第8話:勇者の旅立ち、なぜかメイドさんを全員脱がします
「それにしても、ケン殿はいかにしてこの力を?」
昼食の席で、アリシアに質問された。まあ当然だろう。
「そういえば、私もまだ聞いていませんでしたね」
イリスが言う。確かに説明していなかった。信じてもらえないと思ったから。
「信じられないかも知れないけど、俺は別の世界の人間なんだ」
俺は話した。元の世界でおそらく死んでしまったこと。女神様に力を与えられ、この世界に転移あるいは転生したこと。
「ちょうど、このあたりかな。目が覚めたら森のそばにいたんだ」
壁にかかっていた地図を指さしながら説明をした。
「だから、この世界には俺の帰る家もなければ親もいない。冒険を続けるしかないんだ」
冒険の果てには何が待ち受けているのだろうか。女神様はまた会いましょうと言っていたのだが。
「異世界からの客人……まさか、伝説の勇者?!」
「おお、勇者か!」
「伝説は続いていた!」
その場にいたアイヒェブルク家の人々が口々に叫ぶ。
「我が祖先もはるか昔、異世界より現れた勇者とともに旅に出たと伝えられている。……アリシア、次はお前の役目だ」
「はい、父上」
なぜ兄ではなくアリシアなのだろうか。勇者とともに旅に出た祖先が女性だったのか、あるいは長男は家を継ぐからだろうか。まあ人の家庭の事情なので、深入りするのはやめておこう。
「勇者ケン殿、私はあなたの盾として同行つかまつる!」
「あ、ああ。よろしくな」
「よろしくお願いします、アリシア様」
唐突な展開ではあるが、仲間が増えるのは嬉しい。それに、まともな前衛がいないのは不安でもあった。ともかく、俺は勇者として本格的に「魔王」とやらを倒すための旅に出なければならなくなった。
**
「ところで、メイドさんがたくさん集まっているのはどういうわけだ?」
見送りにしてはやや大げさな気もする。それに、メイドさんたちは小声で話し合ったり、照れ笑いを浮かべたりしている。
「ああ、ケン殿の術の話をしたら、どうも興味津々らしくてな」
少し呆れた声でアリシアが言った。
「術って、脱衣のことか?」
「ああ。今まで味わったことのない不思議な感覚だという話をしたら、自分たちも受けてみたいと言い出して……」
つまり、この子たちは自ら脱がされたがっているということか?
「やりましょうよ、必要な実験でもありますよ?」
イリスがそう言った。なるほど、確かに広範囲や複数の標的に対しても脱衣可能であるかどうか、ちゃんと把握しておく必要があるのは確かだ。
「本当に素っ裸になるけどいいんだな? 巻き込まれたくなければ今のうちだぞ」
一応確認してみたが、十数人いたメイドさんは誰一人として退出しなかった。ちなみに男性は俺しかいない。
「そうだな。試したいことがあるから、イリスとアリシアもメイドさん達の中に混ざってくれるか?」
「なるほど、メイドさんたちだけを脱がすんですね」
「ああ、失敗したらお前たちも裸になっちまうけどな」
乱戦時では、選択的に敵だけを脱がせる必要があるだろう。すでに裸を見られているということもあってか、すんなりと指示に従ってくれた。
「それじゃ、いくぞ……
イメージとしては「メイドさん達」ではなく「イリスとアリシア以外」を指定し、俺は力を放った。実戦においては複数種類のモンスターとの交戦を想定しているので、除外指定が可能であるかどうかを確かめたかったのだ。
「やんっ……♥」
「あっ……♥」
そして俺の狙い通り、効果はメイドさん達だけに現れたようだ。白いエプロンと、シンプルな黒のワンピースが脱げて、床に落ちていく。
「きゃんっ……♥」
「ほんとに下着まで……♥」
「見られちゃう♥」
メイド服の中の下着は様々だった。シュミーズだけの子もいれば、コルセットやビスチェで形を整えている子もいる。まあ俺の能力にかかれば全員脱がされるわけだが。
「見られちゃった♥」
「男の人の前で裸になるの初めてなのに♥」
「クセになっちゃいそう♥」
そして、靴と靴下、ヘッドドレス以外の全てを脱いだメイドさん達が並んだ。壮観である。この国では、メイドというのは嫁入り前の娘が花嫁修業を兼ねて行うことが多いようだが、そんな子たちを一斉に素っ裸にしてしまった。肌の色は様々で、俺より年下に見える子も少なくない。
彼女たちはしばらく裸で呆然としていたが、やがて我に返ったのか脱げ落ちた服を拾って持ち上げ、ちょうど下半身を隠す格好となった。しかし上半身……つまりおっぱいは丸見えである。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様、勇者様!」
おっぱい丸出しのメイドさん達に見送られて、俺たちは旅に出た。こんな勇者の旅立ち、今までにあっただろうか。
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