夏祭りの跡

片瀬智子

プロローグ


 大分県大分市鶴崎地区──七月二三日は悠久ゆうきゅうの昔から『清正公きよまさこう二十三夜祭にじゅうさんやさい』が行われている。


 二十三夜祭とは肥後(熊本県)の領主・加藤清正公が建立した法心寺ほうしんじで、命日の法要にともない開催されるお祭り。

 清正公が建立したのは、九州にある妙・法・蓮・華・経の五文字がついた五ヶ寺だ。


 その日、鶴崎商店街は歩行者天国となり、提灯が飾られ、露店が商店街の軒先をいろどっていく。

 わたがし、かき氷、りんご飴……。子ども時代の夏は、誰の胸にも永遠の思い出。


 鶴崎は昔から夜市よいちや、八月には『鶴崎踊つるさきおどり』もあり夏の始めより唄のが町を奏でていた。

 四百年以上の歴史ある踊りが、豪華絢爛な衣装をまとった踊り子たちでしっとりと魅了していく。先人も見た夢のようで、いつまでも忘れられなかった。


 ここは華やかな伝統の中、前世を生きた人々と今を生きる人たちを結ぶ土地なのだ。

 そんな鶴崎で生まれ育ったふたりの、はかない夏の物語。




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