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時に君、文学とは何と心得るかね?


いや、君を困らせるつもりはなかったんだがね。

単なる思い付きだよ。


空が飛べたらとか生まれ変わったらとか、

そういう他愛もない空想の類だ。

意味などないさ。


・・私かね?


私は


”文学とは文字の間に空想のあるもの”


と言う言葉を推している。


これも私の思い付きだがね。


しかし思い付きとは言え

私の哲学には違いないのだろう。


私は繊細な描写で

読者の眼前に映像の流れるような文章を書けぬし、

壮大な長編も書けぬ。


だがね君、

文字を並べる作業は偉大な文筆家にだけ

許されたものではないはずだろう?


例えば過去を、季節を、独白を、

或いは意味のない言葉遊びのようなものを。


私は切り取って君に見せることが出来る。


まぁ、出来るとは言ったがね、

その実これしか出来ぬと言うのが本音だ。


結局のところ

私は出来損ないの物書きという訳さ。


いや、すまないね。

すっかり愚痴めいてしまった。


そういう空想にするつもりは

なかったのだがね。

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