第50話

「変なエルフ? まあ知り合いがいるならその人を通じて宝玉をもらう相談もできそうね」


「まあ俺を覚えるかは微妙なところだな。俺にとっては数ヶ月前の事でも、なんせ100年前だからな……ソーサーの事とかなら忘れねぇだろうけど……」

 はたしてエルフは自分のことを覚えていてくれているだろうか? アルカンタラは渋い顔をする。


「そ、そうね……とにかく行ってみましょう! 明日には『エルフの森』に向けて出発よ」


「明日ですか!? うぅ……ワタクシ寂しいです。もっとアルカンタラ様に昔のお話をお聞きしたかったですぅ」ポピーは泣きながら言う。


「寂しいですが仕方ないですね……ボアモルチのSランク冒険者のお二人には、世界を救っていただかなくてはなりません! お気をつけて行ってください」


「本当にお世話になりました……あっ、お世話ついでにお願いが……」

 ミルリーフは少し気まずそうに言う。


「ほう、何でしょうか? 私にできる事でしたら何でもおっしゃってください!」

 父親は任せろというように自分の胸をドンっと叩く。


「あの……実は私……剣が欲しくて、使ってない剣とかあったら譲っていただけないかなぁと……」


「ほう、なるほど! ミルリーフ様はソーサー様の血を引いてらっしゃるんですもんね。確かに剣の1本でも持っていった方がサマになりますな。

 我が家の倉庫に使っていないコレクションの剣があります。その中からでよかったら差し上げますよ」


「ありがとうございます! すいません、ずうずうしいお願いをして」


「いえいえ、ミルリーフ様に剣を贈れるなんて、光栄なことです」

 ポピーの父親はニッコリと笑う。


 その時、アルカンタラが衝撃の一言を言い放つ。


「なあ、倉庫の剣じゃなくて、あの剣でいいんじゃねぇか?」

 アルカンタラはリビングに飾られた、家宝である勇者の剣を指差す。


「……へ?」

 さすがに凍りつくポピーの父親。


「ア、アルカンタラ! 何言ってるの、あんな大事そうにしている剣を頂けるわけないでしょ!

 私は剣を使うのは久しぶりなんだから、使ってない剣くらいでちょうどいいのよ」

 ミルリーフも気まずそうにアルカンタラを叱り付ける。


「は、ははは……アルカンタラ様はジョークまでお上手とは……ははは……」

 額にびっしりと冷や汗をかくポピーの父親だった。


「ジョークじゃねぇんだけどな……いい剣ならあんなところに飾っておくより、実戦で使ったほうがいいんじゃねぇか?」


 こうして、ポピーの家の家宝はなんとか守られ、ミルリーフたちは倉庫に剣を見にいくことになった。



◇◇◇作者あとがき◇◇◇


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