第88話
「ボス、彼らはどうしますか?」
「話を聞く限り情状酌量の余地あるよなぁ。まだ俺たち以外襲ってないからギリセーフか?うーん……そうだ。ジョーカー、耳貸してみ」
俺は思いついたことをジョーカーに話した。
「素晴らしい!さすがはボス」
ジョーカーから賛成が得られたので俺は早速交渉を始める。
「あなたたちは住む場所が無いんですよね?」
「はい。どこも難民を受け入れる場所はないと追い出され……」
「良いところ知ってるんだけど、どうする?」
「本当ですか⁉」
「病気や怪我は無料で治してもらえて、きちんとした教育も無料。その上、飢えることは絶対に無い。まあ、立地が少々特殊だけど慣れれば問題ないだろう」
俺が思いついたのは、彼らを俺たちが作る街の住人第一号になってもらおうということだ。
街に住人が欲しい俺、住処が無い避難民。完全なる利害の一致。
街作りでは住人の確保が一番大変だから、呼べるときに呼んでおかなければな。
「そんな所があるなんて……」
「もう一度聞くけど、どうする?」
「ぜひ!」
その後、男たちは近くの洞窟に隠れていた家族を連れてきた。
数えると33人。一家族5〜7人くらいだな。
とりあえず馬車に乗ってリビングにいてもらうが、大人たちは馬車の中を見てあんぐりと口を開けた。
「あなたは、貴方様は一体何者なのですか……?」
「どこかの国のお貴族様で?」
「いいや、これ以上俺から言うとあれだから、後は自分たちの目で見て判断してくれ」
「は、はあ……」
大人たちはビクついて椅子ではなく、床に座ってしまうが純粋な子どもたちは元気だ。
ソフィアたちが出したお菓子を頬張りながら、ジョーカーのマジックや曲芸を見て楽しんでいる。
やはりジョーカーは面倒見がいいな。
「ソラン。一番近くの俺のダンジョンはどこだ?」
俺が聞くとソランは地図を広げて調べてくれた。
「ここから約二時間程。道なりに進んだ場所にあります」
「ありがとう」
ジョーカーのマジックショーを見てるうちにダンジョンの入り口に着いた俺たちは、馬車に乗ったまま商人用通路を通ってテレポートゲートにたどり着いた。
「マスター、おかえりなさいませ。彼らが?」
「ああ。皆、ここからは馬車から降りてくれ」
ジョーカーと避難民を引き連れてテレポートゲートで第二迷路に行ってコアちゃんにスライム街まで移動させてもらう。
「こ、これは……」
「すっごーい!」
ここでもやはり子供は元気で、道路を走り回る。
スライム街は元の世界みたいにビルやマンションが建っている。これらもショップで買った。
圧迫感を無くすために、天井は青くして雲の絵も描いてる。照明も昼夜と連動していてバッチリ。
このスライム街はモンスター街とは違う。
マスターたちの居住区のすぐ隣に作って、今もクレイスライムたちによって拡張中だ。
最終防衛ラインである居住区よりも奥に置いてあるので、仮にダンジョンバトルが起きてもも被害が出ないように作ってある。
「ジョーカーはこの人たちに住居を見繕ってくれ。俺はちょっとやる事あるから」
俺は自室に戻ってスミススライムと一緒にあるものを作り、老師に量産するよう指示した。
「ほうほう。これはなかなか高度な物を……しかし完成品があるならば量産は容易いですじゃ」
そして俺は最初のダンジョンの入り口の隣に街につながる特別なテレポートゲートを設置する。
俺が作ったのは指輪で、さっき設置した街につながるテレポートゲートはこの指輪をつけている者のみを転送する。
更に指輪の中にはゴーレムが収納されていて、指輪を奪おうとする奴や渡そうとする奴がいたらそいつを逮捕するのだ。
この指輪は二種類作っていて住人用、冒険者用がある。
住人用は今言ったとおりだが、冒険者用はかなり制限があり、街中での武器強制収納の機能等が付いている。
まあ、発展するまでは冒険者は入れないようにするけど。
冒険者用と言ってるが、住人じゃなかったら旅行者や商人でも同じ指輪を付けることになる。
これがあれば個性の管理が楽になり、何より犯罪率の低下にもつながる。
我ながら良いものを作った。
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