第25話 ドグラス国王

 ドラグス王都へと出発する当日となった。

ルートはクレインと相談して、すでに決めてある道を進む。


 フェンリルのララの力を借りているので、馬車で進む3倍以上早い。


 そして、ララの神力によって魔獣の類は一切寄って来なかった。

便利なものだと思う。


 そして、ローランを出発して3日が経過しようとしていた。


「ラースさん、もう少しでドラグス王都に到着しますよ」

「もう、着いちゃうんですね。ありがとうララ」


 そう言って、ラースはララの頭を撫でる。


 そこから数分、ドラグス王都に入るための検問所が見えて来た。

近いところで、ラースとクレインはフェンリルから降りた。


 そして、ララは小さくなってラースの肩に飛び乗る。


『こちらの姿の方が貴方にとっても都合がいいだろう』

「そうね。ありがとう」


 大型のフェンリルを連れていては、何事かと思われるだろう。

これなら、使い魔ということで誤魔化せる。


 しばらくして、ラースたちの順番が回って来た。


「身分の確認できるものをご提示願います」


 門番をしている騎士が言った。


「ローラン国王の使いで参りました。ラース・ナイゲールと申します」

「同じく、クレイン・オーランドです」


 ラースはポケットの中から、ローラン国王のサイン入りの委任状を提示する。


「失礼しました! ただ今、迎えの者が来ますので少々お待ち頂けますか」

「承知しました」


 その場で待たされること、10分ほど。

燕尾服を身に纏った壮年の男性がやって来た。


「ラース様とクレイン様ですね。私は王宮の執事をしております、ゲインと申します。国王陛下がお待ちです。王宮までご案内いたしますので、こちらへ」


 豪華に装飾された馬車がそこには停まっていた。

その馬車に乗り、王都の中心を抜けて王宮へと向かう。


 窓の外から街の様子を見ると、大変栄えているように思える。

さすがは、近隣諸国の中で一番観光産業が発展している国である。


「こちらでもう、しばらくお待ちください」


 ラースたちは王宮の応接間へと通された。

そこで数分待っていると、再び応接間の扉が開いた。


「お待たせしたな」


 銀色の髪に、緋色の瞳。

背丈は小さめだが、しっかりとした威圧感がそこにはあった。


 ドラグス王国国王、イヴァン・ドラグスだ。


「座ったままで構わん。ワシはあまり堅っ苦しいのは好きじゃなくてな。遠い所、よくぞ参ってくれた」

「お初にお目にかかります。ラース・ナイゲールと申します」

「貴殿が、龍を治療できるという獣医師か?」

「はい、その通りにございます。こちら、ローラン国王陛下からの委任状です」


 そう言って、ラースは委任状を差し出した。


「確かに、確認した。ナイゲールという家名だが、ベルベットと所縁の者か?」

「ベルベット・ナイゲールは私の祖父です」

「そうか、ベルベッドの孫というのを聞いたら納得だ。貴殿なら必ず我が国の守り龍を救ってくれることだろう」

「祖父のことをご存じなのですね」


 最近、祖父の知り合いに多く出会している気がする。


「知っているも何も、ベルベッドとは古い友人だ。学者としても尊敬しておったが、ワシより早く逝ってしまうとはな」

「そう、だったんですね」

「ベルベッドはこの世界の獣医学を10年は進歩させたという名医だ。その孫がやって来てくれるとは思わんかったが、治療をよろしく頼む」

「わかりました。早速ですが、治療を必要としている龍はどこに?」

「ここから、馬車で1時間ほどの所だ。うちの騎士団に案内させよう」


 陛下はすぐに手配してくれた。

こうしてラースたちは早速、龍の治療へと向かうのであった。

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