第31話
「それで真面目な話をするが、あんたの症状はどうだったんだい?」
「……あん?」
午前中から始まった店でのサシ飲みともいえる状況から一転、昼時の繫盛時に居座る厄介者扱いをされそうだったというかされたので、仕方なく宅飲みに変更していた。
そうして、持ち寄った肴をあてにして愚痴を聞かされては互いが空瓶を数本転がした時に、急に真面目な顔つきになっては話の内容が当時の状況を聞き始める形になっていた。
「……そうだな、たしか頭が痛いというか、異様な熱が出てはまともに判断できなくなってたな」
「ふむ、他と一緒か……他にはないか?」
「……他というか身体が酷くだるくなって、呼吸するのも辛いといったぐらいか?」
「そこも同じか……」
「……というか、急に真面目な顔してどうした?」
向かいに座るハイエルフのBBAは何かを考える風に口元に指をあてては深く思考していたが、秘蔵していた酒をあおってから再び口を開いた。
「正直な話をするとだ。こっちが処方した秘伝の秘薬を飲ませたとは聞いたが、あれが今回のに効くとは思っちゃいなかったもんでな」
「……はぁ?なんだそりゃ?しかし翌日には普通に起きれるぐらい効いたぞ?」
そうすると、さらに真面目な顔つきになっては「ここだけの話だがな?」と前置きを言ってから
「時期的に流行り病と思う?奴だな。なんせ隣の領地じゃ似た症状で死者が多数でてる」
「……は?」
「となりの領地に近い村じゃぁ、そりゃぁヒドイ有様だったよ……」
「……」
遠い目をして、ふたたび酒を口にするハイエルフのBBA。
そこには、何とも言えない悔しさともいえる目をしてた。
「秘伝の解熱剤や回復の奇跡で対処しても、熱は下がるが後からぶり返す。そうして長い事寝たきりになっては、あとは本人の体力次第。年寄りは体力なくてぽっくりが多かった」
「……」
「しかも、感染の類が酷くてな、人から人への経路で広がっていてな……」
「……かなり、広まったのか?」
「ああ、かなりな、少なく見積もっても対応していた数百人単位は確実だろう、把握していない分を加味すれば、それ以上はいると思えばいい」
「……そ、そうか」
……重たい話にはなってはいるが、ワシは一命を取り留めたってことでいいのか?というか、あの残念美人のお陰ということでいいのか?いいんだろうな。
「とこがだ、この領都周辺からパタリと広がるのが止まっている。そして、少なくともこの領都ではそんな病人が数は出ていない。不思議なことが起きてたんだよ」
「……なんだそりゃ」
たしかに、この酪農業で栄えているために、いろんな流通がある街ではあるが、そうなると流行り病なんてものは、すぐに広まるハズだが……
……あれ?確かに、そんな流行り病の話はてんで聞いたことねぇな
「……ちょっとまて、そんな病が広まってるなんてこの街じゃ聞いたことねぇぞ?」
「ああ、そりゃそうさ、もっと不思議な話をしてやろう。罹患してたやつがこの街の宿に泊まったら治ったっていうんだ」
「……はぁ?」
「それも、一人や二人じゃないね、泊まったやつ全てでだ」
「……」
「もひとつ付け加えるとだ、巡回医で回って気づいたが、この街を"中心"にそういう奇跡みたいなのが広がっていた」
この街を中心に、病が治ると……
……思い当たる節が、十中八九予想がついちまった。が、これは言えねぇよなぁ
「でだ、さらに絞り込んでみれば、あんたの症状を聞けば罹患した内容そのまんまで確定だ。そして、その回復してから後にその"不思議な事"が起き始めてるのも突き止めている」
「……」
「おい、チビたれ。何かやったなら吐けよ?聞き出すまでは絶対に逃がしゃしないからな?」
「……そう言われてもなぁ」
つぅっと冷や汗が背中を伝って落ちてる感覚を感じた。
もう答えがたった一つしか思い浮かばない。
……やべぇ、確実にロックオンされちまった。どうにかこうにか、ごまかしてこの場をしのげれれば……
「正直に答えな、何があった?」
「……」
「いや違うな……何をされた?」
そういって、犯人を見る目をしてくるハイエルフのBBA
これ、確信をもってることが確定的にあきらかじゃなかろうか?
