第11話 Side MA - 16(-6) - 11 - おまえがおかあさまになるんだよ! -

Side MA - 16(-6) - 11 - おまえがおかあさまになるんだよ! -



カラカラ・・・


「ぐすっ・・・ひっく・・・」


カラカラ・・・


こんにちは、マリアンヌ・ボッチです。


今私は手足を拘束され馬車に揺られてどこかに運ばれています。


夜お姉様と一緒に眠っていると突然覆面をした男性が2人寝室に乱入して来たのです。


恐怖に震えるお姉様と私を捕まえようと一人は私の肩を掴み・・・損ねたので私は壁際に逃げました、そしてもう一人の男はお姉様の髪を掴み、引きずって窓の方へ・・・それを見た私は・・・怒りで目の前が真っ赤になったのです。


「汚い手でお姉様に触れるなぁぁ!」


「ぐっ!・・・おぉぉぉぁぁ!」


私はお姉様を連れ去ろうとする男のお腹に向かって渾身の蹴りを入れました、でも背が低かったから私の足はお腹じゃなくてもっと下、股間に命中してしまいました。


何故か膝から崩れ落ちて酷く苦しむ男性、もう一人の男はお姉様を諦め、私と床に転がってピクピク震える男を抱えて2階の窓から器用に外へ逃げ出しました。


筋肉モリモリでマッチョな男性は私とまだ震えているもう一人の男を抱え、騒ぎに気付いて集まって来たウンディーネ家の騎士様達を振り切って・・・お屋敷の外に停められている馬車で逃亡・・・。


そして今に至ります。


「うぅ・・・怖いよぉ・・・痛いよぉ」


私を連れ去る時に顔をぐーで殴られたから前歯が折れてしまいました、その時にお口の中も切ったのでとても痛いです。


カラカラ・・・


「ぐすっ・・・うぅ・・・お姉様ぁ・・・」


カラカラ・・・


・・・


キィ・・・


がしっ!


「おら!、降りろ!」


乗せられていた馬車を降りると目の前にはもう一台の馬車が停めてありました、場所は木が沢山生えている林っぽいところ?、王都の中じゃなさそう・・・。


「おーい、イッヌ様よ、連れて来たぜ、相棒がこいつに玉を蹴られちまって残念ながら一人だけだがな」


ザッ・・・


「マリアンヌ・・・お前・・・」


「ひぃっ!、イッヌ様・・・」


もう一台の馬車の中から降りて来たのはイッヌ様と、黒い服を着て覆面をした男の人、私の顔を見てイッヌ様が驚いています。


「顔の傷はどうした!・・・まさか・・・俺を騙していたのかぁ!」


「ひぃぃ!、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


そうでした、イッヌ様は私がお顔を大怪我してるとまだ思い込んでいたのです・・・でも今の私は無傷・・・ぐーで殴られて口の周りは腫れてるけど・・・。


「それで、この娘をどうするおつもりです?」


一緒に降りてきた黒服黒覆面の男性がイッヌ様に尋ねました、うん、私もこれからどうなるのか聞きたいの・・・。


「今の俺には何も無ぇ・・・家も、家族も・・・金も持って無ぇからこいつと結婚するのも良いかもな・・・あの家は金持ちだから娘の為ならいくらでも金を出す」


「・・・うぅ・・・嫌なの・・・それに私の家族・・・みんな怒ってるの・・・だから・・・」


「そうだな、なら既成事実でも作るか、子供が出来ちまえば認めるかもな、3年くらいどこかに隠れて・・・子供を抱いて金に困ってるから助けてくれって家に行けば一生遊んで暮らせるくらいの金額出してくれるだろうよ」


「子供・・・」


「そうだ、お前が俺の子供を産むんだ」


「い・・・嫌ぁ」


「ほらこっち来い、うちのボロ馬車の中でいい物見つけたんだ、こいつを身体に刻めばお前は俺の所有物だ、他の奴と結婚出来ねぇようにしてやる」


イッヌ様が馬車の中から長い棒みたいな物を持って来ました、私は男性2人に腕を掴まれてるから逃げられません。


フルフル・・・


何をする道具か分からないけど・・・とてつもなく嫌な予感がするの・・・。


「これは隣の大陸にあるデボネア帝国から来た魔道具職人に作らせた奴でな、うちが持ってる家畜だと分かるように家の紋章を付ける時に使う焼印だ・・・ほらこうやって魔力を込めると・・・」


しゅこぉぉぉ・・・・・ぉぉぉ・・・


棒の先に付いてる金属が赤く光りました・・・わぁ・・・熱そう・・・。


「焼印のところに魔石の粉が塗ってある、こいつで皮を焼いてその下の肉に塗料を焼き付けるようになってるんだぜ、一度付けられたら絶対に消えねぇ・・・おい、こいつを裸にしろ」


「・・・とても悪趣味ですが契約なので仕方ないですね・・・この娘の服を脱がせろ」


腕を掴んでいた男性2人が私が着ている服・・・寝着や下着を脱がせ始めました。


「嫌ぁ!、やめて・・・怖いよぅ・・・」


「俺様を騙した罰だ、どこが良いか・・・腹にするか・・・」


焼印を持ったイッヌ様が笑顔でゆっくりと近付いて来ました、男性2人に両手両足を押さえ付けられた私は怖くて涙と鼻水を垂れ流しています。


「ちょっと痛いと思うぜ」


しゅこぉぉぉ・・・・


じたばた・・・


こぉぉぉぉ・・・


「嫌・・・やめて・・・」


ぴとっ


じゅぅぅぅぅぅ!


