第23話 陛下からの依頼

 王都に到着した翌日のことである。

ラースは国王陛下と謁見する為に、王宮へと向かった。


「緊張してますか?」


 隣を歩くクレインが尋ねてきた。


「そうですね。国王陛下からの依頼ってなると」


 国王陛下がわざわざラース宛に書簡をよこしたのだ。

それは、国が動くほどの大きな治療であることを示している。


「大丈夫です。私も居ますから」

「ありがとうございます」


 王宮に到着すると、陛下からの書簡を警備の騎士に見せる。

そして、王宮の中に通された。


「ラース様、クレイン様、お待ちしておりました。ご案内いたします。こちらへ」


 王宮の従者によって案内されたのは、謁見の間ではなく、応接室であった。

中には高価そうではあるが、決して下品にはならないように調度品が並べられている。


「こちらで少々お待ちください」

「わかりました」


 ラースたちはソファーに腰を下ろし、出された紅茶を一口飲む。


 数分待つと、再び応接間の扉が開かれた。

白髪に逞しい真っ白な髭を生やした壮年の男性。


 彼こそが、ここローラン王国国王である。


「待たせてすまんな。まあ、座ってくれ」

「失礼します」


 陛下の言葉でラースたちは腰を下ろす。


「まずは、突然の呼び出しに応えてくれて感謝する。ジェイル・ローランだ」

「いえ、構いません」

「ラース殿には、甥は大変失礼なことをしてしまいもう訳なく思っている」


 そう言うと、陛下は頭を下げた。


「頭を上げてください。もう、気にしてませんから」

「感謝する」

「それより、私に治療依頼があるそうですね」

「では、本題に入らせてもらう」


 陛下は頭を上げて、座り直す。


「ラースさんはドラグス王国については知っているだろうか?」

「ええ、龍と盟約を結んだ国ですよね。祖父から聞いたことがあります」


 そして、ドラグス王国とローラン王国は隣国ということで、2年前から同盟関係にある。


「そのドラグス王国から協力要請があった。龍の治療をできる獣医を派遣して欲しいと」

「それで、私に?」

「都合のいい事は分かっている。でも、どうか、我が国にそなたの力を貸して欲しい。頼む」


 陛下は再び頭を下げた。


「頭を上げてください。一国の王ともあろう方が簡単に頭を下げるものではありません」

「では、受けてくれるのか?」

「そこに、私の治療を待っている動物がいるのなら私は行きます。ただ、一つ条件を出してもいいでしょうか?」

「なんだね? 言ってみてくれ」

「オーランドの私の病院に獣医を一人、派遣してもらってもよろしいですか?」


 ドラグス王国に行くということは、しばらく留守にすることになってしまう。

その間、ずっと休診にしておくのも無責任というものだろう。


「分かった。すぐに、王都から医師を派遣しよう」

「ありがとうございます」

「では、これが私からの委任状だ。これを向こうの担当者に見せれば分かるはずだ」

「頂戴します」


 ラースは委任状を受け取ると、ポケットに仕舞った。


「出発は明後日とします。彼も私の護衛として連れてもよろしいですか?」

「もちろんだ。クレイン君、ラースさんを守ってくれ」

「はい、承知しました」

 

 ラースはクレインと共にドラグス王都へと、龍の治療に行くことになった。

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