第28話 他国の医師免許
翌日、10時ぴったりに王宮の従者が迎えにきてくれた。
着替えて、全ての身支度を整えると、部屋を出る。
国王陛下と謁見する約束があるのだ。
今回の報酬をくれるらしい。
本来、ドラグス国王からの報酬は無いはずだった。
しかし、どうしてもと言うので、断るわけにもいかなかったのだ。
「ご案内致します。どうぞこちらに」
王宮の従者に案内されて、謁見の間の前まで到着する。
隣には、クレインも居た。
ラースは大きく息を吐いた。
「大丈夫ですか?」
クレインが心配そうな視線を向けてくる。
「大丈夫です。こういうのは何度経験しても緊張してしまうものですね」
国王との謁見は初めてのことでは無い。
しかし、それでも緊張はしてしまうものである。
「お時間です」
謁見の間の豪華な扉が従者の手によって開けられる。
両脇にはこの国の貴族たちが並んで居た。
おそらく、王都周辺に屋敷を持つものたちであろう。
緊急の招集にしてはかなりの数が集まったものだと思う。
ラースとクレインは絨毯の上を歩く。
所定の位置まで移動すると、ラースたちは片膝ついた。
「面をあげよ」
陛下の声でラースは顔を上げる。
「この度は、我が国が信仰する龍である、黒龍様の命を救ってくれたこと、誠に大義であった」
「ありがたいお言葉です」
「今回の功績は高く評価されて然るべきだろう。我がドラグス王国はラースクリニックに当家のお墨付きを与え、ドラグス王国内で今後永久にラース・ナイゲール医師の医療活動を許可ものとする。以上、全てドラグス王国国王としての宣言である」
「謹んでお受け致します」
本来、医師免許を取得した国以外では特別な許可が無い限り医療行為をすることは禁止されている。
ラースは今回、国王と特別な許可の下、一回限りの治療を黒龍に行ったのだ。
しかし、今後永久的にラースはドラグス王国内での医療行為全てを許可されたのだ。
「例のものを」
国王は控えていた従者に指示を出す。
「こちらに」
漆黒のお盆に乗せられた厚手の紙を国王は受け取った。
「我がドラグス王国の獣医師免許だ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます。頂戴します」
ラースは陛下から、獣医師免許を受け取った。
「今後の活躍を期待する」
「精一杯励みます」
こうして、ラースは2カ国の医師免許を取得したのであった。
「これにて、謁見を終了する」
陛下の言葉で、貴族たちも解散して行く。
ローラン王国所属の医師で、ドラグス王国でも医療行為が許可されていたのはベルベット・ナイゲールを最後に居なかった。
ラースは祖父の意志を確実に引き継いで居たのであった。
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