(二)-13

 一堂は再び黒い耳が垂れ豚鼻の通信器具を凝視した。

「今度こそ……」

 兄妹の呟きがハモるのにやや遅れて高井戸も「ついにこのときが……」と発語した。

 神先生は、先ほどと同じようにゆっくり手を伸ばした。そして受話器を握りしめると、ゆっくり耳へと持って行き、当てた。

「もしもし」

「あ、神先生のお宅ですか。招来軒の松原です」

 神の声の後に受話器のスピーカーがそう言った。

「ああ、招来軒の……。何かご用で」

 父の電信会話を聞き、兄妹はがっくりと頭をうなだれた。


(続く)

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