第46話 「不機嫌を分けてくれてありがとう」
昼間、米を探して、スーパーを2件回ったが、どちらにもなかった。
期待せずに3件目に向かって自転車を走らせていると、「チッ!」と、商店街の信号待ちをする爺さんとすれ違い様に舌打ちされた。
前を横切っただけで、何も迷惑はかけていない。仮に迷惑をかけたとしても、一瞬、視界を遮っただけだ。
視界を遮られるのがそんなに気に入らないのか疑問だ。
僕だったら、信号待ちをする自分の前を例え遮られても、99%舌打ちなどしない。
だって、世の中お互い様、何か自分が迷惑をかけることもあれば、相手に迷惑をかけられることもある。一生の怪我を負うような大事故でもなければ、お互い様の精神で寛容に済ませたい。と、僕は思う。
「些細なことでイライラする不寛容な人が嫌いだ。それに、不機嫌は伝染する」
爺さんともちろん喧嘩することもなく、心でイラっとしながら、自転車を漕いで3件目のスーパーへ行った。
米があった。こしひかりの新米だ。しかも、高すぎず、5キロ3000円と頃合いの値段だ。
これで、少し、ハッピーになった。が、スーパーで他の食材を物色していると、糸の切れた凧のように、あっちやこっちや走るキッズを連れた若いお母さんがいた。
「あんた、勝手に走り回らない! ホントイライラする‼」
ああ、また、心の闇が迫って来た。さっきの爺さんの不機嫌を堪え、今度は、不機嫌なお母さん。「やめてくれ」心が濁る。
残暑の厳しさのせいかもしれない。暑いだけで人は不機嫌になる。(もちろん、科学的データは知らない)
だからと言って、自分の不機嫌を赤の他人の前で披露しないで欲しい。(と、言いつつ、僕は自分が受けた不機嫌を記事として消化する訳だが(笑))
舌打ちお爺さんも、今日と同じ態度で奥さんに文句ばっかり言っているのだろうか? そんな態度で、身近な人から疎まれないかしら?
イライラお母さんも、確かに、言う事を聞かないわんぱくキッズを持つお母さんの気持ちは分からんではないが、もう少し、穏やかな言葉を使うことはできないだろうか? 周りで聞いた僕がすごく嫌な気持ちになった。
まあ、舌打ち爺さんも、イライラお母さんも、後1、2か月もすれば、気候が涼しくなり、機嫌も良くなるだろう。
その点、僕の両親は、機嫌がイイ人だった。
母には怒られたことないし、父には「一生のお願いを、何度もお願いされただけで」小遣いもくれるし、お金で苦労するような生活をしないでこれた。本当に、両親には感謝しかない。
「あれかな? 機嫌が悪い人って、もしかして、貧乏なのかな? いや、言い方を変えよう、生活が苦しいのか?」その苦しさを我慢しすぎて所かまわず吐き出しているのかな?
気持ちは、分らなくもないが、ちょっと、止めてほしい。要は、問題の受け止め方ではないか。
僕は、貧乏で才能もない。家族もいないが、それなりに人に恵まれて気分よく生きれている。
そりゃあ、シンドイことも、理不尽な目に合うこともあるが、それもまた人生経験。顎を引いて歯を食いしばって、「逆境を乗り越えて見せるぞ!」と、寝込まない程度にがんばる。逆境を乗り越えたら、すごく自分を誉めたくなる。
身近な人への文句って、よっぽどじゃないと言わない。苦言を呈して良くなる柔軟性な人には言う。傲慢な人には言わない。
「はっ! そうか、何らかの理由で、人生を諦めて、捻くれて傲慢になった人が不機嫌マンになるのではないか」
つまり、「不機嫌マン」はこれまでの過去の人生において、何かのきっかけで、捻くれた人。自分の心に溜まった鬱憤を咳するように他人にばら撒かねばいられない人なのではないか。
咳は、我慢しようにも我慢できない。風邪をひいたことがない人はいないから、「不機嫌マン」の態度や言葉は、咳だ。
治療が必要な病人なのだ。とりあえず、自然治癒するまで家で一人で、家族とも出来るだけ顔を合わさずに、寝ていて欲しい。
そう、「不機嫌マン」には、不機嫌ウイルスへのワクチン接種が必須なのだ。
ワクチンに当たる者は、なんだろう?
僕だったら、推し、談笑、美味い飯を食う、創作、読書、ゲーム、散歩、スポーツ、人の良い所を見つけて言葉にするだ。
「不機嫌マン」は、ワクチンどれくらいもってるのかな? たぶん、不機嫌への抗体が少ないんだろう。
今度、不機嫌な人に会ったら、心の中で、言ってやろう。『不機嫌を分けてくれてありがとう馬鹿野郎!』と。
これ書いて、気持ちがスッキリしたので、僕はご機嫌。
皆さんも、「不機嫌マン」に出会ったら、「不機嫌を分けてくれたありがとう。(心の中で)馬鹿野郎!」と伝えて上げましょう。
間違っても、「馬鹿野郎!」は言ったらあかんで、喧嘩になるから、それでも言いたけりゃ、(ごにゃごにょと)聞き取りにくく「馬鹿野郎!」と言いましょう。
はあ、物書きでよかった。言語化してすっきりした。
〈了〉
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