第5話 勇者の休止期間

 まあ、そこからはしばらく順調に我輩の配下を倒しよったみたいだが……ん? そういえば!


 昔を思い出しながら引っかかる。


 「なあ、長いこと勇者が全然動かない時があったよな? あれもお金がなかったのか?」

 「いえ、それは子育てに励んでいたからでしょう」


 な、なんだと? 人類の危機に子育てだと?


 「どういうことだ?」

 「あー人間にとっては30歳ぐらいが適齢期らしく、行き遅れになりたくないと魔法使いと恋仲になったようです」


 おう、あの2人まさかの夫婦だったのか……。

 というかコイツ本当に勇者としての自覚はあるのか?


 「そして子供が生まれ、育てるために旅を休止したというところです」

 「他のやつらはその時どうしていたんだ?」

 「遊び人は勇者を狙っていたみたいで、不貞腐れて毎日バーに入り浸りだったようです」


 それであんなにお腹が出てしまっているのか!?


 「盗賊は盗みを働いたので捕まって牢に入っていましたね」

 「盗み?」

 「家に入ってはタンスを開けたり壺をわったりして入っていた物を盗んでたんです」


 ろくな奴がいない、本当にどうなってるんだ?


 「というか勇者の仲間を逮捕して人間はそれでいいのか?」

 

 魔王討伐が最優先だと思うが。


 「勇者が子育てで動けないのでちょうど良かったんでしょう。16年ぐらいですかね、ちゃんと子育て終わったら解放されましたよ」


 相当悪質な盗みを働いてたんだなコイツは。

 それで足腰が弱くなってこのザマなのか。


 「まあ、子育てが終わったら魔法使いの方から離婚を切り出したみたいですがね」

 

 ……思ったより複雑だなコイツら。


 「というか、変な編成だよな? 遊び人に魔法使い、盗賊だけなんて」

 「あー、剣士も仲間にいましたよ」

 「なんと!」


 良いじゃないか剣士! 強そうじゃないか剣士! 

 こういうのでいいんだよ!


 「で、なんでソイツはいないんだ?」

 「それが……」


 悪魔神官が顔を伏せる。

 何か深刻な理由――。


 「もしかして死んで――」

 「年がいって肩が上がらなくなったので引退しました」

 「なんじゃそりゃ!!」


 いかんいかん、思わず叫んでしまったわ。

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