第41話 目指す道

「私みたいに女優って...」


 そう。

ジェシカは進路に女優になると決めたことは本人が教室で宣言していたので私は知っていた。


「うん。私は決めたんだ」


「エリム...」


 ジェシカは私の方を向く。


「2人で話してみてはいかがでしょうか?」


 イリスから提案される。


「そうですね。私たちは既に答えが聞けましたので後はエリムとジェシカに任せましょう」


「あぁ。私はエリムから話が聞けて良かった」


 シャロリアとベルリスはイリスの提案に納得する。


「皆...ありがとう」


 3人は展望台から降りる。


「それで...エリム、どうして女優を目指そうと思ったの?それ程お芝居の楽しさに気づいてくれたのは嬉しいけど...」


 ジェシカは私が女優を目指そうとする理由に疑問を抱く。

今までこの話は誰にもしてこなかったのでジェシカが気になるのもよく分かる。


 だからこそ聞かれた今、しっかりと女優を目指したい理由を話す。


「私は...文化祭をきっかけに台本から始まり、発声や台詞の掛け合いをして皆で物語を作っていく...そんなお芝居の魅力に惹かれたの。そしてジェシカ、覚えてる?」


「何を?」


「まだ棒読みだった私に沢山アドバイスをしてくれたこと」


「あったわね。最初のエリムかなり棒読みだったけどまさかあそこまで上達するなんて...」


 そう。

最初は私は棒読みの演技で皆に比べてお芝居に自信がなかった。


 だけれどジェシカが優しく分かりやすくアドバイスをしてくれたお陰で私の演技は上達してお芝居の楽しさに気づいた。


 ジェシカのアドバイスがきっかけで女優の道へ進む決意をしたと言っても過言ではない。

文化祭が終わった今でもジェシカに感謝している。


「そしてさ。将来、舞台女優になったら?って言ってくれたのを覚えてる?」


「言ったわ」


 文化祭の練習の日にジェシカから舞台女優の道を勧められたのを今でも覚えてる。

私の中で女優になりたいと明確に決まったのはジェシカの一言が大きく関わってきているだろう。


「それからかな...私の中で女優になりたいって思い始めたのは...」


「そうだったのね...」


 ジェシカが私が女優になりたい理由を聞いてくれた。


「だからね。私、女優目指すからジェシカも応援してほしいな!」


 ジェシカのお陰で女優になる道を決めることができた。

なので、ジェシカには見届けてほしい。


「応援するわ。ちなみにどこの劇団に入るのか決めたの?」


「あ...」


 なると決めたのは良いがまだどこの劇団に入るのかを決めていなかった。


「良い劇団、私が教えてあげるわよ」


 なんとジェシカが劇団を教えてくれるとのこと。

これは嬉しい。


「ありがとう!ちなみにどんなところ?」


 ジェシカは色々な劇団を知ってそうだが、その中からどの劇団を私に教えてくれるのか?


「そこは!」


 私は息を呑み込み、ジェシカがなんていうかを待った。


「劇団ジェシカよ」


「え?」


 劇団ジェシカ、まさかのジェシカの名前が入った劇団だった。


「劇団員はまだ私1人だけだけど...」


「え?ってことはまさか?」


「そう。私、自分で劇団を作ったのよ」


 まさかのジェシカは劇団を作っていた。

だから劇団ジェシカなのか。


「入る?」


 ジェシカから劇団ジェシカに誘われた。

私にとってこの劇団に入るのはもはや運命かもしれない。


「入る...私、劇団ジェシカに入るよ!」


 私は劇団ジェシカに入ることを決めた。


「エリム...ようこそ!劇団ジェシカへ!」


 ジェシカに歓迎された。

これからこの劇団ジェシカで頑張ろう。


「ありがとう!ジェシカ」


 私はそのままジェシカに寄り添う。


「エリムったら...」


 寄り添っただけだけどジェシカは照れる。

相変わらずジェシカは可愛い。


「...ジェシカってさ。文化祭の劇の最後、覚えてる?」


 文化祭で思い出したが、ジェシカに劇の最後にキスシーンがあるのだが、本来はフリでキスシーンをするはずだったけれどジェシカはフリではなく、本当に私の唇にキスをしてきたことを思い出した。


「あー何かしらー?」


 ジェシカは焦っている。

分かりやすい。


「いいよ。私、嬉しかったから」


 キスされたのは最初は驚いた。

けれど相手がジェシカだったので今思えば正直、嬉しかった。


「…そう。ありがとう。私、あの日思い切っちゃったけどエリムにそう言ってもらえて嬉しいわ。本当はちゃんと自分から話し合ってしたかったんだけど…直接言うの恥ずかしかったからあの場でしちゃったのよ…」


 ジェシカはあそこでキスをした理由を話してくれた。


「そっか…ジェシカは私に対してそういった気持ち、持ってたんだね」


「…えぇ。私はエリムに対していつの間にか好き。恋愛面で言う方の好きの気持ちを持っていたんだわ」


 ジェシカは私に対しての気持ちをこの場で明かしてくれた。

それなら私も打ち明けよう。


「…私もだよ。ジェシカ」


「エリム…」


 今だ。

今、ジェシカに私の想いを伝えよう。


「ジェシカ」


 深呼吸をし、ジェシカの方を向く。


「ジェシカが好きです。私と付き合ってください」


 ジェシカに私の思いを伝えれた。


 ジェシカはどう答える?


「…はい。喜んで。私の方からも…付き合ってください」


 ジェシカは答えを出した。

これで晴れて私とジェシカは付き合うことになった。


「これで…恋人同士だね…」


「そうね…私、エリムと付き合えるなんて幸せよ」


 そうしてジェシカは私に抱きついてくる。


「ねージェシカ」


「どうしたのよ?」


「キスしたい」


 せっかく付き合うことになったんだし、私はジェシカとキスがしたい。


「良いわよ。次はエリムから?」


「そうだねー…じゃあ私の方から」


 私はジェシカの顔をよく見ながら唇を向ける。


「い…いくよ…」


 私からのキスは初めてなので緊張している。


「そ、そ、そ、そんな緊張しなくても大丈夫よ!?」


 そう言ってるジェシカの方が見る感じだと私より緊張しているみたいに見える。


「じゃ、じゃー…うん」


「…いいわ」


 2人で一旦落ち着いてから私はジェシカに。


「これからも一緒だよ」


 キスをした。


 卒業式の日に展望台の上での告白、そして付き合いキスをする。


 私とジェシカにとって最高の思い出になった。

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