第21話 王都へ呼び出し

 クレインとのデートをした翌日のことである。


「ラースさん、王都の国王陛下より君宛の書簡が届いているよ」

「え、私にですか?」


 バーロン辺境伯から受け取った書簡を確認する。

そこには、確かにラース・ナイゲール宛となっていた。


「何でしょうね。私、陛下に怒られるようなことはしてないと思うんですけど」


 ラースは緊張しながらも、その書簡の封を開ける。

中から紙を取り出すと、その内容を確認していく。


「何が書かれているのだ?」

「一度、王都に来て欲しいと。治療を頼みたい者がいると書かれていますね」

「行くのか?」

「私にしか治せない患者さんがいるなら、私は行きます」


 陛下からの呼び出しを無碍にする訳にも行かないだろう。


「では、クレインも連れて行きなさい。護衛くらいにはなるだろう」

「え、よろしいんですか?」

「元々、クレインにも王都に行ってもらう予定だったからな。構わんよ」

「ありがとうございます」


 少し早いが、里帰りということだろうか。


『主人、王都に行くなら我が母を頼ったらどうだろうか? 母なら王都まで1日もあれば行けますぞ』


 シロが言った。


「じゃあ、一緒にフェンリルさんの所に行きましょうか」

『一緒に行こうではないか』

「バーロン卿、ちょっと出かけてきますね」


 ラースはお屋敷を出ると、フェンリルが居る御神木の方へと向かった。

シロの魔力があるため、魔物の類は一切寄ってこない。


 無事に、御神木までたどり着くことができた。


「久しぶり。元気だった?」

『ラース殿、久しいな。我はこの通り元気だぞ。今日はどうした?』

「王都に行くことになったんだけど、一緒に行ってもらえないかと思って」

『構わんぞ。ラース殿に救ってもらった命、あなたのために使おうじゃないか』


 フェンリルはあっさりと承諾してくれた。


『我の名はララだ。我の背中に乗るといい』

「よろしくね。ララ」


 ラースはララの背中に乗った。

そして、お屋敷まで戻っていく。


 まずは、バーロン卿の許可を取らねばなるまい。


「バーロン卿、この子の力を借りて王都まで行こうかと思うのですが、大丈夫ですかね?」

「その子はフェンリルか……」

「はい、そうですね」

「もう、ラースさんが何をやっても驚かんわ。使い魔としてということなら問題ないだろう」


 神獣を使い魔にするなどほとんど聞いたことがないが、そこは突っ込まないで欲しい所だ。


「だって、よかったね」

「でも、神獣がここから離れても我が領は大丈夫なのか?」

『それは、問題ない。シロがいれば安全は保証する』

「大丈夫らしいです」

「そうか、なら問題ないな」


 色々相談して、出発は明日となった。

それまで、ララはお屋敷の中庭でシロと一緒に過ごしてもらうことにしたのだった。

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