スノードロップ
スノードロップが保持するのは死の記憶。瓶に入れて栓をして、永遠に閉じ込めておくのだ。神父は雪の吹き付ける山中の小屋の中でそれを見た。棚に収められた瓶という瓶の中で白く、つややかに輝いていた。ありとあらゆる死が、その場所にはあった。あの髭面の男がそれらを恍惚とした表情で眺めているところを思い描き、神父は身震いした。それと同時に、男が神父の足にしがみついて顔を埋め、声を上げて泣いたことを思い出した。彼の熱い涙が腿を伝う感覚がする。彼はそうして何分も、何十分も神父の足で泣いた。彼にとってスノードロップの焼却は、彼の人生の否定に等しかったのだ。神父は既に火を放った小屋を見つめながら、男の行く末を考えた。小屋が、圧倒的な異彩の内で崩れてゆく。壁の向こう側が露わになる。吹雪の中に、燃え盛るスノードロップが映えていた。
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