第19話

「上手く行きましたねマスター」


「ああ。最初に来た冒険者がいい人たちで良かったな。それに程良く欲も持っていたし、あれならアダマンタイトスライムも安全だろう」


「格好のかもでしたね」


 ずいぶん直接的な表現だな。まあ、実際そうなんだが。

 当然だが、あのアダマンタイトスライムの支配権は俺にある。俺が彼らにテイムされたふりをしろと命令をしてあるのだ。彼らにテイムされたフリをさせた理由は、情報収集のためだ。


 俺は命令できるモンスターがたくさん居るダンジョン内ではそれなりに強いが、ダンジョンの外では無力なガキだ。外で情報収集の前に途中で雑魚モンスターや盗賊に殺されるのがオチだ。


 しかし、あのアダマンタイトスライムにはCランク冒険者三人という強力なボディーガードがいる。


 とりあえず一匹だが、これから来る強そうな冒険者にはレアなスライム、それなりの強さの冒険者にはそれなりのスライムをテイムさせていく。


 既にかなりのスライムが野生のスライムを装って外に放流している。         

 冒険者にテイムされたスライムたちが彼らに情報を伝えてこのダンジョンに戻ってくる仕組みの、巨大な情報網を築き上げるのが完成形だ。


「貨幣の価値もなんとなく分かりましたし」


「銅貨が千円で百枚で銀貨一枚、銀貨は一枚一万円、どこで十分の一になるのかがさっぱり分からなかったけどな」


 数え方が違うのかもしれない。五と六の間に何かあるとか?ややこしい。


「お釣りの計算が面倒、と言うか不明なのでぴったり出すように注意書きしておきましょう」


「そうだな。それがいい」


 さて、連れて行かれたアダマンタイトスライムだが、分裂を皆さんは心配してるかもしれないだろうか。

 ご安心を。スライムたちは分裂する代わりにアダマンタイトを出すのだ。


 つまり彼らが欲望のままにアダマンタイトを作り出すはずなので、外にいるアダマンタイトスライムは一匹だけということになる。

 仮に分裂したとしても、人目につかないよう地面を掘りながら帰らせればいい。


「さあ、ここまでしたらこれからダンジョンが賑わうだろう。そこでコアちゃんに相談だ」


「はいマスター」


「ダンジョンで殺る人間と殺らない人間の基準を決めようか」







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