「ひぎぃ!、痛い!痛たぁぁぁい!、やめて痛いの!、わぁぁぁん!助けてお父様!」


しょわしょわぁ・・・


ほかほかぁ・・・


おへその下を火で焼かれてるような激痛が走って私は大声で叫びました、あまりの痛さにお漏らしまでしてしまったのです・・・。


しゅぅぅぅ・・・


「ほら見てみろ、ネッコォ家の紋章が綺麗に付いたぜ、これでお前は俺の物だ」


私の髪を掴んで起き上がらせたイッヌ様は下腹部に焼き付けられた紋章を私に見せて言いました。


「・・・わぁぁん!、痛いよぉ・・・嫌だぁ・・・こんなの嫌・・・あぅ」


ちゅぅぅ


全裸を男性に見られた事、それから消えない焼印を付けられた事で小さな子供のように泣き出した私のお口にイッヌ様の唇が重なります・・・嫌なの、気持ち悪いの!。


「さて、このまま子供を作ろうか、俺のマリアンヌ・・・」


「やだ・・・いやぁ!、助けてお母様ぁ!」


「暴れるな!、お前がお母様になるんだよ!」








こんにちは、私の名前はアリシア・ウンディーネ。


昨日寝室に男が乱入してマリアンヌさんを連れ去ってしまったわ。


正確に言えば・・・私の髪を掴んで窓から連れ去ろうとしていた男にマリアンヌさんが蹴りを入れて・・・代わりに連れて行かれたのだけど・・・。


お父様が言うには侵入者は希少な古代遺跡から出土した「認識阻害のローブ」と催眠の香を使って厳重なウンディーネ家の警備をすり抜け、マリアンヌさんを攫った後、影に潜るように消えてしまった・・・。


その前日には王城で勾留されていたネッコォ家当主に何者かが接触した形跡があったらしいの、だからお父様や陛下はイッヌ・ネッコォが関わっているか、彼が雇った裏組織の仕業だろうと言っていたわ。


「ぐす・・・私のかわりにマリアンヌさんが・・・」


「泣かないでアリシアちゃん・・・陛下の指示で王国騎士団、それからウンディーネ家とシェルダン家の騎士様達も出て探しているわ、きっと大丈夫・・・」


私は昨夜からお母様に頭を撫でられながらずっと泣き続けてるの、こんなに泣いたのは幼少期の時以来ね・・・だって私の大事なマリアンヌさんが・・・。


「わぁぁ・・・お母様ぁ・・・」


「よしよし」


なでなで・・・


コンコン・・・


ガチャ!


「アリシア、マリアンヌちゃんが見つかった!、王都と隣町の中間にある林の中に居た」


「お父様・・・マリアンヌさんは大丈夫なの?」


「命に別状はない、昼頃にはうちに運ばれて来るだろう、医者を手配してここで治療する事になった」


「お医者様・・・マリアンヌさんは怪我をしているの?」


「・・・それは後で説明する、アリシアとラスティータは少し休みなさい、昨晩から寝ていないのだろう」





・・・ざわざわ


・・・どたどた


お部屋の外が騒がしくなって目が覚めてしまったわ。


もしかして・・・マリアンヌさんが運ばれて来たの?。


がちゃ!


私はお部屋の外に飛び出したわ、廊下にいた警備の騎士様に尋ねたら先ほどマリアンヌさんがこの家に運ばれて来たのだそう。


私は1階に降りて辺りを見渡すと・・・居たわ!、騎士様にお姫様抱っこされて、ベッドのある客間に入るところだったの。


「マリアンヌさん!」


私が駆け寄ると、毛布にくるまって涙と鼻水を垂れ流しているマリアンヌさんと目が合ったの。


「ぐすっ・・・お姉様ぁ・・・ひっく・・・痛いの、苦しいの・・・私・・・赤ちゃんができちゃうの・・・いやぁ・・・赤ちゃんいやぁ・・・」


「・・・っ!」


今マリアンヌさんはなんて言ったの?、赤ちゃん?、まさか赤ちゃんができるような事をされたの?、誰に・・・そんなのあの犬畜生以外居ないじゃない!。


ゴゴゴゴゴ・・・


「ひっ!」


いけないわ!、つい怒りで怖い顔をしてしまった・・・これじゃぁマリアンヌさんを怖がらせてしまうわ・・・でも・・・あぁ!なんて事!、私の大切なマリアンヌさんが・・・汚されてしまったなんて!。







マリアンヌさんがうちに運ばれて来たのがお昼過ぎ、それからお医者様がいらっしゃって治療が始まったの・・・夕方になってようやくお医者様と助手の男性がお部屋から出て来たわ。


