第14話 空港




 2094年12月某日、日本に向かうためにジョン達は空港に車で向かっていた。

 ジョン達が住むこの地域は、基本的に毎日が暖かい。日本の季節で言えば、春ということになる。ジョンはこの気候を気に入っていたし、マリーやエリーも気に入っているに違いないとジョンは確信していた。

 だからジョンは寒いという感覚がいまいちわからない。マリーは「12月の日本は冬で、冬は寒いわよ。温暖化の影響でいくぶん暖かいけど」と言う。日本人のマリーが言うのだから間違いないのだろう。

「ふゆってさむいの?」

 エリーがマリーに訊いた。

「ええ、日本の冬は寒いわよ。体調に気をつけなきゃね。あ、そうそう、寒いと雪が降るのよ、エリー」

「ゆき?」

「白くてふわふわしているの」

「? うさぎ、さん?」

「違うわ、エリー。まぁ実際に見てみればわかるわよ」

「ふ~ん、、、ゆ、き、ゆき、ゆっきー!」

 楽しそうにはしゃぐエリーを嬉しそうに見つめるマリー。ジョンも嬉しそうにエリーを見つめる。車内には楽しい笑い声が響いていた。


 空港に着き、ジョン達は早速手続きを行う。チケットに書かれてある識別コードをRBフォンに読み取らせ、ゲートをくぐる。

 特に問題なくゲートをくぐったジョン達は、約5時間のフライトにのぞんだ。

 離陸時、ジョンは耳が詰まるような違和感を感じたが、それは起こりうることだと案内ロボットが教えてくれた。

「エリー、耳、大丈夫か?」

「だいじょうぶ」

「そうか、それは良かった」

 窓際のエリーは外の景色を無言で眺める。

「恐いか?」

「……」

 反応はない。しかし、表情がかたく、予想外の高さに恐がっているようにジョンには見えた。

 離陸してから2時間。森、川、滝、大地といろいろなものがジョンには小さく見えた。が、エリーは窓の外を見たり見なかったりを繰り返していた。やはり恐いのだろう、そうジョンは思った。

 2時間後、マリーがうっすら小さく見えてきた日本を教えると、エリーは「あれがにほん?」と言った。

「そう、日本は小さな島国なのよ」

「……たのしみ」

「そうね。楽しみね」

 徐々に近づく日本に、エリーも徐々に興奮し始めた。

 マリーの出身地である西の都より少し離れた場所に国際空港があり、ジョン達の飛行機はそこに着陸した。

 案内ロボットに促され飛行機を降りると、バスでロビーの方まで移動した。

 空港を出たジョンとエリーは日本の寒い空気に驚き、身を縮めた。マリーは「こんなものよ」と言って、マフラーを首に巻く。そしてジョンやエリーにもマフラーを巻いてあげた。

「さ、行きましょ」

 マリーはジョンとエリーをレンタカーに促した。行き先を入力すると車は自動で走り出した。

 快晴。冬の空の下、ジョン達を乗せた車はマリーの実家へと向かっていった。



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