第2話 遭遇

「なんでカシワギ先輩が!ハルマの布団に?!」


俺は飛び起きた。



「いやいや、人聞きの悪い言い方をするなよ。僕を帰さなかったのは、お前だろ。」


カシワギ先輩がジロリとこっちを見た。




昨日のことを、思い出した。


昨日、大学の授業の履修の仕方をカシワギ先輩から教えてもらったのだ。

で、夕飯に三人でお好み焼きを作って食べた。

ここまでは、三人でいた。


そしたら、ハルマに電話がかかってきたんだ。

お母さんは看護師で夜勤、お父さんが出張で留守。

そんな日におばあちゃんの体調が悪くなってしまったから、実家に泊まりに来てと言われたのだ。



ハルマがいなくなった後、俺と先輩はパズルゲームをしたんだけど、俺が全然勝てなくて……。


『ちょっと練習してから対戦してください!』


って、言って練習して、対戦して、負けて。

また練習して……とやっている間に、先輩は飲んで寝ちゃったんだよ……。


だから、もう泊まるって話になって……。



「思い出した?」


先輩はニヤニヤしながらこっちを見ている。



「……思い出しました……。」


「まさか、新居に引っ越して、1か月もたたないうちに、恋人のベッドで浮気するとはね。」


「いや!ちがっ!俺はハルマだと思って……!」


「こんなに密着して、キスしても気づかないなんて、もう僕もハルマも同じじゃない?」


「たしかに、気づかない俺も俺だけど…。」



先輩も起き上がり、俺に抱きついてきた。


「まあ、僕でもハルマでもどっちでもいいというわけで。」


先輩が耳元でささやく。



「よくないよ!」


「しようよ。最近ヒビキは忙しくて、欲求不満なんだ。」


「知りませんよ!そんな事情!」


先輩がキスを仕掛けてくる。

捕まったら大変だ。

キスが嫌なんじゃない。

今キスしたら、本当に続きに突入してしまう。



「もう!いい加減落ち着いてください!」


絡んでくる先輩を、俺は押し倒した。




その瞬間に、ハルマが寝室に入ってきた。


ハルマと目が合う。


「お、おかえり……ハルマ……。」


「……ただいま。」


ハルマから凍りつくような視線をむけらた。

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