27.夜明けなんていらない

あの日

あなたがどうして涙を流していたのか

その理由は結局訊ねることが出来なかった

訊いてはいけないことだと 察していたから


波が交差するように、感情が錯誤する


あなたを失うことは

私にとってただ恐ろしく

そのことを受け入れるくらいならば

夜明けの来ない闇夜の中に長い間 居たかった


だけど

どんな時でも夜明けは来てしまうものだ


驚くほどに年齢を重ねてしまったし

思い出すことも、逢いたいと願う回数も減ってしまった

これを夜明けだというのならば 夜明けなんていらない


失ったことを受け入れるくらいならば

夜明けの来ない闇夜の中にもう少しだけ 居たかった

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