KILLING ME SOFTLY
環F
この世界であって、この世界でない場所
真っ白い部屋、少女はベッドに腰かけている。
何もない、誰もいない──、
いえ、枕元に置かれたぬいぐるみだけが少女を見ている。
そう、そこはただの安全で清潔なだけのつまらない部屋。
ここに窓はない、昼も夜もない、
天井の蛍光灯だけが白い光を永久に放ち続けている。
少女はもう何年も外に出ていない。
もちろんそれは少女を守るため。
少女は外に出ては一人で生きていけないから──、
どこか遠くのほうからサイレンの音が聞こえてくる、変化はおとずれる。
逃げなくっちゃ、でも無理なの。
ずっと前からそうだった、逃げることは許されない。
あいつが許さない。
あいつは私の弱みを握っている。
あいつは私を助けた恩があると思っている。
もちろんそれは真実だけど、それだけで殺してないのは知っている。
あいつにとっては存在の証明、ただの快楽。
今度あいつを止めたら、あいつは私を許さない──、
絶対に許さない。
もう痛いのは嫌だ、絶対に嫌だ!
殺すなら優しく殺せ!
汚い言葉をかけながら、優しく──、
少女はウサギのぬいぐるみを力いっぱい握る。
捻って握る。
捻って潰すように強く握り潰す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます