第19話~Wedding~

ドアが開くと暗転した店内が見える

七海が私の腕に腕を回して寄り添うように店内に一歩踏み込む

「パパパパーン」と結婚行進曲が店内に流れスポットライトが私達にあたる

そのままスポットライトに追われながら一直線に店の一番奥の壁までゆっくり歩いて進む


壁の手前には聖書を持った牧師のコスプレ・・・じゃなくて本物の牧師さんが聖壇を前に待っている

お客さんもクリスマスでコスプレしてる人が居るとか思ってたみたいだけど常連の牧師さんがコスプレでなく本物の衣装で来店して待機してくれたんだよね

この場所は丁度10番テーブルの真横

10番テーブルに皆んなに集まってもらった理由は特等席で見て欲しかったからなんだ


聖壇の前に到着するとスポットライトからダウンライトに切り替わり聖壇を中心に七海と私に牧師が照らされる

御客様とキャストにスタッフも全員起立すると讃美歌が流れ出す


讃美歌が終わると牧師が聖書の朗読を始める


互いに愛し合いなさい

私が貴方がたを愛したように貴方方が互いに愛し合うこと

これが私の掟である

友のために命を捨てることこれ以上の愛を人は持ちえない

私の命じることを行うなら貴方方はわたしの友である

もう私はあなた方を僕とは呼ばない

僕は主人が何をしているか知らないからである

私は貴方方を友と呼ぶ

私は父から聞いたことは全て貴方方に知らせたからである

貴方方が互いに愛し合うことこれを私は貴方方に命じる


聖書朗読が終わり誓いの言葉にすすむ


新郎彩美 あなたはここにいる七海を

病める時も 健やかなる時も

富める時も 貧しき時も

妻として愛し 敬い 慈しみ その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?

”はい 誓います”


新婦七海 あなたはここにいる彩美を

病める時も 健やかなる時も

富める時も 貧しき時も

夫として愛し 敬い 慈しみ その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?

「はい 誓います」


リングガールは営業中の店内で無理なので美香が務めてくれた

美香がリングピローに二人のマリッジリングを乗せてやって来た

七海と私が向かい合う

リングピローから七海の指輪を取り七海が差し出した左手を私が左手で支え薬指に指輪を通す

今度はリングピローから私の指輪を取り私が差し出した左手を七海が左手で支え薬指に指輪を通す


「では誓いのキスを」

私が七海をハグして引き寄せキスをし数秒で離れ牧師の方向を向く

「今ここに神の名の下で夫婦となったことを宣言する」


一枚の紙を牧師が聖壇に置く

予めセットされていたペンで署名してペンを七海に渡す

七海も署名をすると徳さんがやってきて承認者欄に署名をして結婚証明書が完成する


「二人ともおめでとう」

徳さんから祝辞を頂いた


その瞬間に店内は拍手で溢れ「おめでとー!」と掛け声が飛び交う

私達が深々とお辞儀をすると店内の照明が全灯になる


一度頭を上げ再度深々とお辞儀をしてから頭を上げると七海の少し高揚して赤く染まった顔を見ると軽く頷く

”皆さま今日は本当にありがとうございます!絶対に七海を幸せにします!”

再度拍手で溢れる店内

拍手が収まると七海が

「皆さま今日は本当にありがとうございます!人妻となりましたがお店では今までと変わりませんので彩美と私を今後ともよろしくお願いいたします」

再度拍手で溢れる店内

拍手が収まってくると店内が営業中の明るさになる

今度はマキの声が響く

「ケータリングが入りますのでささやかですがお食事もお楽しみ頂ければ本日は閉店までドリンク以外は全て無料になりますのでお楽しみください」


入口のドアが開き台車に乗ったケータリング料理が運び込まれて導線の邪魔にならない壁際に配置されていく

店内に色々な料理の匂いが舞う


七海と一緒に各テーブルを回り御参加頂いた謝辞を伝えて行く

色々な嬉しいお声がけを頂きなかには御祝儀袋を渡してくれるお客様もいたりドリンクを頂いたりして全てのテーブルを回り終え10番テーブルに向かう


キャストはテーブルの御客様にケータリング料理を取に行ったりと賑やかな状態だね


10番テーブルに着くと中央の二席を空けて待たれていた

「緊張で疲れただろ座って座って」

徳さんに促されて椅子に座るキャスト椅子でなくゲスト椅子なので少し不思議な気分だね


向かいでは美香を徳さんと信さんでサンドイッチしてるし

”あっ健坊さん!”

