レベル12 転生するまでの間での
これは転生して生き返る前のほんの少しの間での出来事。
遺影ッ!
この際だ。ハッキリしておこうか。
俺は勇者などではない。間違いなくな。神に誓って勇者などではない。うむっ。
一回目の転生が行われる前、俺は、全てが始まる街、コカーラの入り口で、ようこそ、と旅人に言う役を担わされたモブだった。もちろん、ただのモブじゃない。モブキングを目指す、モブの中のモブ。キング・オブ・モブだったわけだ。
そして、もう一つだけ、言いたい。
一番、始めに殺された時、魔王に殺されたと俺は言った。
無論、その発言には問題などない。
間違いなく魔王に殺された〔魔王の命による配下の襲撃を受た〕のだから、そこに齟齬などない。だが、いくらか勘違いさせてしまうような発言だったと思う。今の俺はな。それが、なんなのかを少しだけ真面目に語らせてくれないか。
真面目にだ。ギャグはなしでだな。
遺影ッ!
その時、勇者は殺されたわけだ。それこそ間違いなくな。
そうなのだ。お湯をかけ、三分、待てなくてカップヌードルが作れると思うか?
同時に。
カップスープはクノールじゃなくても我慢できるぜ派か?
その昔、
宮崎あおいがCMしていたクノールカップスープの素が、小泉純一郎と小泉進次郎がフュージョンして小泉進一郎に改名し、そののち小泉今日子になってしまったら、どうだ。いや、想像したくないと断固拒否されても、だが断るでも……。
すでに脳内に宮崎あおいがスタンバってるから無意味だ。
クラッチングスタートの姿勢でやる気満々の勇気凜々だ。
遺影ッ!
「あのね。ビチ。あんたは本当に無駄な事を考えるね。そんな事をやってるから時が無為に過ぎていくんだ。時間は有限なんだから、ちょっとは大事にしな」
というか、さね魔人、香恋だったか。お前、最近、口調が微妙に変ってないか?
「そうさね。それは、この世を作った神が、私のキャラを掴みかねてるからさ。なんというか、語尾が、さね、なんてキャラを創った事がないとか、なんとか」
うむっ!
それは言ってはダメなメタ発言だな。まあ、でも、このお話にはデフォ装備だ。
メタ発言もな。何故ならば神の思考すらも俺の頭の中に入ってくるんだからな。
まるで津波が押し寄せるようにだ。
というか、スタンバってた宮崎あおいが、デビルマンになってる。お前は既に死んでいる、と言いながら笑っている。オラ、ワクワクっすぞ、とな。いや、死んで勝つ、と、死んでも勝つは全然違うよ、恵、なんて笑ってる。宮崎さんがな。
SHISHAMOの宮崎県産だな。
遺影ッ!
元宮崎県知事は東国原の英夫だぞ。
そのまま東。北ではなくて東だぞ。
タケシ。
「もう呆れるしかないさね。言ってるそばから無為を考えるなんて阿呆としか言えないね。勘違いさせるような話をしてしまったって件じゃなかったのかい?」
そうだ。
そうだ。
蒼田だ。
あっ、誤字じゃないぞ。と、あるサイトで仲良くさせてもらってる方の名前だ。
このモブキングを目指すモブ〔俺〕とだ。妄想の中でと言っておこう。こんな所に書いたら気分を害するかもだからな。呼び捨てだし。済まんと言っておく。違う。違う。そうなのだ。今は勘違いさせるような事を言ってしまったという件だ。
ジョン。
仕切り直しのジョンだわよ。ふう。
俺は大きく息を吐き、そして心を落ち着ける。静かに目を閉じる。思うのだ。魔王の命によって襲撃してきた配下に勇者は殺された。その時、俺も死んだ。魔王の配下によって殺されたのだ。そこに間違いなどない。むしろ、それが事実だ。
ジョン。
クソう。
ジョンと言ってないと、また口が勝手に動き、いらない事を言い始めてしまう。
ジョン。
クソう。
ジョン。
「ジョンドット五世。気づいたんだけど、もしかしてだよ? もしかしてビチの因果律が、いや、世界の因果律が、ビチの口を動かしてるんじゃないのかい?」
「うむっ」
とジョンドット五世が咳払をする。
「そうかもしれぬな。もちろん世界の因果律だからこそ光が届く範囲でしか影響を与えられないと考えられる。が、余は思うのだ。因果律は無限だとな。夢幻だ」
ジョン。
ジョン。
ジョン。
「だとするならば、このジョンの連呼すら因果律に縛られてるって事なのかい?」
ジョンドット五世。そうなのかい?
「まあ、そうとも言えるが、実際のところ因果律がどこまで世界に影響を与えるのかは分からぬ部分があるゆえ。何とも言えないというのが正直なところだな」
ジョン。
てか、さね魔人とムキムキ言語が、なにかしらの会話していたみたいだが……、
冷静になるのに必死で聞いてなかった。聞き逃した。ヤツらは何を言っていた?
いや、今は、そんな余計な事は、一旦、おいておこうか。
なんだか情報が山積みになってしまい、モブキングになるべくして平凡を極めようと思っている俺の脳がショートしそうだ。片山右京と角田裕毅と鈴木亜久里がスパークしてレットゾーンをぶっちぎり小林可夢偉にもなりそうなイキオイだ。
ぶおん。
とインディーカーが爆走してミジェットカーになっちまった。F1ではなくな。
むむむ。
もう一度、プロンプト〔呪文〕をAIに入力して錬成だ。
ジョン。
ジョン。
ジョン。
「うむっ。余の名を連呼されているような気にさえなるな」
とジョンドット五世が静かに笑む。
「ジョンドット五世、その名は偽名なんだろう? 無論、香恋も偽名だと言いたいが、こっちは偽名じゃないくて本名さね。それにも秘密があるのかい?」
「あるであるな。まあ、ビチが考えんでもいい事なのだが」
「そうだね。ビチは、余計な事など考えず、因果律に身を任せるのが正解さね。もちろん、それが私らの利になる。言うまでもないが、ビチの利にもなるさね」
「うむっ」
と最期にジョンドット五世が、また顔を綻ばせて笑った。
ような気がした。俺からは姿が見えないからな。遺影ッ!
そして。
俺の体は光に溶け粒子となり、その塵が新たな体に入る。
無事に次の体へと転生したわけだ。本当にやれやれだな。
ジョン。
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