恋人への手紙

たんぜべ なた。

愛しい君へ

 やあ、元気にやっているかい?

 久しぶりに思うところがあったので手紙を書いています。

 今年は暖冬と言われていたにもかかわらず、先週は大雪の影響で、電車やバスが止まってしまい、通勤はおろか、買い物にも出かけられず、一日引き篭もってしまったよ。

 もっとも、連日の残業、休日出勤で疲弊していたのだから、良い骨休めになったよ。


如月きさらぎというのは、春の到来は今しばらく待たねばならず、いつ冬本番になってもおかしくない時季なのだろうね。

 そう言えば、君の住んでいる所は常春とこはるの街…暑がりで寒がりの君にとっては、居心地の良い所だったね。


 ああ、手紙の趣旨を忘れるところだった。


 実は、バレンタインデーにチョコレートを貰ってしまったんだ…

 最寄り駅の改札口で…

 見覚えのない女子高生さんから…ね。


 たぶん、嫉妬深い君なら怒ると思うのだけれど…

 相手は高校生だからね?

 年齢差だって一周りあるんだからね?

 異性と言うより…娘ですよ!

 そうだねぇ、年齢で言えば君のほうが彼女たちに近いかな?


 そうそう、貰ったチョコレートはA4ノート程の大きさで、個性的なラッピングで飾られていたよ。

 中身は頬が落ちそうなほど、とぉ~っても甘々なミルクチョコレートだったよ。

 そうだね、ブラックコーヒーでようやく釣り合う甘さだ。


 思えば、君からバレンタインデーのチョコレートを貰わなくなって、久しいね。

 まぁ、だったという事で、僕がチョコレートケーキを持って行く機会のほうが増えてしまっただけなんだけどね。


 エンジのスクールブレザー、首に巻かれた紺色のマフラー、チェックのミニスカートが寒々しい女子高生…。

 見覚えのない顔の女の子だったけど…昔の君をふと想い出す…そんな雰囲気の娘だったよ。


 さて、要件は語り終わったので、この手紙はここまでとするよ。

 気が向いたら、また手紙を書くよ。


 愛しい君へ

 変わらぬ想いと共に

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る