「すまないお店が片付くのがギリギリで式の直前に到着だったよ」

いつもと違う店廻しでキャストが足りてないのに気が付いてタカちゃんが10番テーブルの他キャストと一緒にドリンクを作ったりしてくれる

目が合うとウインクで任せて!だけど・・・ちとゴツイなあ


信さんが黒服を呼ぶと何か伝えてる

「信さんからオールキャストにヴーヴ・クリコ入りました」

なんだぁそのコール


”信さん?”

「祝い日だ幸せは皆で共有しなくてはね」

”ありがとう”

「信さんありがとうございます」

まったく粋な男だよ

後半の営業は指名もなく指名と関係ないテーブルに着く時間も多いのでドリンクも含めキャストのバックがイベント日なのにいつもより少なくなりそうなのを見越して全てのキャストに1本ずつヴーヴを入れる事でバックの確保をさりげなくするとか

ヴーヴを超えるバックを一日で貰う事は生誕祭とかでないと滅多にないしね


てかぁこんな本数のヴーヴを在庫してる訳ないので七海と相談済だなこの作戦は・・・で七海を思わず見ると

「エヘ」

って舌を少し出す・・・ううう・・・可愛い過ぎるよー!


キャストにヴーヴが届く毎に「ありがとうございます信さん」とキャストが信さんにコールする

届いたヴーヴは常連とか指名客とか関係なく着いてるテーブルの御客様に振る舞われていく


10番テーブルもヴーヴが届きテーブルの皆んなにグラスが行きわたるのを待って

「「かんぱい」」

「「おめでとうママ 彩美ちゃん」」

「ありがとうございます」

”ありがとうございます”

「ねーさんも彩美ちゃんも本当にウエディングドレスが似合ってるよ」

七海はいいけど私は似合ってるで喜んでいいのか!?


今日はいつもと逆で10番テーブルに収まらなかった七海と私の馴染み客がテーブルに入れ替わりで来る

男性とか女性とかNHとか女装とか本当に客層が深いよなぁなんて感じながらお祝いの言葉が嬉しいね

”あっ!ねーさんと白ちゃん”

茜と白もやって来てくれた

「ごめんごめん臨時お願いしてたスタッフが遅刻しちゃって」

「私もオーナーが臨時で入る予定が女装協会の打ち合わせが長引いて交代が遅くなちゃって」

”いいのいいの来てくれただけでうれいよ”

二人で声を揃えて

「「ご結婚おめでとうございます」」

「ありがとう」

”本当にありがとう”


なんか厨房から黒服二人でデカいものが運ばれてホールの中央にいつの間にか置かれてるテーブルへ置いて行く

よく見ると八十センチ正方形で高さ十五センチくらいのケーキだ

派手なデコレーションはなく表面は生クリームで覆われて上面に生クリーム絞って少し飾りつけがされている感じ

マキがアナウンスをする

「さあ夫婦の初共同作業をしてもらいましょう!」

こんなのシナリオになかったぞサプライズですか!?


