僕が女子に興味が無いと思い込んでる彼女は、容赦無くおっぱいを見せつけてくる。
赤木良喜冬
第1話
いつもの公園。
だけど今日の私はいつもと少し違う。
制服のリボンを外し、ブラウスを第三ボタンまで開けて来たのだ。
彼に谷間を見せつけてやる。
もちろんブレザーの上着は全開。
彼は女に興味が無いのだから、なんだって出来ちゃう〜
「あ、いた……」
視界に広がるのはだだっ広い草むら、様々な遊具で遊ぶ子供たち、ランニングコースを走るおじさん、風に揺れる木々。
でも私が捉えてるのはそのどれでもないただ一点。
眼前の小さなベンチに腰掛けた彼の姿。
斜陽よりもずっと濃い真紅のロングヘアが、また私のつまらない世界に色をくれた気がした。
ほっと胸を撫で下ろす。ある日突然にいなくなったりする可能性もゼロじゃないから、毎日彼を見つけた時はこんな感じである。
よし、今だ。
通学リュックを背負い直し、私は駆け足で彼の元へ向かう。
「
「ん? ああ、
***
……………………。
あぁ……。
……今日は何か嫌なことでもあったのかなぁ。
後ろからやってきた彼女、
僕はさっき自販機で買った緑茶を口にした。
清水さんは整った顔立ちに鎖骨くらいまでの黒いミディアムヘア。化粧はスクールメイクと言うには濃い。身長は僕と同じで百六十くらい。最近、ここで話している相手。
「小清水君、今日もいてよかったよ」
清水さんは他にもっと何か言いたげな素振りでこちらをジーッと見つめながら、隣に腰掛けてきた。
彼女の胸以外のどこかを見つつ答える。
「うん。別に予定もなかったし」
「そっかー、予定なかったかー」
適当な返答と共に彼女はまた、僕に「気づけよ」みたいな視線を送ってくる。
「小清水君、あの、本当にどうでもいいんだけど、だいぶ陽が長くなったよね」
「……そうだね。清水さんは冬と夏、どっちが好き?」
「う〜ん……春か秋」
「ちゃんと答えてよ、気持ちはわかるけど」
「でしょ〜、熱いのも寒いのもヤダー」
棒読みだなぁ……ってちょっと清水さん⁉︎ 胸! 清水さんが自身の胸を寄せ、身体を近づけてきた。透き通るように白い柔肌は夕日に照らされて朱に染まっている。
僕は慌てて蓋を開けて、また緑茶を流し込んだ。
***
あれ? 反応がいつもと変わらない……。
落ち着いて緑茶なんか飲んじゃって。
相変わらず落ち着いてるなぁ。
年齢は私と同じ十七らしい。高校二年生。だけど平日にこんな格好でこんな公園に座ってるのは明らかにおかしい。
「何か」はあるのだ。だけどそれはきっと、触れちゃいけないことだから。触れられたくないことかもしれないから。慎重に接していかなくてはならない。
人付き合いが苦手な私なんて尚更のこと。
でも、つい口が動いてしまう。
その何を考えているかわからない、どこを見つめているかもわからない横顔を見ていると、どうしてか。
小清水君は平然とした態度で辺りを見渡す。カールした長いまつ毛が上下に瞬きした。
「今がちょうどいいねぇ……」
「え、ああ気温のことか」
「……色々だよ」
ずしっと、その言葉の通り、色んな意味が込められたような一言。色々ね……。
私はその正体を聞いてもいいのだろうか。
迷っている間に別のことが浮かんだ。
「そういえば今日、数学の教師がさ……あ、なんでもない」
慌てて手を横に振って誤魔化したが、小清水君は、不思議そうにこちらを覗いてきた。
「どうしたの? 今日、数学がって……」
「あ、いや本当になんでもないの!」
「ならいいけど」
よかった、なんとか乗り切れた。
学校の話題は危ない。
何か嫌なことを思い出させてしまうかもしれない。
もちろん私の杞憂で、彼は別に学校に何も嫌な印象を抱いてないかもだけど。だけど、可能性が無いわけじゃないから。
他には家族とか友人関係とか健康とかお金とか将来とか……地雷になってそうで聞きづらいことはいっぱいある。むしろ、ほとんど自由な会話はできない。
今日だってまだ、四季の話しかしていない。
でも、それでも話していたいって思うから。
これからも私は小清水君と会い続けたい。
そして少しづつ、距離を縮めて歩み寄っていけたらいい。
そう思ってる。
現に今日だって、一つ彼のことがわかった。
やはり小清水君は女子に興味がないらしい。
分かってたことだけど、改めて確信した。
私のこの胸に一切興味を示さなかったのだ。
でもそういういうのって人それぞれだし、これが小清水君なんだろう。
小清水君と話しつつ、こそっと私は自分の胸に手を当てる。
確かな感触。
そこそこある方なんだけどな、私。
……ちょっとは反応してよっ!
***
なんだか急にむすっと頬を膨らませた清水さん。
多分、彼女は女子同士のテンションで接して来ているんだと思う。
そうじゃなきゃその……胸なんて見せつけて来るはずないから。
最初に会った時に、男であることは伝えた。
だけど加えて「恋愛対象は女性です」と、女性である清水さんに面と向かって言うことは気恥ずかしくて出来なかったのだ。
でも、本当はあの時に勇気を出して打ち明けておくべきだった。
何を隠そう、その後彼女は勝手に僕が「女子に興味が無い」と思い込んでしまったのである。
かと言って。
「あの、清水さん……」
「ん、何?」
「……やっぱなんでもない」
そこそこに関係値が築かれてしまった今、とてもじゃないが「実は女性が好き」、だなんて言える空気ではなくなってしまっている。
あの、ひよってる僕が100%悪いことは重々承知しているんだけど、どうかお願い。
早く胸しまって……。
***
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