第3話






「アーノルド。私の好みは『僕の食事は薔薇の花弁を浮かべた紅茶だけだよ』という台詞が似合いそうな、意味のないキラキラオーラと花々を纏っているイケメンではなく、漢と書いておとこと読むという言葉が似合う男の哀愁を漂わせた男の中の男・・・即ちゴリマッチョなの!!」


 厳ついゴリマッチョの裸エプロン姿・・・何て素敵なの~♡


 そんなゴリマッチョに興奮して襲ってしまうわ・た・く・し♡


 あ~っ・・・想像しただけでも鼻血が・・・!!!


 (;//Д//)ハァハァ


(ダメだ、この姉・・・)


 デュフフフフフ


 うっとりとした表情を浮かべて己の妄想を語った後、鼻血を垂れ流しているジェラルディンの姿を目の当たりにしてしまったアーノルドは弟として、次期当主として泣いた。


 そりゃもう心の底から。


「ワイバーンの群れからホワイト公爵領を救ってくれたハンターのレオン様に匹敵する強さと、漢の在り方を背中で語るゴリマッチョ以外とは結婚しませんからね!!!」


 ゴリマッチョと結婚する為に美貌と教養だけではなく、夫を支える為に強さと武芸全般、そして商人としての才能を幼い頃から磨いてきたジェラルディンはアーノルドに力強く宣言するのだった。



(ま、不味い!このままではヴァレリーと結婚が出来ない!)


 どうすれば姉をその気にさせる事が出来るのか?


 ジェラルディンの意志が固い事を改めて感じたアーノルドは頭を抱えるしかなかった。


 そんなアーノルドに家令が来客を告げる。


 訪問者の正体はカーネーション帝国の若き皇帝であり、アーノルドの主君にして幼馴染みであるアントニオだった。


 彼がホワイト公爵邸に来た目的。


 それは──・・・。


「男達の求婚を拒むという事はそれだけ身持ちが固い事の証。アーノルド、私はジェラルディン姫を皇后に据えたいと思っている。その為にまず彼女を側室として迎え入れたい」


「えっ?姉上を皇后に!?」


 アントニオの言葉にアーノルドは驚いてしまう。


(見た目だけは女神のようだと称えられているからな~)


 アントニオがジェラルディンに対してそのような幻想を抱けるのは、姉の中身が親父である事を知らないからだ。


「この事はホワイト公爵夫妻にも伝えている」


「父上と母上は姉上が後宮に入る事を・・・?」


「承諾している」


 ジェラルディンが求婚を拒んでいるのは、彼女が理想とするゴリマッチョが居ないからだ。


 そんなアントニオもまたジェラルディンの好みから大きくかけ離れている『僕の食事は薔薇の花弁を浮かべた紅茶だけだよ』という台詞が似合う、背景に無意味なキラキラと花々を背負っているイケメンであった。


 そんな姉に『側室として後宮に入れ』と言えばどうなるか──・・・。


(・・・・・・・・・・・・)


「陰ながらに姉上は陛下をお慕いしておりました!陛下の側室、行く行くは皇后になれると知れば姉上は泣いて喜びます!!」



 姉のジェラルディン<婚約者のヴァレリー



(そうだよな。姉と婚約者だったら婚約者の方が大事に決まっているじゃないか!)


 自分の結婚が掛かっているアーノルドはアントニオの話に同意を示すのだった。








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