七海と二人でケーキの前に行くとリボンで飾り付けられた大き目のナイフを渡される

「さあ新郎新婦お願いします」

ノリノリのマキだよ

二人でナイフに両手を添えてケーキに差し込む

「無事に記念すべき初共同作業がみごとに完了です」

黒服がナイフを受け取り下がる

自然と皆なさんに一礼をする七海と私

店内が拍手に再び包まれる


私達がケーキから離れると黒服がケーキを切り分け始めキャストが受け取りに来て自分のテーブルに持って行く

10番テーブルにもケーキが届き私達の前にも一口サイズのケーキが届く

あっ中はショートケーキになってたんだなんて見てると七海がフォクに刺して「あーん」をしてくる

ちょっと恥ずかしいけどパク・・・美味しい

周りの視線は次を期待している

私がケーキをフォークに刺し七海の前にパクッて食べてる顔が最高

なんか分からないけど拍手で喝采される


その後も多くの御客様が祝いに来てくれた

本当に忘れられない一日だよ


そろそろ閉店時間かなと思っていたらホールの中央付近のテーブルと椅子がどかされ広い空間が出来る

「新郎新婦はホール中央へ」

またもノリノリのマキだよ


中央に行くとブーケを手渡される私達

「さあ彩美ちゃんみたいに最高の彼氏が欲しい皆様はホール中央へ」

純女もNHも女装も問わず十数人が集まる

タカちゃんに茜と白もいるよ

「さあブーケトスです新郎新婦ブーケのトスをお願いします」

なんか新郎のブーケトス?って思いながらも七海と同時に天井にあたらない程度でトスをする


なんか争奪戦が目の前で繰り広げられています

皆んな手を上に伸ばして我先にとキャッチしようとして

「とったー!」

「やったー!」

ブーケ争奪戦の勝者はタカちゃんと純女の志穂だった

タカちゃんはブーケ―持ってゴリラみたいなポーズで「よっしゃー私にも運が向いて来た!」とか

志穂は新宿の性風俗店で働いてるんだけど「いつかは七海みたいに一国一城の主になる」って頑張ってる

七海の活躍を見て勉強のために通っている間に七海の大ファンになり週に1~2回は来てくれてるみたい


いつもは暗転だけど今日は席を立ってる方も多いので安全の為に少し照明が暗くなる程度でクラッシックが流れ出す

黒服が伝票を持って走り回るのはいつもの光景


七海と私は出口でお見送りの準備

横のテーブルには紙袋が大量に準備されている

中身はルミネイーストにある有名な店のバーターサンド

ご家庭ある方もいるので持って帰るのに言い訳しやすいものを七海と相談して決めたんだ


「今日はありがとうございました」

”ありがとうございました”

紙袋を手渡して退店する御客様を次々お見送りする


最後に10番テーブルの皆んなが最後にやってくる

皆んなにお土産を手渡すと健坊が

「じゃあ特別貸し切り営業でまってるね」

と皆んなで気分上々へ移動を開始する

”片付け終わったら行くね”

「まってるよー」


オーゲスアウトでドアを閉めると七海が

「皆んな今日はありがとう!」

と全員に声をかける

「「おめでとうございます」」

と全員で一斉にとか・・・うれしいな


七海と私は武井にドレスを脱がしてもらい出勤時の普段着に戻る

ホールに戻ると手早いなあ片付け終わってテーブルの配置も普段に戻ってる

マキがバックの封筒を順に渡してる

封筒を受け取るとバックルームからバッグを持って来て

「おつかれさまですママと彩美ちゃん本当におめでとう」

お祝いの言葉をかけてくれて退店していく

紗季は封筒を受け取るといつもと違う感触に驚き封筒を抱きしめてる

私の顔を見て何か呟く唇を読むとか出来ないけど何となくわかる「ありがとう彩美ちゃん」って


バックルームから武井がドレスとかを纏めて出てくる

「すばらしいイベントにご協力出来て本当にうれしいです」

「ありがとう」

”ありがとうございまいた”

武井が荷物を持ち店を出る


さて店に残ったのは七海とマキに私だけ

「じゃあ皆んなに合流しようか!」

七海の掛け声で移動を開始するよ


まあ気分上々は店から徒歩一分

閉店って看板出てるのに通りに面した窓から見える店内はどう見ても営業中でえ

自動ドアを開けて店に入る


「七海さん!彩美ちゃん!マキさん!らっしゃい!」

健坊が焼場で大量の焼鳥を焼いてる

三席ある店センターのテーブル席で焼き場が見える向きで私達の席が準備されてた

美香に案内され席に着くと篠ちゃんが

「本当におめでとう!レモンサワー酸っぱ濃いめだよ」

と七海と私の前にジョッキを置く


「よしゃ乾杯じゃ!」

徳さんの一声が店内響くから

「汝らぁその命のある限り心を尽くすことを誓えるか!」

やば徳さん完全ヨッパだぁでもね

「「誓います!」」

当たり前でしょでぇ

「「乾杯!」」

みんなグラスやジョッキを一気で凄い状態

健坊と篠さんはドリンク作りで右往左往

でも焼台のタイミングもありバタバタの健坊


あっ美香と目線が会う

”レーバー食べた?”

