第2話 知らぬが花。しかし、知っても逃げられないのが仕事。
なんだかんだで無罪。そして放免となり、憲兵隊から開放されたヤクモは宿舎での待機が命ぜられた。宿舎までは昨日まで取調べていた憲兵隊が案内してくれるとのこと。無罪になったおかげか、取調べ中の威圧的な態度ではなく、
「ご案内します。」「こちらになります。」
と、親切に対応してくれる。至れり尽くせりとまではいかないが、人事や、軍本部に顔を出して書類を書き、長い待機時間を経てから申請を終え、後ほど辞令をいただく。
そんな無駄な時間はなくなっただけでヤクモとしてはありがたい。基本的に身内のアラを探す憲兵隊は嫌われるものではあるが、首都星近辺の憲兵は『お膝元』でもあり、見る人の立場も違う。それに対する対応や切り替えの早さも上手な態度と言える。
「…と、言っても何もないんですがね。」
案内された士官宿舎ではあるが、備え付けである軍用の固定式情報端末以外は何も無い。余計な物は用意されず、最低限の物品も自分で用意しなければならない。
それなりに良い給料をもらっている士官ではあるが、家具一式など揃えれば懐は痛む。…とは言っても、前使っていた私品は基地ごと宇宙の塵になってしまったのでリサイクルはできない。
「せめて、寝具と冷蔵庫ぐらいは用意してほしいな。それに…」
こんな扱いは酷いという士官もいる。しかし、同階級での話でしかないが、帝国に比べれば貴族出身でなければ、王国連邦の方が給料もいいし、私物も自費ながら使うことも出来る。国力が低い銀河連合と比べるのは相手に悪い。さらに寄せ集めの新興同盟と比べるのはなんというか。……うん。やめよう。他所の芝生は青いものだろうし、不満を言ってはキリが無い。
そう思うことでヤクモは言葉の続きを飲み込んだ。数時間前まで拘束・隔離されて強制的に暇を持て余すのとは違い、待機命令とは言え、今は街に買い物に出かける自由がある。
「しかしながら、この軍服で買い物に出るのも気が引ける。」
私服も宇宙の塵になっているので、着るものは軍服しかない。別にファッションに対して、強いこだわりは無いヤクモだが、数日着ていた軍服で街に出る気にはならなかった。
暇を持て余していた拘束の日々や、買い物に行く・行かないと悩む平和な時間に、仕事という魔の手が近づいていることをヤクモは知る由もなかった。
くだらない悩みに悩んで悩んで、通販で済ませる事にしたヤクモが注文を終えるのと、ほぼ同時に、軍本部への出頭を命じる命令が届くのだった。
(しばらくの待機命令とは?)
ヤクモが、少しばかりアルバートに苛立つのも仕方ないだろう。
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