第8話:君ってやっぱり魔女なんだ。

せっかく、アリスが僕の彼女になってくれたって言うのに父が僕たちの

恋愛を身分が違うからと反対した。


母にそれとなく確かめると、父は将来僕を後継者として会社も継がしたいと

思ってるらしい。

で、そのためにどこかの金持ちの令嬢と戦略結婚させる気でいると・・・。


そんな勝手なこと、子供の意思を無視したようなこと今時許されないだろう。

絶対反対。


でも、そんな父の思惑は、母によって脆くも崩れ去った。

母は父と結婚して、これまで父親がやってきた愚行を見てきている。

しかも父の出世の陰には母の魔法が活かされてる。

父はいろいろ汚いこともしてきてるし、浮気だって・・・。

だから父親は母親に頭が上がらないんだ。


母親のツルの一声で僕とアリスは付き合ってもいいってことになった。

母親はいつだって僕とアリスの味方だ。

とくにアリスには目をかけている。


これで誰に邪魔されることなくアリスとの愛を育んでいける。

アリスへの愛の告白と父な反対があってから、平和な日々が続いていた。

アリスも以前よりよく笑うようになった。


それから僕たちは普通の恋人がするように映画館や水族館、アリスが止めた

絶叫マシンがあるアミューズメントパークのもう一度行った。

あとはグルメイベントとか・・・。


それからアリスの故郷、徳島県の片田舎に奥の奥の奥のほ〜の「天空の

村」ってところに行くことにした。

アリスが育ったところが見てみたかったから・・・。


最初アリスは亡くなった彼のことを思い出すから田舎には帰りたくない

って言ったんだけど、


「そういうことはちゃんと受け入れて前に進まなくちゃ、いつまでも

引きずったままになるよ」


って説得してなんとか彼女の田舎へ行くことを承諾させた。


アリス日生まれた村は秘境にある「天空の村」というだけあって、

鼻が出たレトロなバスが朝と晩二回だけ運行してるってことだった。

それも途中までで、アリスの家までは足がないから軽四かなにかで

行かないと徒歩になるらしい。


歩くとに時間は二時間はゆうにかかるってことらしい、

だから人は滅多に来ないんだって。

アリスに家は山の頂上と渓谷の途中の途中にあるらしい。

想像だにつかない。


そうか歩くのかと僕は思った。

絶景と秘境を見ながら、のんびり彼女を連れて歩くのもいいかって

開き直った。


アリスの田舎へ朝から出発。

四時間あまり電車に揺られて、途中からバスの旅か?

そう思っていた。


「春樹さん、ピアンタにふたり乗りして行きますよ」


「え?ホウキに乗って行くの?」


「そうですよ・・・さ、行きましょ」


「え?僕は電車で行こうと思ってたんだけど・・・」


「いいですけど、途中から歩かなきゃいいけないですよ」


「ピアンタで飛べば二時間もあれば私に家につきます」

「そのためのホウキだし、そのための魔法です」


「そうか?・・・でもさ、ちょっと怖いな」


「私にしがみついてたら大丈夫ですよ」

「はい、春樹さんのぶんのゴーグル」


「じゃ〜乗せてもらおうかな」


僕はアリスの後ろのサドルに恐る恐る乗った。


その様子を二階の窓から見えいた母が言った。


「あなたたち、気をつけていってらっしゃい」

「アリス、お祖母様とお母様によろしくね」

「春樹、あなたアリスをちゃんとエスコートしなさいよ」


「分かってるって・・・ちょっと行ってくるから」


「奥様、行ってきます」


そう言ってアリスは母に向かって手を振った。


「じゃ、飛びますよ、しっかり捕まっててくださいね」


「わ、分かった」


僕はアリスのお腹に手を回してガッチリ手を組んだ。


するとピアンタがフワッと浮いた。


「わ、浮いた」


「ピアンタを浮かせたのは私の魔法です」

「前に進むのはのアクセルをひねればいいんです」


空に浮いたピアンタたは僕とアリスを乗せて一気に空に舞った。


「わ〜すげえ・・・僕の家がどんどん小さくなってく」


見る間に全てのモノが小さくなって、まるでカラーマップを見てるように

なっていった。


これからアリスの田舎までピアンタでひとっ飛び。

風に乗って、風に舞って。


「アリス・・・君ってやっぱり魔女なんだ」


「そうですよ・・・」


「普段、魔法使わないからさ・・・本当に魔女なの?って時々思うよ」


「枯れかけた花を蘇らせるだけじゃないですよ」

「春樹さんを愛することも私の魔法です」

「一生尽くしますから・・・」


「ああ・・・本当なんだ?」


「何がですか?」


「なんでもない・・・幸せになろうね」


エピローグにつづく。




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