「うん!マジで驚いたよ私モツ系駄目って思ってたのに革命!じゃあぁ!カンパーイ!」

多分このジョッキはレモンサワー酸っぱ濃いめだよを一気してるし

・・・コイツ・・・逸材過ぎないか・・・美香ぁああああ

私も合わせてジョッキの残りを飲み干す

すかさずタカちゃんがお替りを持って来てくれる

ここでもスタッフをフォローしてるタカちゃん本当にすごいよね


「はい!」

と健坊が焼鳥の盛り合わせをテーブルに届けてくれた

「焼きおにぎりも今作ってるからね」

気分上々の名物レバーやハツモトもあってテンション上がるよ

焼きおにぎりも〆に人気のメニューで七海も私も大好きだよ

昼から一口のケーキしか食べてなかったので七海も私もパクパクモード全開

おいしい!


お腹も落ち着き興奮も少し落ち着いてきたので店内を改めて見渡す

美香・徳さん・信さん・マキ・タカちゃん・健坊・白・篠・・・他にも多くの常連さんが居る

本当に皆んなありがとう

真夏の絶望の時には思いもしなかった幸せな時・・・人生何が起きるか本当にわからないね


そして左横には七海・・・

視線に気が付いた七海がテーブルの下で手を握って私にもたれかかって来る

我慢出来ずに少し左を向き顔をみてしまう

メイクとヘアセットはウエディングドレスのままなのでいつもと少し違うのもなんか新鮮で・・・やばい別の興奮してきてしまう

察した七海が少しエロチックな表情を作る

こらぁ~!

ジョッキを一気して気分を鎮める

機械仕掛け・・・確かに出会った頃より七海の感情表現が豊かになってる気がする・・・理由は分からなくても・・・感情を無くした七海の感情を・・・取り戻す・・・その手伝いが出来たなら・・・


「おいしいぃ~」

美香の声で現実に戻り見ると

・・・・・日本酒飲んでるよ・・・もう驚かないけど

信さんがすごい大きいボトルを抱えてやってきた

「御二人さん改めておめでとう!珍しい日本酒が手に入ったのでお土産だ」

ジョッキが手渡され一升瓶・・・より大きい見た事無い形状は四合瓶だけどサイズは数倍の瓶から日本酒が注がれる

ジョッキに日本酒とか完全にぶっ飛んでますが気にならない最近です


この香り・・・記憶にあるけど・・・もっと澄んだ感じ

口に含むと

”獺祭!でも二割三分より味が濃いのに透明感が”

「流石ママの酒教育はすごいな」

”酒に真っ向勝負の七海様ですから”

七海も一口飲むと

「”その先”だぁ信さんすごい!」

信さんがボトルを見せてくれる

ー獺祭 磨 その先へー

”ボトルのサイズ感がバグってる気が”

「普通の一升瓶より少し多めに入ってるマグナムボトルだからな」

ワインとかシャンパンでマグナムボトルは聞くけど日本酒では珍しいね


美香がジョッキを持って来て信さんに渡しボトルを受け取り注ぐ

から自分の飲み干したジョッキにも注ぐ

「はい信さん」

「では二人の新たな門出を祝って乾杯!」

味わって飲まないともったいないと思ったけど喉越しが気持ち良くジョッキ半分くらい飲んでしまったよ

”本当に美味しい”

四人のジョッキはどれも半分くらい一瞬で減ってる

「うにゃぁ美味しい彩美が一緒だからさらに美味しい」

完全に惚気モードになってるよ七海

「本当にママよかったな」

「彩美と出あえて人に戻れたニャ」

「彩美・・・今後も頼んだぞ」

”うん!任せて”

信さんはボトルを持ち他の方の・・・普通の日本酒用タンブラーに注ぎ周りに行ったよ


「やっほー」

”やっほー白ちゃん”

