Chapter1-1 Sister of Saint −聖女の妹−
処刑から二週間前。王宮の庭、魔法の修練にて
「どうしてなの…!セレス!今までは私のほうが魔力が上だったのに…!」
「どうもこうもないよ。お姉ちゃん。今は聖女としての力は私が上だもん。」
私は、姉、"セインテイラ"に聖女の力でマウントを取っていた。
───本当はそうしたかったんじゃない。
お姉ちゃんを思ってそうしてるんだ。
だけど…
「あなたが生まれてから…私の力は落ちてしまった…全部あなたのせいです!!」
「あら、そう。じゃあ…前みたいにお姉ちゃんが私の力を超えたら、聖女として認められるかもね。まぁ、その瞬間はないけど。」
お姉ちゃんを鼻で笑ってるうちに一人の青年…セントヘイム王国の王子であり王位継承者の”ジーン”が現れ
「修練は終わりだ。行くぞ、私の愛おしいセレスティアナ。」
「わかりました。王子様。」
…本当は私を、国を我が手中に収めるためだけの存在と思ってるくせに…
という本心を心に背負い込み、私はジーンへとついて行った。
「少し良いか、セレス」
「何でしょうか…王子様。」
「セレス。お前を愛している。」
「この言葉、何回も聞きました。」
ジーンからの強烈なアプローチ。
もちろんあの言葉は本心ではないだろう。
だって、あいつがほしいのは私ではなく…私の力。
────姉が追放された瞬間…私が手放す力。
「王子様はなんで私を愛してるんですか?」
「…それは、お前が美しいからだ。アメジストのような眼と髪…ダイヤモンドのような素肌…どれをとっても美しい。そして、誰に対しても…いや、姉以外にはその笑顔を絶やさない、女神のような少女だ。」
絶対に嘘だ。本当は私の力だけを欲しているくせに。
「…逆にお前はなぜ、私を愛しているのか?」
ジーンは質問を返す。それに対して私は…
「それは、あなたが誰にでも優しい人だからです。
私に対しては少し愛のアプローチが過ぎてますが、それ以外は民衆声に応え、カリスマ性を持ち合わせた、王様にふさわしい人です。」
嘘を嘘で返した。
前までは姉に対して同じアプローチをしていたくせに。
もしあいつが国王になったら、聖女を愛のなき番とし、その力を搾取し、国のためだけに行使する。それだけだ。
「そうか。私が王になったら、政略結婚によりお前が王妃になる。その準備はできているか?」
その"準備"の上っ面の意味は”ジーンの嫁として永遠の愛を誓う準備”だろう。
────だが、真意は"ジーンが独裁するためだけに、力を行使するだけの人形になる準備"だと、私が確信している。
「はい。できています。」
本当にできているのは、その準備ではなく、"革命"を起こすための覚悟だ。
「ああ。私は、セントヘイムの時期国王だ。これからは、民衆のために良き政治を行おう。」
「はい。貴方ならできると、信じています。」
会話を終えた私は、自分の部屋へと帰っていった。
私は隠し部屋にこもり、状況を整理し、手記にまとめた。
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