KILLING ME SOFTLY

環F

この世界であって、この世界でない場所


 真っ白い部屋、少女はベッドに腰かけている。

 何もない、誰もいない──、

 いえ、枕元に置かれたぬいぐるみだけが少女を見ている。

 そう、そこはただの安全で清潔なだけのつまらない部屋。

 ここに窓はない、昼も夜もない、

 天井の蛍光灯だけが白い光を永久に放ち続けている。

 少女はもう何年も外に出ていない。

 もちろんそれは少女を守るため。

 少女は外に出ては一人で生きていけないから──、

 どこか遠くのほうからサイレンの音が聞こえてくる、変化はおとずれる。

 逃げなくっちゃ、でも無理なの。

 ずっと前からそうだった、逃げることは許されない。

 あいつが許さない。

 あいつは私の弱みを握っている。

 あいつは私を助けた恩があると思っている。

 もちろんそれは真実だけど、それだけで殺してないのは知っている。

 あいつにとっては存在の証明、ただの快楽。

 今度あいつを止めたら、あいつは私を許さない──、

 絶対に許さない。

 もう痛いのは嫌だ、絶対に嫌だ!

 殺すなら優しく殺せ!

 汚い言葉をかけながら、優しく──、

 少女はウサギのぬいぐるみを力いっぱい握る。

 捻って握る。

 捻って潰すように強く握り潰す。

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