「本当におめでとうだよ」

「ありがとにゃあ」

珍しく本当に酔ってるな七海

まあ一世一代の舞台で緊張も凄かっただろうしお祝いで頂いたドリンクも半端なかったもんね

「白さん七海さんてこんなキャラだったんですか?」

まったく酔った様子を感じさせない美香が凄すぎる

「こんな姿を見る様になったのは彩美ちゃんと来るようになってからだね前はクール感が凄かったよ」

「こりゃばらすなあ恥ずかしい」


それからしばらく笑いの堪えない宴会は続いたよ

時間も四時近くになりそろそろかなのタイミングで二次会参加メンバーからってプレゼントを頂く

開けてみると二人のウエディングドレス姿が印刷されたオリジナルラベルのワインだった

写真は告知ポスター用に撮影した時の一枚だね

「中身は飲んでからのお楽しみ」

・・・絶対に恐ろしいワインの予感はするけど抜栓まで楽しみだね


店を出ると信さんの高級車が待っていた

「俺は徳さんともう一件飲みに行くんで乗って行ってくれ」

「信さんありがとうにゃ」

”ありがとうございます”

美香と三人で車に乗る


数分でマンション前に到着する

”ありがとうございました”

運転手さんにお礼を伝え車を降りる

あっやば

慌てて七海の肩を支える

「ありがとう」

少し顔が酔いでなく赤らむ七海

肩を支えたままエレベータに乗り部屋へ

七海をソファーに座らすと水を持って行く

ゴクン

「ごめんね飲み過ぎちゃった」

寄り添いながら見上げる顔が可愛い

「可愛いから許す」


七海の私と逆横に座った美香の様子が変だぞ

「気が抜けたら酔いが一気にぃ~」

”大丈夫!?”

「ちょっと地球の自転が早くなってる気がするけど気持ち悪いとかはないからだいじょ~ぶだぁよぉ」

イベントとか二次会を盛り立てるのに美香も頑張ってくれたんだね

”ありがとう美香”

「二人が幸せでわたしぃもぉ幸せだよぉ」

もたれ掛かる七海を美香に任せてソファーを立つ

美香に・・・水・・・ジャック・・・どっちだぁ

「ジャックおねがぁい」

呂律は少し危ないけどまだまだ大丈夫そうなのでジャックを入れたグラスを二つ持ってソファーの前に

一つを美香に手渡し小さい声で

”かんぱい”

と一口飲むとサイドテーブルにグラスを置いて風呂と寝る準備だね


風呂自動のボタンを押すとウオークインに行き三人分のタンクトップと短パンなどの着替えを用意して洗面室に準備する

ソファーに戻ると美香の横に座って再びジャックを飲む

「彩美ちぁゃん酔ってぇない~の?」

”限界の半分くらいかな”

「すごすぎるよぉ~」

”まあ慣れだよ飲む量もあるけど飲み方っていうか”

ーお風呂がわきましたー

”あっお風呂湧いたね行っておいで下着以外は洗面室に準備したあるから”

「ではお先にいただぁきぃまぁす」

少し千鳥足ってるけど問題ない範囲とか先が恐ろしい子だなぁ


七海の横に移動して

”七海”

「うにゃ」

抱き着いて来て私の唇に唇を重ねてくる


少し酔いが冷めたのか座り直して左手薬指の指輪を見つめてる

「機械仕掛け・・・オートマタ・・・感情を押し殺さないと・・・平常を保つことが無理だった日々」

・・・・・

「全てを終えた時に残った虚しさ・・・虚しさに耐えるには・・・感情は不要だった・・・日々」

・・・・・

「彩美に出会えて・・・感情を思い出し始めて少しずつ感情を閉じ込めていた氷が解け始めたんだよ」

思わず七海の頭を胸に押し付けて抱きしめる

「温かくて心臓の音が気持ちよいよ」

”ずーっと一緒だよ”

「うん」


ガチャ

「お先にいただきましたあああああ・・・私間が悪い!?」

「気にしないで逆に恥ずかしくなるじゃない」

顔が真っ赤になる七海でした


七海と風呂を済ましてリビングに戻るとソファーで美香が寝落ちしていたよ

”おーい美香”

完全に爆睡だね

”よっこらしょ”

御姫様抱っこで持ち上げると思っていたより軽くて驚きだよ

七海が先回りして寝室までのドアを開けてくれる

ベッドに優しく寝かせて

「さあ私達も寝ようか」

七海を真ん中にしてベッドに入る

横寝になり七海に抱き着く

七海も横寝になって抱き着いてきた

「おやすみ」

”おやすみ”

目を閉じると流石に酔いが気持ち良く回って来た・・・意識が闇に落ちて行く

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