ある記者が残したボイスレコーダー
※音声から抜粋
――あーあー、ちゃんと録音できているかな。最新式って言ってたけど、どうせセールストークでしょ。二万もするなんて、ぼったくりじゃない。
えーっと、私は今、とある廃村に向かっています。そこは地図にも載っていない場所なんですが、いわくつきということでオカルト界隈ではよく話題になっています。
――この村に来た者は、生きては帰れない。
正確に言うと、村の秘密を知ったら死ぬ、らしいです。
それがどんな秘密なのか、現時点では全く分かりません。知った人はみんな死んでいるから……調子がいい話であるのは否めないわ。
編集長もどうしてこんなのを選んだのかしら。どうせ手応えがないまま帰るのがオチなのに、馬鹿じゃないの……っと、いけないいけない。後で、ここの部分は消しておかなきゃ。
そういうわけで、車も入れない道があるため歩いているわけですが。あ、看板らしきものが。
えーっと、××(ノイズが走り聞き取れない)村。目的地です。木でできた看板ですが、持つと崩れるぐらいボロボロになっています。
何とか読み取れるのは……あと、百メートルほどで着くみたいです。良かった。そろそろ歩くの限界だったから助かる。行ったら座れるところぐらいはあるよね?
……どうやら、ここが村の入口みたいです。門も木で出来ていますね。これも今にも崩れそう。通る時は気をつけなきゃ。暗くなる前には終わらせよう。
村というだけあって、一昔前の家って感じですね。茅葺き屋根って言うのかな。昔話にでも出てきそう。
手入れがされていないので、穴があいているし、崩れかけているところもあります。中も見てみたいですけど、さすがに危険だから今日は止めておきましょう。
家の数は、だいたい十軒ぐらいです。表札がありますが、全て同じ名字。あまり考えたくは無いですけど、閉鎖的で近親相姦も当たり前だったとか。廃村になったのも、それが理由だったりして。
……それにしても、どうして表札が二つあるのかしら。別の名前ってわけじゃないし、どの家もみんなそうだし。村の風習?
調べた限りでは、村が無くなった理由が分かりませんでした。大きな事件が起きたとか、過疎化とか、色々憶測はありましたけど、どれも眉唾ものです。
何十年前の写真が数枚残っていて、その中に写っていたのは、ほとんど老人ばかりでした。子供は少なかったということでしょうか? 産まれたけど、長くは生きられなかったのかしら。
あ、写真に確か神社みたいなものがあったはず。結構大きなところだったから、壊されてないと思うけど。
……あれかしら?
大きな社。何神社って書いてあるのか……ぼやけていて読めない。それにしても大きい。村の規模から考えると、あまりにも大きすぎる。それぐらい信仰深かったってこと?
神社には鳥居がありません。賽銭箱とか、そういった類のものも無さそうです。
ただ、なんという名前だったか……舞とかを見せるための舞台はあります。
家と比べると、神社はそこまで寂れた様子ではなさそう――誰っ?
……気のせい? 誰かの笑い声が聞こえたような……敏感になりすぎているだけよね、きっと。なんだか気味が悪い。
秘密を知ったら死ぬって、廃村なんだから秘密も何も無いでしょ。あー、やってらんない。何も無かったってことにして帰ろう。
うわっ! び、っくりした……何? 何の音?
建物の中から聞こえたよね。
え、どうしよう。確認する?
…………見に行くだけ。何も無かったら、すぐに帰ろう。ちょっと覗いてみるだけ。
(ここから音声が乱れる)
……これ……ぞ……ふた……?
しんこ……こと……あれは……れ……
……ひぃっ……うそ……なの? ……なら……は……いやあっ!!
……なさ……ごめっ……して……いやっ……ます……ごめ……い……ご……なさ……………
(ここで音声が終了する)
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