第7話—休暇2—

 「ポーション、薬草セットを買っておくか、高いがこれ買えばしばらく持つだろうし。」

 ここはスペルビア王国最大の商業施設、トラストーン商会。レオ達は今そこで買い物中だ。クライドは買うものが決まったようで、一足先に近くのメイドに声をかけた。

「レオはなんかいいのあった?」

 シルヴィアがサービスで出されているお茶を飲みながら話を振ってきた。レオは先ほどから鎧売り場から離れておらず、何かとても悩んでいるようだ。

「あ、いや・・・今回買うわけじゃないんだけどさ・・・こういう鎧着てみたいなぁ~と思って・・・」

シルヴィアが鎧に目を向けると、目を丸くして固まってしまった。なぜなら—

「ドントレシアの堅忍甲冑じゃん!?これこの商会で一番の代物だよ・・・魔法の品出しだから78000Gもするよ?!」

「それでも夢語るくらいはいいじゃん!」

「いや全然いいよ!そういう気持ちはわかるから。」

「シルヴィさん、レオさん、ちょっと声大きすぎですよ。」

 ロークにたしなめられ、ようやく大声で話していたことに気が付き、顔を真っ赤にして縮こまってしまった。

『・・・穴があったら入りたい・・・』

**************************************

「恥ずかしかった・・・」

 一度場所を移したレオ達はベンチに腰かけていた。クライドは、会計を済ましてくるといってまだ戻ってきていない。ロークは会いたい人がいるらしく、メイドについていったきり戻ってこない。結果的に今この場にいるのはレオとシルヴィアそしてギルバートの3人だ。

「まぁここまでくれば大丈夫だろ?それより今度はお前の番だぞシルヴィ。」

 ここまでくる間に誰のものから見て回るかを決めており、1番目がクライドの薬草、2番目がレオの鎧(結局何も買わなかったが)、3番目にロークの弾丸を買うはずだったのだが、レオを探している間に買えたそうなので次はシルヴィアの番というわけだ。

「おっけー!まぁ買いたいものは決まっているから!」

 しばらく歩くと、ぬいぐるみがたくさんあるような場所にきた。思わず男二人は顔を見合わせてしまった。場違いな場所に来てしまった。

「お待ちしておりました、ソーウェル様。ご注文の品はご用意できております。」

そういって、くまの背負うタイプのぬいぐるみが置かれていた。

「意外とそういう趣味あるんだな・・・」

「違いますー、インテリアニマルサックですー。」

 そういって口を尖らせた。インテリアニマルサックとは、友人扱いで魔法文明語で語りかけ、アドバイスしてくれるのだ。基本上から目線で。

「なんだ?女の一つや二つの趣味も付き合えないのか?つまらん男だな。」

そう高いアルトで言われた。くまのかわいい顔をして。なんか悔しい。レオはそう思った。

「しかしよろしく頼むよ。ご主人様。あんまりへまをやらかさないでもらえるとありがたいがね。」

「ご希望以上の成果をだしてあげるわ」

そういってにやりと笑った。案外いいコンビだなと蚊帳の外のレオは思っていた。

「なんでも相談に乗ってやる。恋愛相談とかあれば、是非聞かせてくれ。」

「え?!」

—え、なにその反応—レオは思わずそんなことを思ってしまった。確かに俺はシルヴィのことが好きだけど、向こうはそうだとは限らない。そんなことはわかりきっているはずなのに・・・。そんなことを延々考えてしまい、ギルバートに肩を叩かれ、ようやく正気に戻った。

「ひとまずお前、いっぺん落ち着け。」

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「おや?なんだかかわいらしいものを背負っていますね?」

 戻ってきたロークが物珍しそうに答えた。クライドも一緒におり、どうやら用事は済んだようだ。

「別にいいでしょ、能力は高いんだから。」

「でもくまのぬいぐるみにしたのはあなたの趣味でしょう?」

返事はない。図星のようだ。

 最後にギルバートが預けている斧を取りに行くため、トラストーン商会をあとにし、国で一番古い武器屋にいった。道中、レオが死を一度だけやり直せるといわれる“奇跡の首飾り”を買った。

「お!マスティアじゃねぇか!」

 ギルバートが声を上げた先には、ナイトメアの青年がいた。どうやら知り合いらしく、向こうも気づくと手を振り返した。

「やぁギルバート君。君も武器の回収かい?」

「おう!旦那の手入れが終わったってきいてな。こっちは今の仲間のレオ、シルヴィア、ローク、クライドだ。あ、クライドは会ったことあるな。」

ギルバートの紹介にレオ達は軽くお辞儀した。

「初めまして。僕はマスティア フルセリア。まぁ傭兵みたいなことをやっているよ。」

 その後しばらく立ち話ををしていたが、武器屋の旦那が「お前ら何も買わないのなら帰れ」と言われ、お開きとなった。

 その歩く帰り道を、後をつけて観察する者がいた。どうやらだれも気付くことができていないらしく、ばれてはいないようだ。

 「・・・あれが、ファルシュ様が言っていた冒険者か。腕は確かなようだが、尾行の一つ気づけないとは・・・」

こうして彼らの休暇は過ぎていった。

第7話—休暇2—完



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