第47話 詐欺師vs天才獣医

「王都の財務官を紹介するのは構わんが、どうするつもりだね?」

「まずは金の流れを調べます。活動事実がないことが分かれば詐欺が立証できるはずです」

「それは、ラースさんの仕事なのかね?」

「私は許せないんです。動物をただ金儲けの道具にするのが」


 確かに、これは獣医のやる仕事ではないのかもしれない。

しかし、今まで誰も動こうとはしなかった。


 このまま野放しにしていたら、お金も騙しとられる被害者も金儲けに使われている動物たちも増える一方である。

どこかで誰かが、ピリオドを打たなければならない。


 ラースに接触してきたということは、詐欺の規模もこれから拡大することが予想される。


「わかった。私の友人に優秀な財務官がいる。そいつならきっとラースさんの力になってくれるだろう」

「ありがとうございます!」

「紹介状を書こう」


 バーロンはすぐに紹介状を書いてくれた。


「これを王宮に持って行けば取り次いでくれるはずだ」

「助かります」

「気をつけろよ。君の病院は私が必ず守る。これから君に助けられるであろう、たくさんの命のためにも」

「助かります」


 ラースは紹介状を受け取った。

そして、執務室を出た。


「ラースさんすみませんでした!」


 そこには頭を下げるクレインの姿があった。


「な、なんでクレインさんが謝るんですか?」

「私、あの二人が詐欺組織の人間だって全然知らなくて、屋敷に入れてしまいました」

「仕方ないですよ。あの時は私も気づかなかったかもしれませんから」

「ラースさんはあいつらと戦うつもりですよね?」


 クレインは全てを見透かしたように言った。


「分かっていましたか」

「ええ、きっとあなたならそのまま見過ごしたりはしないかと」

「また、王都に行こうと思います。詐欺組織を潰します」

「そういうことなら、私も行きます。あなたを守るって決めましたから」

「頼りにしています」


 ラースはすぐに本院の代理院長を任せられる獣医に連絡を取った。

学生時代、お世話になった獣医の先輩でベルベットの取った最初の弟子だ。


 手紙を書くとすぐに協力を申し出ると返事がきた。


「とりあえず、これでなんとかなりそうですね」


 あの人に任せておけば王都に心置きなく行くことができる。


 三日後、ラースたちが王都に出向く用意が整った。


「お久しぶりですね。ラースさん」

「ディエゴ先生、急だったのに引き受けてくれてありがとうございます」

「いえ、変わりませんね、あなたは。その行動力、まるでベルベット先生のようだ。こちらは任せてください」

「よろしくお願いします。分からないことは事務長に聞いてください」


 ラースは詐欺師との直接対決に王都へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る