第32話 ご褒美くれるの?

 領主様のお館に招かれたレオポルト商会一行、レオポルト様は正装、わたしもドレス姿なんだけど、戦闘奴隷の女の子達はピカピカの金のモールの付いた軍服みたいな服、

 吹奏楽部のマーチングにはドラムメジャーと言うポジションがあるのだけど、それを想像してみて頂戴ね。


「……奴隷の買い取りに行った際に偶然にも彼らの悪行を目にし、咎めたところを武で持って答えて来たので、我々も仕方なく剣を抜いた次第でございます」

「ふむ、それは災難であったな、とは言え我が領内での犯罪の摘発、感謝する、」

「もったいなきお言葉でございます」

「うむ、ミヤビとやら、そなたには褒美を用意してある受け取る用意はあるか?」


 さっきから領主様が変な方向に行ってないかな、こう言う時褒美は奴隷商会に与える物だし、その為にレオポルト様を呼んだのではないのかな?

「わたくし奴隷商会の奴隷であります、その様な奴隷に褒美など分不相応かと愚考致しますが」

「気にするでない、わしは身分に関わらず功の有った者には褒美を与える事にしておる、ミヤビをそなたには白金貨1枚を贈ろう」

 金貨1枚で100万円、それが100倍だから一億円、もはや褒美ではなく宝くじレベルよ。



 奴隷商会、前の世界の基準で言えば正社員50人以下の零細企業よ、そんな零細企業の従業員の資産が一億円なんておかしい、

 奴隷は金が有れば自身を買い戻しする事が出来る、中には奴隷から身を起こし商会を立ち上げた人もいるけど、買い戻す金が出来てもそのままの奴隷の方が多いらしいの、

 奴隷のままでいれば衣食住の心配がいらない、そんな生活をわざわざ放り出すなんてもったいない、そう思うそうよ。


 わたしの買い取り値は幾らなのか、実は庇護を求めて奴隷になったわたしは自分で金額は決められない、とは言え白金貨を差し出せばレオポルト様はわたしを奴隷から解放するしかない、これはまずい状態だ。


 謁見の儀が終わると席を移し会食会、幸いな事に戦闘奴隷の子達とは別の部屋での食事だった、

 主催のダールマイアー伯爵とご婦人、レオポルト様とわたし、そしてルードルフ様が、豪華な廊下をしずしずと歩いていく、

 執事のオスヴァルトさんがわたしの耳元で囁く、

「あの領主、ミヤビ様を取り込む気でございます」

 やっぱりそれが狙いか、だけどなぜ?

「理由が分かりません」


「そなたは盗賊村を壊滅させたのだ、取り込もうとするのは当然だ」

 ルードルフ様がわたしに言うけど、壊滅させたのはプリスカ達だよね、わたしはたいした事していないよ。


 ◇


 贅を尽くした山海珍味な食事だったと思う、だけど何を食べて、どんな味だったのかまったく記憶に残らなかったわ、

 和やかな食事会が済むと席を移して食後の茶で気持ちと身体を整えるのだけど、ここからが本音の時間でもあるのよ、


「ところで領主様、デニス村はこれからどうなるのでしょう?」

 わたしは政治の事なんて全然分かりません、そんな体で領主様に訊いてみる、

「うーむ、実は今考えておるのだ、何か良い方法はないものかのう?」

 簡単に自分の考えを明らかにしないのは政治家共通だったみたいだ、

「あのままではまた盗賊が住みつきますぞ」

 ルードルフ様が言う、


 そうそうデニス村は取り潰しになって、生き残った村人も死罪か犯罪奴隷と言う社会の最下層に落とされたそうよ。


「領主様、わたくしミヤビに考えがあります、お耳汚しになるやもしれませんがよろしいですか?」

「ミヤビ殿の考えなら是非とも聞かせてもらいたい、してどの様な考えかな?」

「デニス村跡地に娼館を建てます、それも一軒二軒ではなく娼館街とも言う様な歓楽街を」

「なるほど」

 領主は短く言う、

「本来この国では売春は違法な行為であります、ですが実際宿場町では女給がその仕事を担っているとも聞き及んでおります、

 それならばいっそう合法にして一か所にまとめてみてはいかがでしょう、幸いにもデニス村は領地の外れですし、旧街道沿いにあります」


 駅のすぐ裏に有名なソープランド街がある街がある、どんな経緯で駅裏に一大歓楽街が出来たのかは知らないが、旅行者と売春は相性が良いのではないだろうか、

 領主様は身を乗り出して来たから好感触ね、ここからが勝負よ。

「面白いが、娼館は来てくれるかな」

 もっともな意見ね、だけど対策済みよ、

「税金の優遇措置を設けてみてはいかがでしょうか」

「なるほど、それは良い考えですな」

 ルードルフ様もわたしの考えを支持してくれるようになったわ、だけどもう一押し欲しいわね。


「ダ・デーロでは食いつめた農村の娘達が街に入り込み密かに春をひさぎ問題になっております、そんな状況を改善する為にもいかがでしょうか」

「ミヤビとやら、デニス村の跡地利用の件は娼館で決まりだ」

 よし言質取った、

「領主様、娼館街はわたくしの言葉から始まった物でございます、つきましては娼館街建設の供託金として預かって欲しい物があるのですが」

「よもや白金貨ではあるまいな」

「せっかくのお金ですから有効に使いたいと思った次第です」

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