今このお家には私と私の両親とお兄様・・・お父様は今日お城のお仕事を休んでいるわ、それとマリアンヌさんのご両親と弟のパトリックさん、何故かアーノルド様と王太子殿下、それにインフィニ殿下もいらっしゃるわね。


「先生・・・マリアンヌさんは」


私が先頭に立ってお医者様に容態を聞いたわ。


「えぇ、もう大丈夫、身体に傷・・・刻印は残ってしまいますが安静にしていればすぐに歩けるようになるでしょう」


ガチャ・・・


お部屋に入るとマリアンヌさんが泣いていたわ。


「うぅ・・・恥ずかしいの・・・お医者様に全部見られたの・・・お股の穴の中まで・・・」


とてもえっちな想像をしてしまったわ!。


「あの・・・先生、マリアンヌさんは襲われて・・・その・・・赤ちゃんが」


一番聞き辛い事をお母様が聞いてくれたわ、後ろで男性陣が固まっているわね、でもこれはとても大事な事よ!。


「はい、ご本人は赤ちゃんが出来てしまう、どうしようと泣いておられたので調べてみたのですが、特に「そういった」暴行はされておりません、騎士様から受けた報告にも全裸に剥かれてはおりましたが・・・行為をされる直前に騎士団に見つかり、マリアンヌ様を放置して逃亡したと・・・」


「え・・・でも・・・」


「マリアンヌ様は先ほど確認しましたところ間違いなく処女でございます」


「マリアンヌさん・・・あの男に何をされたか・・・言える?」


「ぐすっ・・・お口にキスされたの・・・」


なんて事でしょう!、私でさえまだしてないのに!。


「それから・・・何をされたの」


「あと抱きつかれたの・・・気持ち悪かったの・・・」


あの犬畜生に抱きつかれて・・・それはとても気持ち悪かったでしょう、あとで頭を撫でて慰めてあげるわ。


「抱きつかれた後は何をされたの?」


「それだけなの、昔、お姉様が・・・男の人は獣で・・・お口にキスされたら赤ちゃんが出来るの・・・だから気をつけなさいって・・・言ったからぁ」


確かに言った覚えがあるわ!。


「マリアンヌさん、念の為に聞くけど赤ちゃんってどうやればできるのか・・・知っている?」


「うん・・・男の人とお口でキスをして、抱き締められたらできるの」


「・・・」


「じゃぁ・・・マリアンヌさんはキス以外何もされてないの?」


「いえ、犯人によって下腹部に焼印を刻まれております、その・・・申し上げにくいのですが大変特殊な魔道具によって刻み付けられたようで・・・皮膚の下・・・奥深くまで魔石の染料が染み付いております、消す事は不可能ですし一生消えずに残るかと・・・」


「なんて事・・・」


お父様がマリアンヌさんの前に跪いて言いました。


「マリアンヌちゃん、娘を守ってくれて本当にありがとう!、この恩はウンディーネ家が続く限り決して忘れない、将来何か困った事があったら遠慮なく言ってくれ、我が家が必ず力になる」


「そうね、本当にありがとうマリアンヌさん、貴方が暴漢を蹴って助けてくれなかったら私もどうなっていたか・・・」


「・・・いえ・・・お姉様が無事で良かったの・・・お腹に醜い刻印をつけられたのは悲しいけど、それでお姉様の命が助かったのなら・・・私は気にしないの・・・それに元々ボッチ家の問題だったから巻き込んじゃってごめんなさい・・・」


「うわぁぁぁ!、マリアンヌぅ!」


マリアンヌさんのお父様が泣きながら抱きついたわ、これは演技じゃなくて本気ね、でも・・・。


「私達家族は巻き込まれたなんて思ってなくてよ、それに・・・ウンディーネ家に侵入して喧嘩を売ったのだもの犯人はタダじゃ済まないわ・・・うふふふ・・・」


「そうだな、これはウンディーネ家に売られた喧嘩だ、どこの裏組織か知らんが・・・皆殺しにしてやろう・・・ふふふ・・・」


「うちの・・・シェルダン家も是非仲間に入れて欲しい、マリアンヌ嬢の身体に傷を付けた罪、償わせてやる」


みしっ・・・


ばしゅっ!


またノルドさんの上着が弾け飛んで上半身裸になったわ・・・もう少し大きな服を着ればいいのに・・・。


「王家としても地下牢に入っていたネッコォ家当主に簡単に接触されてしまった・・・ウンディーネ家と同じ手口で認識阻害の魔道具と催眠の香を使われたようだ、これだけ王家をコケにされて黙っているわけにはいかないと親父も言っている」


「ネッコォ家の当主は逃げなかったの?」


「あぁ・・・妻と娘が死んだと聞かされてからは急に大人しくなった、・・・いやもう廃人状態と言ってもいいかな、抜け殻みたいになって・・・侵入者が逃がそうとした時も拒否して牢から出なかったらしい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〜マリアンヌさんは凶悪令息のお気に入り〜 柚亜紫翼 @hkh

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