りでやってきた。
「どれどれ…。本当だ、起きてるね。」
先生が壁に掛けられた聴診器を手に持ち、マルケルの身体に当てる。
「うん…。問題無しと。」
「良かったぁ…。あ、この人はウェラム・キュア先生!医務室にいる先生だよ!」
「あ、どうもー。ウェラム・キュアでーす。」
「あ、どうも…。」
挨拶を適当にすまし、マルケルは疑問に思っていることを質問する。
「ここはどこですか?俺は、どうしてここにいるんですか?」
「あー。ここは医務室。私が働いてるところって、エマちゃんがさっき説明してくれたでしょ?そして、君は首席との怠慢で、急に覚醒して、脳が追いつく前に、身体を無理に動かしたから、気絶したんだ。そのお陰で丸二日、君は寝ていたよ。」
「丸二日も!?」
「うん。」
ウェラムは如何にも当然のように言った。
「そんな驚くなよ。君は覚醒したんだ。誉なことだよ。」
覚醒…。確かカルムも戦っている間にそんなことを言っていたな。
「覚醒って、なんですか?」
「君は何も知らないんだな…。」
呆れた顔で、ウェラムはこちらを見てくる。
「まぁ、良い。説明してやろう。覚醒というのは、特異体質のものにしか現れない。大体は遺伝だが、たまに突然変異で覚醒能力を持つ者がいる。そして、覚醒した者は本来の技よりも高い能力の技を使うことができ、その間には、額に模様のようなものが刻まれる。今の君の顔にもとても薄いが、刻まれているぞ。」
そう言うとウェラムは鏡を渡してくれた。
「え…?本当だ。【♤】の文字が刻まれている…。」
「ただ…。」
ウェラムは腕を組んで悩んでいる。
「どうしたんですか?」
「エマちゃん、彼は"
「はい!確かに言ってました。」
「その技は本来♤♡♢♧の4文字が揃って、初めてできる技のはずなんだ。それなのに彼は、♤しか刻まれていない。一度刻まれたはずの痣は、消えることなんて本来無いのに…。」
マルケルが何も言えず、鏡とにらめっこしていると
「まぁ、君に言えることはただ一つ。君の身体は本来、まだ覚醒できる身体じゃなかった。こんなことで、丸二日寝込むのであれば、覚醒状態で技を撃てたことが奇跡だ。痣が消えた原因や、覚醒したら気絶してしまうほどの身体なのにも関わらず、覚醒してしまった理由は分からない。今日は、念のためここで休んでおいて。今出たら、皆から"新首席だー!"とか言われて、疲労が溜まるだけだろうから。まだ完全に回復していない君の身体に悪い。」
「え!?俺、勝てたんですか?」
「君、その記憶もないのか…。そうだよ。君は元首席のカルムに勝ったんだ。」
マルケルは心の底から喜んだ。また天国へ一歩近づくことができたのだ。これで仲間も2人。しかも、どちらも優秀だ。
「それと…。元首席が君と話したいって。明日、会いに行ってあげなよ。」
「あ…。分かりました。」
ウェラムとエマが部屋から出ていき、マルケルはベッドに寝転んだ。マルケルの顔は、不敵な笑みを浮かばせており、その顔はまさに悪役集団の指導者だった。
✣ ✣ ✣
「どうですか?あの…賭博師は。」
「君も学んだねぇ。まぁ、そんなことはどうでも良い。彼、首席に勝っちゃったよ。」
「左様ですか?」
「あぁ。まぁ、勝てるチャンスを与えたのは俺だけどね!」
「…どういうことですか?」
「俺も賭けをしてみたんだ。
そう言った彼の顔はベッドに寝転んだマルケルの顔と綺麗に重なり、崇拝者はただその顔を見つめることしかできなかった。
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