(二)-2

 修一は「母さん、誰か来たよ」と部屋の入口越しに大声を張り上げたが、そう言い終える直前に応接間のドアの前の廊下をエプロンで手を拭きながら「はいはい、聞こえてますよ」と玄関に向かう幸恵の姿が見えた。

「ちょっと、兄貴。自分で出なさいよ。母さんだってもう歳なのよ」

「そういうお前が出たらどうだ」

 兄妹のやりとりを聞いて高井戸が「お二人とも、子どもみたいですね」と言って軽く笑顔を見せた。

「お恥ずかしいところを……。私たちだっていい歳なのに」


(続く)

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