……そもそも、あの残念美人の事を言うのはあんまりよろしくないんと思うんだよな、ああいう存在は気分次第でトンデモな事やりかねないからなぁ
「あんたから、たまに神聖な何かを感じる時があったんだが、あんた自身じゃなかった。なら、他からって話だろう?」
「……」
「長生きしてるとね、そういうのに気づきやすくなるもんなのさ」
「……あぁ、まぁ」
……ここまでくると、推察どころじゃない、確信をもってるというか、答え合わせをしに来てると思った方がいいか
そんなことをこちらが勝手に思案しながら、口を紡いで黙っていたら
「言わない?いや、言いたくない?違うな……言えない、か?」
「……!」
その言葉をまってましたばかりに、首を縦に振っておくことにした。
もう、どうにでもなーれーという心境でだ。
「はぁ……ま、だいたい分かったさ。これ以上は何も聞くまい」
「……そうしてくれると、助かる」
……たぶん違うと思うけどな?
とりあえず、意味深な雰囲気で答えておく。
これで、勝手に解釈してくれれば万々歳である。
「ま、こっちも大昔にそういう存在を知ったからね……ああいう存在を知ったときは、下手に長生きはするもんじゃないさと思ったもんさ……」
「……ふーん」
「こっちがいろいろと四苦八苦しながら手を尽くしてるってのに、理不尽に解決しやがるからな……」
「……あー、まぁ、そうだよな」
ああいう存在は、ほんと理不尽というかこちらの考え方というか思考というか、そういうのが、どっかしらズレてるのは致し方ないかなと。
「接触したのか、接触してきたのかはわからんが、まぁ、流行り病が完治するなら、それに越したことないさ」
「……たしかに」
基本的に、彼女は医者や薬師としての矜持を持っている。
それで治療が出来ないという点に、悔しさというのを感じているのだろう。
そこから、そういう病がなくなるのならと、本気で思っているのは分かっているので、何も言葉をはっせずに、ただただ酒を口にする。
そうして、何も言葉を発する事ができずに静かな部屋に、さらにしんみりとした空気が流れ……
「でだ、チビたれ。ちょっと巡回に付き合え」
「……はぁ?いきなり、なんでだよ?!」
一気に瓦解する。
「うるせぇ!そんな便利な理不尽つかわない手はないだろうが!!どうせ何かしらの加護か何かなんだろ?切れるまで付き合えや!!!」
「……めんどくせぇって思っただろ!ぜったいめんどくせぇって!!」
「当たり前だろうが!便利なモノが目の前で酒飲んでるんだぞ!」
「……モノ扱いしてんじゃねぇ!!このクソBBA!!!」
「おお?言ったな!よぉし、チビたれが!ココに居続けれ無い様に無い事・無い事を周囲にふきこんできてやる!」
「……ちょまてや!無い事でっちあげんじゃねぇよ!!」
「なら、付き合えっていうんだよ!たった数十年ぐらいだ!!」
「……でた!エルフ様お得意の時間感覚おかしい理論!というかその感覚直せよ!」
二人の泥酔者による口論は、例のブツを献上する事まで収まる事なく続いた。
……ま、あの残念美人には、あとで話を通しておくかと、記憶の片隅に入れておくか
手元に置いておいても、宝の持ち腐れになってるかもしれんし、必要なところに収まったということにしておこう。
……というか、これでよかったのだろうか、悪かったのだろうか、、、
* * *
なお、気になってしまったので手土産をもって残念美人に聞きに行ったら、特に問題は無かったというか、あの病気……というか、呪詛病のみの有効だったそうで。
(呪いだったというのは、確認しに行った時に初めて知った)
というか、今度はワシ専用とかにしたとかで、新たに一つ強制的に渡された。
"無病息災加護の羽"という代物を
残念美人曰く「お菓子を作ってくれるから大事にしないと!」という理由で。
……いやな? そういうとこやぞ、と思うわけで。
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