第13話 デート
「ふんふーん♪」
次の日、何とかルカとのお出掛け────もとい、後々にこれってデートなのでは?と気づいて悶絶した────の日。鼻歌を歌いながら、しっかりとおめかしをして出かける準備は万端。
(ルカは褒め……褒めてくれるでしょうか?あの剣にしか興味がないような朴念仁が?)
自分で思って自分で疑問を持つ。自慢の銀色の髪に、可愛らしく髪留めを止めようとしたタイミングで少し熟考。
(……いえ、きっと褒めてくれるはずです。えぇ、そうしないとわたくしの精神が持ちませんわ)
ペちん、と気合いを入れて、もう一度姿鏡で自分の姿を見る。
全体的に、白色で統一し、少しばかりフリルで可愛さをアクセント。スカートの裾は足元までのばし、自分でもバッチリ100点満点の可愛さだと自画自賛する。
最後に、ちょっとばかり髪を整えてから外に出る。安全のために、寮の外には既にルカが待機しているはずだ。
「おはようございますルカ。いい天気ですね」
「おはよう。時間通りだな」
門の壁に腕を組みながら待機していたルカ。その姿をじっくりと上から下まで見渡したローゼスは、これみよがしに息を吐いた。
「はぁ………」
「どうした?」
「いえ、分かってはいました……うすうす、そうなんだろうなとは思っていましたが……」
(どうしてこの男は制服なんですの!?フリューゲル様!?教えはどうなってるんですの教えは!)
なんとこの男、せっかくローゼスがデートだと思い、気合を入れておめかしをしてきたのに対し、いつも通りアーセナル学園の制服でやってきたのである。
当然、ルカにとってはこれはデートでもないし、単なるお守りだと思っているので、そこの認識のちがいでもあるが。
「一応聞きますが、私服は?」
「?そんなのは持ってない」
「はい?」
「別にこの国では制服のまま出歩いてもなんの問題もないしな。あと、服とか分からん」
前世でも決まった服をループして着ていたルカ。戦場を渡り歩いていたため、オシャレに鈍感な所は仕方ないとは思う。
まぁ、今世も育て親がフリューゲルということで、その辺の感性も全く育ってないが。
だがしかし、一つだけ、フリューゲルからアドバイスを貰っているルカ。勿論、それはフリューゲルが面白がって教えたことなのだが。
少しだけ腰を曲げ、手のひらを上にして右手をローゼスへと差し出す。
「お手をどうぞ、お姫様」
「…………………70点、ですわ」
「減点内容は?」
「制服で来てるからですわよ!」
ぺしん!と差し出された手に向かって軽めに叩いた後に、もう一度、今度はゆっくりと手を重ねた。
「エスコート、しっかりとよろしくお願いしますわ、わたくしの騎士様」
当然、寮の目の前という人前に着くところでこんなやり取りをしたのだから、二人についての噂が急加速するのは、また別のお話………。
アーセナル学園自治区────通称アーセナル学園国というものは、数万もあるアーセナル学園から成り立つ国である。
貴族が通うアーセナル学園を第一~第千まで、それ以下を平民が通うアーセナル学園として分けている。
その面積は広大で、場所によって色々と区分けがされており、今回二人が足を運んだのは『商業区』と呼ばれる、商人や生産職を目指す学生達が、多くの店を構えている場所である。
「わたくしが隣にいるのに、考え事ですか?」
「………ん?」
ぼー、っとハグれないようにローゼスの手を握りながらも、何処か上の空だったルカ。それに目ざとく気がついたローゼスが、少し不機嫌そうに腕をつねった。
「いや、ごめん。よく良く考えれば、こうして女の子と二人で出掛けることなんて初めてだな、と急に思ってな」
前世も含め、こうした浮いた話や行動は何ひとつとしてなかった。『お前どうして彼女作らないの?』とよく不思議がられたことをふと、思い出していた。
「ふ~~~~ん……では、ルカにチャンスを上げます。きちんと答えられたら、先程の減点は無しにしてあげますわ」
手を離し、少しルカの前に躍り出るローゼス。くるり、と一度回って、腕を後ろに組んで微笑んだ。
「今日のわたくし、どこか違うと思いませんか?」
「制服じゃないとこ」
「おばか!!!!!!」
全身から、「可愛いって言え!」というオーラを滲ませるローゼス。それを見ながら、ルカは腕を組んで考える。
(………髪留め……は、別に違うもんな。化粧もしてるけど、流石に違うって言われるか?あとは………)
と、見事ローゼスが指摘してほしいポイントを全スルーしていくルカ。逆にお見事すぎて目も当てられなかった。
「……いつも通り綺麗だとは思うが……分からん」
「……………………………ほへ?」
(……え?綺麗?いつも通り?つ、つまり……ルカはわたくしのことをいつも綺麗だと思っている……!?)
内心キャーキャー!言いながら顔が赤くならないように努めるローゼス。
「こ、こほん!ま、まぁ及第点にして差し上げます!90点ですわ!」
「……結局、何が違うんだ?」
「いいですわ。あなたの気持ち、知ることが出来ましたから」
行きましょう、と言ってルカの手を引っ張って先導するローゼス。急に機嫌もよくなったのが心底分からないので首を傾げるのであった。
「……なぁ、これってどこに向かってるんだ?」
「わたくしおすすめの服屋です。ルカの服を買いきますわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます