犬語り
「わんっ! わんっわふっわぉん!!」
「吠えちゃダメよ。近所迷惑でしょ? あなたのすぐ傍で叫び続ける人間がいたらどう思うの? うるさいって思うでしょう? 迷惑に感じるでしょう?
聞いた人――聞いた犬が不快になるかもしれないの。必要に迫られているわけじゃないなら、吠えるべきじゃないの。分かった? 分からないならおやつあげないからね」
「わふ――わぉんわん!!」
「こら。だから吠えちゃダメだってば。しー。……どうして吠えちゃダメなのか、もっと一から説明しようか? 長くなるよ? それをずっと聞いてなきゃいけないんだよ? いいの? あっ、逃がさないからね、ちゃんと聞きなさいよー!」
抱きしめられ、じたばたともがく飼い犬に向かって、ご主人がこんこんと説明していた。
お説教ではないけれど……そうだったとしても飼い犬はどこ吹く風だった。
視線は明後日の方向に向いている。
「――――だからね、玄関前を誰かが通っただけで吠えるのは、意味がないから、」
「ねえ、ずっと犬に言い聞かせてるけど、喋り損じゃない?」
…了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます