第18話:熱い一夜を過ごします
「ところでさ、ケン」
「どうした、ミキ」
しばし時間を忘れて裸のまま抱き合っていた俺たちだったが、ミキの方から沈黙を破った。
「……私って、そんなに魅力ないかな? 一応、年頃の女の子なんだけど? 胸はちょっとちっちゃいけど……それなりに覚悟は出来てるんだけど?」
言わんとしていることはわかる。若い男女が裸で抱き合うということは、当然その後にするはずの行為があるだろう。
「それなんだけどな、チートの代償でそういう欲望がオフにされたみたいなんだ。……本来だったら絶対押し倒してると思う」
抱きしめていた手をほどいて離れると、ミキはちらちらと俺の下半身を見た。
「あー、確かに……平常モード、ってやつ?」
「まあ、残念ながらそういうわけだな」
「はぁ~……」
気が抜けたのか、ミキはソファに座り込んだ。だらしなく両脚を広げて大事な部分が見えているが、気にもしていない。
「てっきり、パーティの子たちとハーレムを形成してるかと思ったのに!」
「確かに、みんな美人だからな」
「裸も見たんでしょ?」
「そりゃ、まあ、成り行きというか……」
すっかりお見通しのようだ。俺は苦し紛れに話を変えることにする。
「なあミキ、せっかくだから久しぶりに一緒に風呂に入らないか?」
「お風呂ぉ?」
「ああ、今なら平常心で、子供の頃みたいに洗いっことかできるだろうし」
「うーん。まあ、せっかくのスイートルームだしねぇ。お湯も張ってあるし」
口調とは裏腹に、ノリノリで風呂場に向かう。やはりこの世界では入浴できるだけでも貴重な体験なのだろう。
「俺のちんちん、洗ってもいいからな」
「誰が洗うか!」
「昔はあんなに興味津々だったのに」
「それは、何も知らない子供だったから! もう、蹴っ飛ばしてやる!」
「悪かった、やめてくれ」
こうして、俺たちは風呂場で昔話に花を咲かせた。たくさん笑って、たくさん泣いた。
*
「ねえ、ケン」
「なに?」
「無事に元の世界に戻ったら、結婚しよ?」
ベッドの上。俺は腕の中から、まさかのプロポーズを受けた。
「どうした、死亡フラグみたいなこと言い出しちゃって」
「茶化さないで! 本気なんだから」
そこまで言うと恥ずかしそうに腕の中に顔をうずめたが、すぐに調子を取り戻した。
「だって、未遂とはいえ初めてを捧げたようなもんだし。今さら他の人のところにお嫁になんて行けないもん」
「気持ちはわかるけど、ちょっと気が早くないか? まず大学とかどうするんだ」
「もちろん進学はする。その先の話。……私のこと、嫌い?」
「嫌いなわけないだろ、大好きだ……ずっと前から」
元の世界では絶対に言えなかった一言だ。こちらの世界では、文字通りに身も心も裸になったからこそ素直に出てくる本音かも知れない。
「私ね、今でこそ勇者だなんて言われるけど、こっちの世界に来たときは何度も死にかけて。そのたびにあんたのことを思い出して頑張ったんだよ?」
俺の頬を愛おしそうに撫でながら言った。正直、俺のほうはミキのことを忘れかけていたのが申し訳ない。
「絶対、帰ろうね!」
「ああ!」
決意を新たに、俺たちは眠りにつくのであった。
**
「鑑定士のイリスさん、騎士のアリシアさん、格闘家のリンさんね」
「はい、よろしくお願いします」
「ミキ殿、私も力を貸そう」
「ケンにこんな知り合いがいたなんてね。私も力になるわ」
スイートルームでの朝食は部屋まで届けられるのだが、1階の食堂で仲間たちと同席して食べることを選んだ。その間に、お互いの自己紹介を済ませる。
「改めまして、ボクはフィーナといいます。魔法戦士、だとミキ様は呼ぶのですが……」
戦士と言っても武器は杖で、装備も軽装だ。魔法戦士と言っても、魔法使い寄りなのだろう。
「昨日お見せしたように、魔力を杖に宿らせた上での白兵戦が得意です。もちろん魔法そのものを飛ばすこともできます。火炎・雷電・雪氷を始めとする一通りの術は修めているつもりです」
「頼りになりそうですね。私も魔法は使えますが、専門はあくまでも鑑定なので」
本格的な魔法使いが仲間に加わったことになる。これは頼もしい。
「私はミキ。不本意ながらも勇者と呼ばれているからには、それに恥じない力を身に着けているつもりよ」
今のミキはフル装備だ。例の青黒い金属の鎧に、白銀に輝く盾。そして背中には長剣を背負っている。
「剣術が得意だけど、少なくともフィーナが使うのと同じ種類の魔法は使えるわ」
俺の仲間たちがざわめく。さすがコピー能力者は伊達ではない。剣についてはもともと剣道を習っていたので、それをこの世界で発展させたのだろう。
「他にも誰かさんの脱衣能力とか、色々覚えた能力はあるけれど、実戦でどの程度使えるかはまだ未知数ね。魔法が使えると言ってもフィーナほどの弾数は無いし」
ミキは万能かも知れないが、決して最強ではない。それぞれの力を合わせることで、不可能も可能になるかも知れない。
「ケン、魔王がどこにいるのかは知ってる?」
「ああ、旧大陸の……」
地図を指す二人の指先が重なる。ミキ達もまた、答えにたどり着いていたようだ。
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